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浮世の風  作者: 金王丸
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愚昧


 オイラは焦っていた。中間考査を終えたばかりだと言うのに、背中を丸めて机に向かい、一心不乱に文字を書き連ねる。尻に点いた火をどうにか消し止めようとする焦燥感の所為で、冷涼な秋の夜長を堪能することは出来ない。今回は本当にヤバい。テストの結果を待つことなく、それは明らかであった。なんとかなるだろうと楽観的に構え、それに向けての努力を怠ったここ二週の自分を呪う。


 (ちゃんと勉強しておくべきだったウキ……)


 体育祭、文化祭――立て続けに行われた学校行事、それらの持つ非日常感にしてやられた。オイラはその期間中、ほとんど勉強していなかったのだ。そして享楽的で怠惰な気持ちを切り替えることなく、中間考査に突入した結果、この通り、泣きを見る羽目になったという訳だ。


 (これからは毎日猛勉強ウキ……!)


 オイラは決意した。今後いかなる状況であっても、学生の本分たる勉学を決して疎かにしないと固く誓った。そして来月に予定されている期末考査で雪辱を果たすべく、一途懺悔の筆を振るう。


 (良い感じウキ……!)


 時を追うごとに集中力、思考ともに高まり、研ぎ澄まされていく。その結果、スポンジに水を吸わせるが如く進み行く理解に我ながら驚く。このまま行けばどんな問題でも解けそうだ、そう思った矢先、


 ――トントン、トントン――


 予期せずに窓を叩く音が聞こえてきた。オイラは一瞬ビクッとして我に返る。そして恐る恐るカーテンを開け、その影像を確認すると、


 「ハトロー!?」


 オイラは急ぎ窓を開け、中に招き入れる。彼は長老からの手紙を差し出し、餌を要求した。オイラはそれに応えつつ、学者によって書かれた誤字脱字だらけの手紙をどうにか読み進める。


 (ふむふむ……明日仕送りが届くウキね!)


 明日、月に一度の仕送りが手元に届く。否応がなく競り上がるテンションに、とても勉強どころではなくなってしまった。早く明日になればいいのに、オイラは裏山に行くことを待ち望んだ。あれも買いたい、これも買いたい――仕送りを受け取る前日はいつもこうだ。そうしてしばらく様々に思いを巡らせていると、


 「ホロッホ~!」

 「ああ、手紙ウキね、ちょっと待つウキ」


 ハトローはバタバタと羽根を羽ばたかせ、長老宛に手紙を書くよう急かし立てる。オイラは白紙を取り出し、当たり障りのない内容をサッと書き上げると、


 「気を付けて帰るウキよ~」


 手紙を託し、ハトローを送り出した。その後、ホッと息をつき、改めて机に向かうも、先程までの集中はどこへやら、いつものオイラに戻っていた。やがて大きく欠伸をしてみせると、思い出したように抗し難い眠気に襲われる。


 (今日は頑張ったウキ、だから―…)


 「果報は寝て待て」という諺の通り、オイラは明日に備え、早めの床に就くこととした。



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