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最初に見た建物と比べればあきれるほど巨大な建物の中に二人はいた。
二人が案内されたその入り口は、その建物の外観からすれば驚くほど小さかった。
そのまま薄暗い通路を延々歩かされ、その間、巨大な建物にもかかわらず誰ともすれ違わなかった。
そのまま四方を漆喰で塗られた壁に覆われた、小さな部屋に二人は通された。
その部屋には、大き目の長椅子と、小卓がおいてあり、二人は長椅子に据わっているようにとだけ言われた。
ごわごわした生成りの布を張った長椅子は、クッションもきいておらず、あまり座り心地のいいものではなかった。
天井に明り取りの窓があるが、その場所はずいぶんと高いので、二人の背丈では到底届くものではなかった。
「明らかに、あたし達の存在って隠匿されていない?」
アーシュラが呟く。エレノアもアーシュラの言葉を否定する要因は持っていなかった。
「推測だね、でも、今はもう少し、この世界の情報がわかるまで、その考えは保留しておいたほうがいい」
エレノアにそう言われて、アーシュラは口を尖らせる。
「でも明らかにそうでしょう」
「なら、隠匿は事実として、どうして私たちの存在を隠匿せねばならなかったのか、それを考えるべきよね」
「王国って何だろうね」
アーシュラが唐突に話題を変える。実際エレノアにも意味不明な単語だった。
「おそらく、あの男たちの所属する団体の名前というのが一番ありそうな答えだと思うけど」
「さもなければ、あの男たちの所属する団体の居住地名あたりが正解かな」
アーシュラの補足にエレノアは頷く。確かにあの男たちは『ここはドール王国だ』と言っていた。
「でもね、ここで考えていても埒は明かない。もう少し詳しい話を聞かせてくれる人間に会えないかな」
そう言った後でアーシュラは小さくため息をつく。もしここで誰かが現れて、これは本当は何これでと言ったとしても、その真贋を確かめるすべがアーシュラにもエレノアにもない。
「わかっているのは、今ここが地球って言うことだけか」
エレノアは天窓を見上げた。青い空と、流れる雲がその目に映る。
「あれ、何だろうね」
そう言って雲を指差す。
宇宙空間以外で、上を見ればドームの天井か、さもなければステーションの天井しか見たことがないエレノアは、雲と言うものを認識したことはなかった。
「たぶん大気の密度の差であんなふうに見えているんじゃないかな、たぶん、たしか土星で似たようなの見た気がする。それに、地球に着陸する前に、確かあんな感じの模様が、視認できたよ」
その時は思わず目をつぶっていたので、エレノアはそれを見ていない。
「なんか情けない」
「いや、経験の差だから」
言われてエレノアはぞっとする。経験の差っていったい何。




