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僕が人を殺す理由  作者: アズキ


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第10話「さらなる狂気」

彼は楽しんでいた。

表情が分からない仮面の下で笑みを浮かべている。

あんな経験は初めてだった。

1人の警官に追われ、その後、大量の警察官に追われる。


逃げなければ捕まる。そんな危機的状況だったのだ。

しかし、それがたまらなく楽しかった。

生きている実感が湧いてきて、警察を欺くことで自身の方が上手であることを感じさせる。


だが、今までのように路地裏で人を殺すことは難しくなった。

警官の数が増え、路地裏で人を殺してしまえば直ぐにバレるだろう。


では、彼は次にどういう行動を起こすのか?

渋谷の駅だけが彼の狩場ではなかった。

渋谷全体の街が彼の狩場。

警察は狩場を渋谷駅に絞っている。

それは彼が殺した時の場所が全て渋谷駅周辺だったからだ。


彼は今日も獲物を探し続ける。

ネットでの彼の評判は賛否両論。

人殺しを批判する声とともに、クズどもは死んで当然の報いだと、本音なのか冗談交じりで言った言葉なのかよく分からないものが数多く飛び交っていた。

ネットというのは自由が故に無法地帯になりがち。


しかし、少なからず、自分を肯定する者がいるという事実が彼を殺人鬼たらしめる強い意志へと繋がっていたのだ。

ネットの民たちはそんなことは知らずに、無責任な言葉を投げかける。

例えそれで人が殺されても、殺したやつの責任だと手のひらを返す。


今晩は、とあるアパートに目をつけた。

若い2人の男女が帰るのを目撃、その時に聞こえた話が彼を刺激したのだ。


「ねぇ〜本当に家でするの?

奥さんにバレたら大変だよ?」


「大丈夫だよ。あいつは今日夜勤だから明日の昼ぐらいにしか帰ってこないから。」


完全に浮気だ。

正義感が彼にある訳ではなかったが、そういう奴らに惹かれるのだろう。

それか、ネットの評判を気にして行っているのかもしれない。

少なくとも善のために殺しを行おうとは思ってはいなかった。


「じゃあ先にシャワー浴びようか。」


玄関に先に女を入れ、自分も玄関に入ろうとした時、彼が扉をガシッと掴み、中へと入ってきた。


「な、なんだお前!うっ!」


声を出す前に、男の方が腹を思いっきり彼に刺されてしまった。

その場に倒れ込み、必死に腹を抑えている。

女の方は悲鳴をあげる寸前で、彼に捕まり、後頭部を強く殴打され、気を失ってしまった。


苦しみ悶える男の姿を彼はひたすら楽しみ、刺し傷の上から靴で強く蹴る。

その度に血が吹き出し、玄関は血の海になった。

彼は喜びが抑えきれずに、仮面の下から笑いが溢れてしまう。

「ふふ」と笑う彼を恐怖と怒りの目で男は見つめる。


それがさらに彼の何かを刺激してしまった。

途中でさらに腹部の刺傷を横に広げ、内臓が少し露出するぐらいにまで痛めつけた。


声が段々と小さくなっていくが、最初よりも苦しそうな声へと変わる。

耳に心地よく彼は感じた。

録音してあとからイヤホンで聞きたいと思うほど。


彼の目は男の傷、血、内臓に集中し、1時たりとも目を離すことはなかった。

その光景を一生忘れたくないものだと思う。

目の中にその光景を保存できたらどれだけいいかと感じる。


そのうち口からも血を吐き出し、動かなくなってしまった頃にようやく彼は死んだことに気がついたのだ。

いつもならここで終わり。

殺したという背徳感と快楽のあと味を噛み締める。

それだけで十分だった。


けれども今回はデザートのようなものがある。

と言うよりも、こちらの方が彼にとってはメインディッシュに近かった。

彼は2人を見た時からとあることを頭の中で考え、それを実行するために動いていたのだ。


それには女を直ぐには殺さずに、生かしておく必要があった。

準備は着々と進んでいて、あとは女が目覚めれば全ての準備は完了する。

彼はそれが楽しみでならなかった。

目覚めた時、女はどんな顔をするのか。

どんな絶望を自分に見せつけてくれるのか。

とても楽しみだったのだ。


女が目覚めた時、ベットに縛り付けられていた。

服は全て脱がされており、身動きが取れない。

口には布があり、声を発することもできない状態になっていた。

とりあえずで体を揺らし、暴れてみるが無意味だ。


首を上げて、自分の下の方を向く。

そこには男の死体が座らされていた。

自分と同じように服を全て脱がされており、腹部の刺傷からは血がまだ垂れている。

それが浮気相手だということを理解するのに時間はかからなかった。

かからなかったが故に絶望に達するまでも早い。


これから自分がどういう運命を辿るのかを察せてしまうのだから。


奥の方から彼が姿を現す。

女は恐怖で叫ぼうとしたが声が出せない。

体を必死に揺らして抵抗しようとした。

先程、試して無意味だと分かっているのに、体が勝手に動く。

女が動く度にベットがキシキシと音をたてる。


彼が次にとった行動は、男を椅子から運び、女の上に多い被せたのだ。

男の体に残った血が女の体へと滴る。

まだ生暖かい血を肌で感じ、女の気分は最高に最悪になった。


彼は死体の唇を女の唇に近ずけ、布を噛ませた状態ではあるが、そのままキスをさせる。

顔にも血が降り注ぎ、あっという間に顔が血まみれになった。

死体の手を使って、女の顔を触ってみせたりもする。


その後、何を思ったのか男のペニスを女の股に差し込んできた。

彼は男の体を人形のように扱い、上下に激しく揺らしたのだ。


そう、いわゆる今までの行為は「前戯」だったのである。


既に死んでいる人間のペニスなど、高が知れているが、それでも女の体に刺激が与えられない訳ではなかった。

動かす度に血が体にかかり、恐怖で叫びたくて仕方がない。

けれども出てくるのは鼻の辺りから漏れ出る呻き声のようなものだけ。


そんな状況におかれているのに、死体に肉体を犯されているという快楽を体が感じ取ってしまうのだ。

泣き叫びたいのに、体が反応し、うめき声の中に喘ぎ声が混ざり始める。


抵抗したいのに、体に電流を走らされているかのように言うことを聞いてくれないのだ。

感情と感覚がぐちゃぐちゃに掻き回されながら女は涙を流した。


その光景を彼は瞳に強く写し、目に焼きつける。

思わず歓喜の声が彼の仮面から漏れ出してしまった。

ただの殺人では物足りなくなった彼は、狂気的な方法で快楽を得ることができたのだ。


十分に楽しんだあとは女の上に跨り、包丁で体の至る所を刺した。

女は既に気が滅入ってしまっていたらしく、刺されてもそこまで反応がなく、少しガッカリしてしまう。


腹部を切り開き、内臓を部屋中にばら撒き、ひたすらに快感を覚えるのだった。

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