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ブルーライトニング 改訂版 第78章

 週末のパーティから幾日か過ぎた頃、玲子と瑞穂のクラスにレナが転入してきた。

 ソレイユそっくりのレナの姿にクラス中にどよめきが起こったが、ソレイユとは別のロボットであることを先生が説明したのでその場は収まった。


 伊藤綾とその取り巻きが、警察沙汰で学校からいなくなってから、玲子の周りにも人が集まるようになっていた。

「ねえ、敷島さん、レナってほんとにソレイユじゃないの?」

「ええ、ソレイユじゃないわ。だって、声が違うでしょ」

 レナの声はよく知られたソレイユの声とは明らかに違っている。玲子はロボットが声質を自由に変えられることを知っているが、普通の人たちは知らないので簡単に納得した。実際、レナはソレイユの身代わりであって別のロボットなので、嘘ではないが、事実を知る玲子と瑞穂は複雑な心境である。


 瑞穂はレナの学校生活を豊かなものにしようと一つの提案をした。

「ねえ、玲子、レナ、二人ともテニス部に入らない?」

「はい?」と玲子は聞き返す。玲子は放課後にソレイユと会うために部活に入っていなかったのだが、ソレイユがいない今、その制約は消えていた。

「でも、私、ロボットよ。部活に入っても」

「でも、レナもテニスができるでしょ」と瑞穂は引き下がる気はない。

「みんなの練習相手になってくれれば、いい刺激になるし、部活のみんなも大体は好意的だと思うの。だからね! 玲子だってテニス部員としても十分やっていけるわ」

 玲子はレナと一緒ということに動かされた。

「一緒にテニスをしようか」と玲子もレナに言った。護衛任務を帯びて学校に来ていたルーナとマルスに比べ、レナは割と自由かもしれない。

「じゃあ、やってみるわ」とレナは承諾した。


 テニスの顧問は、玲子とレナの入部の申し出に対し、

「敷島さんは、格闘系の方が似合うんじゃないか?」といいつつも、練習試合の結果を見て入部を決めると言ってくれた。好奇心旺盛な部員は、ロボットのレナを見たさに集まってきた。瑞穂は玲子とダブルスを組み、レナが一人で相手を務めることになった。一見、不公平に見えるが、レナにはたいしたハンディにはならないはずである。

「じゃあ、行こうか!」と瑞穂は鋭いサービスを打ち込む。それをあっさりとレナは返した。見た目はあっさりしていたが、ボールは速い! 玲子は来ることがわかっていたように前にダッシュし、ボレーで返す。

「ほう、敷島さんもすごいな」と顧問は自分の考えを改めた。玲子は格闘に強いという噂しか聞いたことがなかったが、実際、玲子の実力は瑞穂と遜色がない。それ以上にその二人を相手にして余裕で試合を成立させるレナの実力も認めざるをえなかった。ほぼ、完璧な打ち合いのあと、玲子が打ち返したボールをレナが取り損なって試合が終わった。

「二人とも、入部を認めるよ。でもレナは公式試合には出られないがなあ」

 レナははにかむように言った。

「私はいいですよ、みんなと一緒に練習ができれば」

「じゃあ、二人とも入部届を明日持ってきてくれ。今日は適当に混ざって練習していっていいぞ」と顧問が言うと、試合を見ていてレナに興味を持った数人がレナと練習試合をしたいと言い出した。

「ああ、順番にやってみろ」と顧問は許可した。


「いや、たいしたもんだなあ」と顧問は傍らの玲子に言った。

「何がです?」

 チラリと玲子に視線を投げ、レナの練習を見守る。

「敷島さんもなんでテニス部に入っていなかったのかわからないほどの実力だし、レナときたら相手のレベルに合わせて相手をしているんだな。男子テニス部がうらやましがるかもしれんな」

「そうですね」

 玲子にとっては当たり前のことなので、さほど感銘を受けていない。顧問は改めて玲子に視線を投げる。

「敷島さん、一つ聞きたいんだが・・・」

「何でしょう?」

「これだけの実力があるのに、テニス部に入らなかったのはなぜなんだい?」

 玲子は少し首をかしげた。

「ソレイユと会うことを優先したんです」

「ああ、ソレイユか。で、これからはいいのか?」

「ソレイユは軍の仕事が忙しくなったんで、私と会う時間もなくなってきたので」と、玲子は嘘を言った。ソレイユの死は秘密だからだが、顧問は疑わなかった。

「そうか・・・ そういえば、最近、きな臭いもんな。つい、こないだも、この学校だって襲われたしな・・・」

 しばしの間が開く。

「しかしなんだ、こうして平和に暮らせるのも、ソレイユ達のおかげなんだ。ほんと、感謝しかないな。それなのに我々はひどい仕打ちをしたもんだ。ソレイユは怒ってなかったのか?」

「ソレイユは怒ってなかったですね」と、これも事実だった。ただし、ソレイユの周りのロボットは人間を憎むようになったが、そんなことは言わない。

「レナには楽しく学校生活を送って欲しいなあ」

「そうですね」

 それは玲子も願うことであった。

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