プロローグ
物事を深く深く考えたことはあるか?
全ての事柄には理由が必ず付きまとうもの。
それを深く深く、深淵にまで到達するまで考えると新しい発見をすることができる。
そして、その発見に人々は魅了され、感化されのだ。
しかし、深淵にまで到達してはいけない、考えるべきではないものが、人間の社会にはある。
1つでなく、いくつもあるだろう。
そんなふうにして、考えるべきではないものを深淵にまで到達させた時、何が起きるのだろうか?
考えた人はどうなってしまうのだろうか?
とある裁判。
証言台には1人の男。
裁判官が男に質問を投げかける。
「あなたはなぜ、渋谷で大勢の罪のない人の命を奪ったのですか?」
まっすぐ正面だけをジッと見つめる男は軽く笑みを浮かべた。
目は笑っていない。
「今も、この瞬間、僕のこの状況を世間は楽しんでいます。
人はみな、他人事だと、殺されたのが自分や身内でなければ気にも止めません。
でも、何故か、殺した犯人である僕には興味が湧くんです。
人々は僕の事を知りたがり、それを話題の種とする。
そしていざ、殺されるような場面に自身が遭遇すると、自分を憐れみ、そこでやっと何故自分なのかと神に問うんです。」
裁判官の顔は曇る。
傍聴席で聞いている人たちの顔も曇っていく。
目の前にいるのは、殺人鬼であり、その思想を受け入れ難いとしているのだ。
なのに、なぜ彼らはそんなやつの裁判を見に来るのだろうか。
「危機感を持たせるために人を殺したと?」
「僕は殺人鬼ですよ。
そんな親切なことをするような人じゃありません。」
その場にいる人全員が不快感に包まれ、証言台に立っているその男がどれほど邪悪な存在なのかを理解した。
「僕が人を殺す理由は…」
判決の結果…死刑。




