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航空傭兵の異世界無双物語  作者: 弐式水戦
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第67話~アイシス達の鍛練~

「ホラ、後10セットだよユリシア。コレが終わったら今日の訓練は終わりだ、頑張れ!」

「ひ、ひゃいっ!」

「アイシス!此方も後少しで終わるぞ!最後まで気を抜くな!」

「ええ!」


 ヴィステリア王国北端の町、ルビーンの門の前に広がる広野に4人の少年少女の声が響く。

 其所では、神影とエーリヒの指導の元、アイシスとユリシアが鍛練に励むと言う光景が広がっていた。

 

 こうなるに至ったのは、今から約2時間前。何時もの鍛練を終えた神影とエーリヒがアイシス達に迷宮攻略の報告をしに行こうとしたところ、何時神影達の帰還を知ったのか、彼女等の方からやって来て、神影とエーリヒに駆け寄るや否や、自分達を鍛えてほしいと頼み始めたのだ。

 あまりにも唐突な頼みに驚きながら理由を訊ねると、どうやら彼女等は、冒険者になるために神影達が城を抜け出す前から秘密裏に特訓していたのだが、何分、大した戦闘経験も無く、誰かに効率の良い鍛練の方法を教わった訳でもない自分達が鍛練をしたところで直ぐ出来る事に限界が来てしまい、それによって鍛練の質を上げられず、足踏み状態にあったため、日頃からエーリヒの自宅前や町の門の前で組手をしたり、依頼や迷宮荒しのために各地を飛び回っていた神影とエーリヒに、自分達の鍛練を見てもらおうと言う話になったのだ。


「………はい、終わり!」


 エーリヒの合図で、彼に拳や蹴りをぶつけていたユリシアが、体全体の力がフッと抜けたように、地面に崩れ落ちた。

 両手足を投げ出して大の字になり、目を回して『あうあう』と呟いているその姿が、彼女にとって相当キツい運動だった事を物語っている。

 現に、神影やエーリヒ、アイシスの3人が17歳なのに対して、ユリシアは13歳と言う最年少で、身長は132㎝と小柄な上に体つきも細く、彼女を一言で言い表すとすれば、『華奢』と言う単語が最も相応しい。

 当然ながら、体力も彼女が一番少ない。

 普通なら、そのような体格でエーリヒの訓練についていくのは先ず無理だろう。

 何せ、リーネの時と比べれば幾分か軽くなってはいるものの、それでもユリシアにとってはハードなものであると言う事は変わらないのだから。


「(なのに、まさか自分から厳しくするよう言った上に、音を上げずについてくるとは…………まあ、前から彼女なりに鍛練してたらしいし、何時もおどおどしてるけど、努力家な部分があるからな。姉と同じように)」


 内心そう呟いたエーリヒは、神影と組手をしているアイシスにチラリと目を向けた後、その小さな体で必死についてきた事を労るかのようにユリシアを優しく抱き起こし、頭を撫でてやる。


「よく頑張ったね、ユリシア」

「んっ………えへへ」


 慕っているエーリヒに褒められるのが嬉しかったのか、頬を染めてにんまりと表情を緩めるユリシア。

 華奢な体格や幼さのある整った顔つきであるが故の可愛らしさが、其処にはあった。


「さて…………それじゃ、俺等もそろそろ終わるか」

「ええ」


 一方、神影達の方も、今日の訓練を終わらせていた。

 ユリシアと比べて、アイシスは未だ体力が残っているらしく、大きく体を伸ばす程の余裕を見せている。

 元々、彼女は運動神経が良い上に飲み込みも早かったため、やや厳しさを抑えられていたとは言え、神影の鍛練にもついてきていたのだ。


「それにしてもミカゲ…………アンタ、初めてこの町で会った時と比べたら随分変わったわね」

「変わった?俺が?」


 不意打ち同然に放たれた彼女の発言に、『いきなり何だ?』と言わんばかりの間の抜けた表情を浮かべて聞き返す神影。

 まさか、突然『お前は変わった』と言われるとは、神影も予想していなかったようだ。

 

「ええ。アンタは気づいてないかもしれないけど…………アンタの元お仲間さん達が見たら、多分同じ事を言うと思うわ」

「そうかな………?」


 そう言って、神影は自分の体をペタペタと触っていく。

 確かにこれまでの生活もあって、初めてこの異世界の地に降り立った時と比べると体はある程度引き締まっているように感じられるが、それ以外に変わっている部分など、神影には検討もつかなかった。


「違うわよ、ミカゲ」


 ペタペタと身体中を触る手を止めさせ、アイシスは言った。


「アタシは体つきの事を言ったんじゃなくて、雰囲気の事を言ったの」

「…………雰囲気?」


 そう聞き返す神影に頷いたアイシスは、暫く考えながら彼の周囲を歩き回る。


「この表現で合っているのかどうかは分からないけど…………」


 そう言って、アイシスは神影の正面で足を止め、最終的に頭に浮かんだ結論を述べた。


「凛々しくなった、とでも言うべきかしらね?」

「は、はあ………」


 そう言われてもピンと来ない神影だが、彼女の意見に賛同する者がやって来た。


「ああ、それは言えてるね。何と言うか、歴然の戦士って雰囲気が出ているよ」


 近づいてきたエーリヒが、アイシスの言葉に相槌を打ったのだ。

 彼の傍には、何時の間にかバタンキュー状態から復帰したユリシアが居る。

 彼女もエーリヒやアイシスの意見に同意なのか、小さな顔をコクコクと縦に振っていた。

 

「…………そんな大層な奴になったとは思えねぇんだがなぁ」

「自分の変化と言うのは、自分自身じゃ気づけないものなんだよ、ミカゲ」


 エーリヒに苦笑混じりに言われるものの、神影は未だ腑に落ちないとばかりの表情を浮かべている。


「まあ、それより、もう昼時だ。そんなの考えるのは止めて、早く帰ってご飯食べようよ。悩んだところでキリが無いし、何よりお腹減っただろ?」


 このままだと、神影が延々と悩み続けてキリが無いと思ったエーリヒは、その話を強制的に終わらせるためにも話題を変える。


「………まあ、それもそうだな」


 神影も、これ以上悩んだところで何の成果も得られないと結論付けたのか、エーリヒの言う事に素直に頷いた。

 そして4人は、町へと戻っていくのだった。

次は調査隊の到着を書きたいですね。

さて、その時は神影やエーリヒを調査隊メンバーと接触させるか………どうすっかな?

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