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僕の言葉がなぜか正解になる世界で ―無自覚の一言が、人も世界も動かしてしまう  作者: 三浦レン


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第15話 それでも言葉は使われる

 「すでに“使われている”」


 その言葉が、頭から離れなかった。


 外で。


 見えない場所で。


 誰かが、僕の言葉を使っている。


「……どういうことなんですか」


 気づけば、口にしていた。


 でも、答えは返ってこない。


 王都の男はもう背を向けている。


 聞く気はないらしい。


「……アオイ」


 カイルが代わりに口を開く。


「可能性はいくつかある」


「……教えてください」


「一つは、報告の拡散」


 淡々と説明する。


「君の発言内容が記録され、他の場所で再現されている」


「再現……」


 それは、まだわかる。


「もう一つは」


 少しだけ間を置く。


「“解釈の伝播”だ」


「解釈?」


「意味が、形を変えて広がる」


 ミラが、小さく笑った。


「それが本命ね」


「……どういうことですか」


 僕が聞くと、ミラは肩をすくめる。


「簡単よ」


 軽く言う。


「あなたの言葉は、“そのまま”じゃなくても使えるの」


「……」


 それは、あまり良くない気がした。


「例えば」


 ミラが続ける。


「“前に出すぎるな”」


 あの言葉。


「それが、“慎重に動け”に変わる」


「……」


「さらに、“無理をするな”にもなる」


「……」


「もっと広がれば、“状況を見ろ”になる」


 そこまで行くと、もう別の言葉だ。


「でも」


 ミラは楽しそうに言う。


「意味は繋がっている」


 それが、広がる。


「……」


 言葉が出ない。


 それはつまり――


「止められない、ってことですか」


「ええ」


 あっさり肯定された。


「一度広がった意味は、勝手に増える」


 その言い方は、少しだけ怖い。


「……」


 リナが、少しだけ顔をしかめる。


「それってさ」


「うん」


「もう、アオイのものじゃないよね」


「……はい」


 その通りだった。


 もう、自分の言葉じゃない。


 勝手に使われている。


 勝手に変わっている。


「……なるほどな」


 レオンが小さく呟く。


「だから“外”か」


 少しだけ納得したようだった。


「お前の手を離れている」


 僕を見る。


「だから、止められない」


「……」


 何も言えない。


 それが事実だからだ。


「……じゃあ」


 リナが言う。


「どうするの?」


 いい質問だった。


 でも、答えは簡単じゃない。


「……」


 考える。


 でも、まとまらない。


 そのときだった。


「やることは変わらない」


 レオンが言った。


 全員の視線がそちらに向く。


「何を」

 リナが聞く。


「“通る条件”を掴む」


 短く言う。


「それがなければ、制御できない」


「制御……」


 その言葉に、少しだけ引っかかる。


「制御、するんですか」


 僕が聞く。


「するしかない」


 レオンは即答した。


「しないと、使われる」


 それは、さっきの話と繋がる。


「……」


 選択肢がない。


 やるか、やらないかじゃない。


 やらないと、勝手に進む。


「……アオイ」


 カイルが言う。


「現時点での結論は一つだ」


「何ですか」


「君は“影響源”だ」


 その言葉は、重かった。


「意図の有無は関係ない」


「……」


「すでに影響を与えている」


 否定できない。


「だから」


 少しだけ間を置く。


「自覚する必要がある」


「……」


 それが、一番難しい。


「……アオイ」


 リナが、小さく言う。


「どうする?」


 またそれだ。


 でも――


 今度は、少しだけ違う。


「……やります」


 言葉が出る。


 さっきよりも、少しだけはっきりと。


「何を」

 レオンが聞く。


「ちゃんと、見ます」


 自分の言葉が、どう動くのか。


「逃げずに」


 それが、今できることだ。


「……いい」


 レオンが頷く。


「それでいい」


 短い肯定。


 でも、それで十分だった。


「……じゃあ」


 リナが言う。


「具体的には?」


「……」


 少し考える。


 そして――


「外を見ます」


「外?」


「はい」


 村の外。


 森の外。


 そして、その先。


「“外でどうなってるか”を見ないと」


 今のままじゃ、わからない。


「……なるほど」


 カイルが頷く。


「合理的だ」


「……」


 王都の男が、少しだけこちらを見た。


 何も言わない。


 でも――


 ほんの少しだけ。


 評価が変わった気がした。


「……」


 空気が、少しだけ動く。


 止まっていたものが、また進み始める。


 二日。


 その中で、何を掴めるか。


 そして――


 その先に、何があるのか。


 まだ、何もわからない。


 でも一つだけ、はっきりしていることがある。


 言葉は、もう止まらない。


 だから――


 追うしかない。

「使われる側」から「見る側」に変わりました。


ここからは、“外で何が起きているか”を追う段階です。

村の外で、言葉はどう動いているのか。


次章、スケールが一段上がります。

もしここまで面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。

次話は、いよいよ「外」に踏み出します。

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