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プロローグ
「私は、王配として──」
大広間に、数百の視線が集まっていた。
蝋燭の炎が壁の紋章を揺らし、居並ぶ貴族たちの宝石が鈍い光を放っている。静寂の中で、私の声だけが高い天井に吸い込まれていく。
玉座から立ち上がり、私は五人の男たちを見据えた。
宰相の息子。隣国の公子。王国東部の侯爵。王家の遠縁。
そして──初恋の人。
「クリストフ・フォン・シュヴァルツェン殿を」
その名を口にした瞬間、彼の人が微笑んだ。
穏やかな翡翠色の瞳。安堵に満ちた、あの夜と同じ笑顔。
半年前の私なら、きっとその笑顔に溺れていた。
「──と申し上げる前に、皆様にお伝えすべきことがあります」
笑顔が、凍った。
会場が、静まり返った。
これが、私が女王として下す最初の、そして最も残酷な決断。
半年前、私はまだ泣くことしかできない小娘だった。
王冠の重さに首を折られそうになりながら、居心地の良い図書室に逃げ帰ることばかり考えていた。
これは、その半年間の物語。
私が玉座で泣かなくなるまでの。




