序章
さいしょはスペースオペラ。後ファンタジー異世界トリップ風味です。
よろしく
とある宇宙ステーションの中、彼は一人その部屋に閉じこもっていた。
彼はすでに初老に入りつつある、薄くなりかけた髪を後ろに撫で付けた。やや恰幅のいい男性だった。その表情は暗い。
何故なら彼は命を狙われているから。
部屋の外には警備する警察官達がたむろしている。
彼は裏組織の秘密を警察に暴露しようとしていた。彼は裏組織と、表の世界とのぎりぎりのところで生きていたが、ついにその危うい均衡が崩れたのだ。
彼は警察に駆け込んで身柄を保護してもらっていた。しかし、彼を執拗に狙う裏組織は、彼を許しはしなかった。
警備の目をかいくぐって彼の命を狙う輩はすぐそこまで来ていた。
そして彼は死ぬ。その時はすぐそこまで来ていた。
掌に乗るくらいの爆発物。それが彼を殺す凶器。
彼は粉々に砕かれて、死の恐怖を味わうことなく、死の苦痛を味わうことなく死んだ。そして彼だけでなく彼が閉じこもっていた部屋の外壁も同じく粉々に砕かれた。砕けた壁の間から、砕けた彼の残骸が宇宙空間に散らばっていく。
彼は死んで彼の物語は終わる。そして、彼を殺した者と、彼を守ろうとした者達の物語は、これから始まるのだ。