第23話「僕が人を殺す理由」
人間はなぜ、同じ人間という種族同士で殺し合うのか、考えたことはあるだろうか?
人間の数だけ、人殺しの理由がある。
浮気をされて苛立ったから。
自分の地位の昇進のため。
通りかかる人に悪態をつかれたから。
クラスで友達にいじめられ、ハブられたから。
ただ単に快楽のため。
複雑な内容のものもあるだろう。
上げだしたらキリがない。
だが、これらに共通して言えることがあると僕は考えています。
それは…
「楽しまれている」ということです。
人殺しが起きた時、誰かはその状況を楽しんでいる。
快楽殺人ならば、犯人が楽しんでいるのは明確な事実。
浮気にイラついて相手を殺した時も、スッキリするから殺すのだ。
もし、殺した側が楽しんでいなくとも、世間はそれを世に報道する。
そして、世間やネットではその事件について大勢の人間が語り、楽しむ。
自分には矢の届かない位置から罵声や批判を投げかける。
そうして共感の声を呼び、自分の自己肯定感と承認欲求を満たすのだ。
人殺しは1つのエンターテインメントだと僕は考えています。
それがよく現れているのが小説や映画です。
小説や映画の中で、人は簡単に人を殺します。
実際に殺してはいなくとも、物語で人を殺すことに躊躇はない。
そして、なぜ書くのかというと、読書してくれる人を楽しませるため。
また、読者もその内容を楽しむが、殺しの場面では何も思わない。
ただ殺されたことに疑問を持ち、そこにどんなトリックがあるのかを知りたがる。
そう、人殺しというものに、人間は慣れすぎた。
小説を読んでいる中で、人殺しの描写を見て楽しむ人間は多い。
世の中には中身が空っぽでもスプラッター描写のクオリティが高いというだけで人気が出る映画もある。
その作品のどの部分が良いのかと聞けば「人殺しの描写が凄かった」ぐらいなもの。
人間が人殺しを1つのエンターテインメントにしている理由がこれだ。
では、実際に起きた事件に対してはどうだろう?
皆、悲しむ声をあげたり、非難の声をあげるが、裏では本当に悲しんでいるのだろうか?
自分の身内ではないどこかの誰かが殺されたところで、何も思わないというのが現実なのだ。
いざ、自分のところに殺人鬼が現れた時、なぜだと神に怒りをあらわにし、たくさんの人に悲しんで欲しいと願う。
ましてや、この世にはノンフィクションというものがある。
実際の殺人事件を映画にしたもの。
そして、人はそれを大いに楽しんで評価をつける。
人殺しの映画に一般人が評価をつけるんだぞ。
「面白い」と書かれることがあるということなんだぞ?
「つまらない」と評価するが、それは本当の事件に対して言っているのと同じ。
実際の事件に何を求めているのだ?
もっと残酷な内容か?
それともサイコパスな犯人を求めているのか?
人殺しがなくならないのは、こういった理由の中に本質が隠れているからだ。
人が殺された時、世界の誰かはそれを楽しむ。
誰かが自分の承認欲求のために使う。
全ての理由はここに繋がる。
ただし、唯一違うのは寿命で亡くなった時だ。
僕が語る本質はあくまでも「人殺し」。
人が人を星にする瞬間のみの話。
「…」
裁判に来た連中は何も言えなくなった。
おそらくは今まで考えたことのない本質をつかれたからだろう。
証言台に立つ男が放った「人殺しの理由」はその場にいる人間の頭の中に新しい考え方を生み出した。
肯定はしなくない…
認めれば、人殺しを認めてしまうことになる。
それがそこにいる人たちの真意だった。
けれども、納得が出来ないという訳ではないのだ。
「皆さん、本を読んだ時、殺された人に同情したことはありますか?
フィクションだから、ない?
おそらくは楽しんだでしょう。
どうやって殺されたの?
どんな犯行の仕方をしたの?と。
無意識のうちに求めてしまっているんですよ。
人間は人殺しを。
それが自分の身内に降りかかった時だけ、人殺しを否定する。」
静寂だけがその場を包む。
刑がどうなるのかは目に見えていた。
どんなに納得のいく言い分を述べたところで、自分に死刑判決が言い渡されるのは確実。
予想通り、「死刑」が言い渡された。
その場から退場させられるとき、ふと目に入った青年がいた。
彼は男のことをジッと見つめている。
男は感じた。
「新しい芽」だと。
それが発芽するかどうかはこれから。
自分の所へ面会に来て欲しいと願う。
沼らせる必要はない。
この場で自分の話を聞いた人間はみな、普通の考えではいられなくなるから。
ただ、その闇に踏み込むか踏み込まないか、それだけ。
踏み込まなくとも、その考えが頭から離れずに、考え方を蝕んでいけばいいと感じていた。
これが僕の人を殺す理由。
あなたはどう思いますか?
僕の小説を読んで、その中で人殺しが行われた時、何を思ったのだろう?
その答えはあなただけが分かる。
あくまでも、これは僕の意見です。
白石文也という、しがない小説家の。




