第5話 撮らなくていいんすか?
部長視点に戻ります。
「あー……本当にいいのか?」
来なかった女優が着る予定だった短め丈のワンピースを着て目の前にいるのはさっき撮影編集担当の佐藤だ。
「身バレ心配しなくていいっすよ、顔モザももちろんするっすけど一応メイクも髪型も変えたっすから大丈夫っすよ」
確かに今の佐藤を見てもわからない、むしろ残念美人の野暮ったさが消えて、かなり可愛い。
こんな子が面接に来たら百パー撮るレベルだ。
それはともかくだ。
「わ、わかった、じゃあ俺は部屋から出ているから終わったら呼んでくれ」
おまけ動画は定点カメラ撮影だひとりでも可能だ。
「何言ってるんすか、部長が撮って下さいよ、あたし撮るは何度もあるっすけど撮られるのはは初めてだから指示欲しいっすよ」
「そ、その、なんだ、お前はいいのか?」
プロダクションの女優さんとは違って社内の人間だ。
どうしても意識してしまう。
「どうせ仕上がったら見られるっすから平気っすよ、それに部長も下半身は出演してるっすよね?」
多少照れながら言う佐藤。
「ま、まあそれはそうだが」
おまけ動画撮影に男優を使わうのも勿体無いから経費削減で俺が出ていたりする。
だが女性の場合は顔が出てしまうから手放しで頼みづらい。
「まぁ、部長が気にしてくれるとは嬉しいっすけど、そのうまく出来るかわかんないっすよ?」
「うまく出来ないのも、それはそれだ」
「あーぎこちないのもいいっすよね」
「それを、お前がいうか」
「あはは、そうすっね」
妙な間。
「ちょ、ちょっとトイレ行ってきていいすか?」
我慢していたのか、子供の様にもじもじと立ち上がる。
「あ、ああ、行ってきていいぞ?」
ムクムクと自分の中のとある欲求が生まれるが目をつむる。
「……その撮らなくていいんすか?」
俺の目の前まで来るととそんな事ぼそりと呟き、どきりとした。
「と、撮るって?」
「あ、あたしのオシッコっすよ」
思わずゴクリと喉を鳴らしてしまう。
「い、いいのか?」
「い、いいっすよ?その素材足りてないっすよね?」
近い距離で上目遣いの佐藤から石鹸の香りを感じているとポケットのスマホが振動した。
「……すまん電話だ」
「電話っすか? こんな時間にすか?」
時間的にプロダクションからでは無いし妻も彼女もいないから首を傾げた。
スマホのディスプレイを見れば村尾の名前が表示されていた。
「む、村尾君?」
「なんで村尾ちゃんが?」
なぜか二人して焦る。
というか、村尾はこっちが撮影だってわかっているから電話をかけるなんて無い。
撮影中は電話を取れないから基本メッセージだ。
それが電話というのはありえな過ぎて怖い。
「で、出なくいいんすか?」
佐藤も同じ事を思ったらしい。
「そ、そうだな」
スマホの通話ボタンを急いで押すと横から佐藤がスマホのスピーカーボタンを押した。
「あーもしもし、どうした?」
「――撮影終わりましたよね?」
電話の向こうの村尾の言葉に二人して驚き顔を見合わせた。
「あ、ああ、終わって今……」
「か、片づけていたとこっす!」
佐藤を撮ろうとしていたって言おうとた所を隣から佐藤が割り込んできた。
これは言わない方がいいのか?
「……佐藤さんですか?もしかしてスピーカーで話していますか?」
「そ、そうなんすよ!村尾ちゃんっから電話って聞いて、ついスピーカーにしたっす」
「あ……村尾君、電話なんて珍しいじゃないか」
「……すみません、なんとく心配になってかけてしまいました」
「し、心配?」
なんだこの浮気がバレそうになった感覚は。
「今回の件の事でマネージャーから謝罪があったのですが部長から連絡が無かったので何も無かったようなら良かったです、それでは会社でお待ちしております。失礼致します」
電話切れたのを確認すると佐藤と顔を見合わせた。
「あー、……どうする佐藤君」
俺は手に持ったカメラを軽く持ち上げる。
「えっと……今回はやめとくっす」
「う、うむ、そ、そうだな」
「あ、こ、この事はその……」
「わ、わかっている」
「や、今日の事は秘密って事で、そ、その撮影はまた機会があればお願いしたいっす……その、お、おもらしも」
「あ、ああ」
「あ、あたし着替えてくるっす!」
慌ただしくバスルームに消える佐藤を見送り、気付く。
って俺の息子は何を期待してんだ……
俺はこっそりポケットに手を突っ込み目立たないように位置を変えた。
続きは明日投稿します!




