第131話 新たな決意
一行は1体の魔族を台車に載せ、次の場所へ向かった。
こちらもモンスターの大群が通った際に踏み荒らされており、ロックたちの倒した魔族やモンスターたちは元いた場所から離れて散り散りになっていた。
台車に回収しながら光る珠も一緒に拾い上げていく。
1体につき1つあるようだ。
「なんなんだろうな?
これ。」
グリゴリーが不思議そうに見つめる。
「サボってないで、手伝ってくれよ。」
リッチェルが文句を言いながら、倒れていた魔族を仰向けにする。
「…ドルテ?」
仰向けにされた魔族を見て、ゴルドが血の気の引いた顔で近づいてくる。
「ど、どうしたんだい?」
尋常ではない様子に、戸惑うリッチェル。
「どいでぐれっ!」
リッチェルを突き飛ばし、もう動くことはない魔族の身体を抱き起こす。
「ドルテ!
ドルテだべか!?」
しかし、返事はない。
「ゴルドさん!?
どうしたんですか!?」
ロックたちも駆け寄る。
「…こいづは、おらの息子だ…。」
「え!?
ゴルドさんの…!?」
確かに、以前ゴルドは息子を戦場で亡くしたと言っていた。
結果的にゴルドの息子を手にかけてしまったロックたちは、ゴルドにそれ以上言葉をかけることができなかった。
「う、うぉぉおお!!
なんで…、なんでこんなこどに…。」
大声を上げて泣き崩れるゴルド。
その両腕でしっかりと魔族になってしまった息子を抱きしめている。
「他の魔族も、うっすらと見覚えがある…。
見た目が変わってしまっているから特定はできんが、やはり元は攫われてしまった冒険者なんだな…。」
自分の子どもと重ねて、見ず知らずだったロックたちにとても親切にしてくれたゴルド。
他にもたくさんの冒険者たちを手助けしてきたゴルドは、アラートフの町でも多くの人たちに慕われていた。
息子を重ねて、それだけ他人を思いやることのできるゴルド。
本当の子どもへの親としての愛は、とても深いものなのだろう。
ゴルドはしばらくその場を動こうとしなかった。
そして、他のみんなもただ見守り続けた。
「…すまんかっだ。
取り乱しでしまったべ…。」
「ゴルドさん…。」
ゴルドの前で立ちすくむロックたち。
「ロッグ、ティナ、ミラ。」
ゴルドは3人に向かって、しっかりとした口調で名前を呼びかけた。
「はい…。」
ゴルドの呼びかけに、ロックが代表して答える。
「ありがどう。」
おもむろに頭を下げるゴルド。
「え…!?」
困惑する3人。
「ドルテは…、息子は、人を守るだめに冒険者になっだ。
それが、魔族にされで街を襲うなんで…、もし意識が残ってたどしだら辛かっだと思う。
おめえたぢのおかげで、救われだはずだ…。
…ありがどう。」
「ゴルド…さん。」
「ただ、魔王は、魔王だけは…、絶対に許せねえ…。
大事な息子を魔族にしで、人を守りだいと言っでたその息子に人を襲わせ…。
おらの子ども同然のおめえたぢと殺し合わせだ。
人の大事なもんを踏み躙りやがっで…!」
(悔しい…。
自分のスキルで被害を無くしたり減らしたりできたことで、役に立てたと感じてた。
でも、結果大事な人をこんな辛い目にあわせてる…。
ただ「倒す」だけじゃダメなんだ。
もし僕のスキルで冒険者側の犠牲を減らすことができたとしても、この悲しみの連鎖は断ち切れない。
…犠牲者を0にすれば魔族が増えなくなってて解決できる?
いや、でもそれを世界中で続けるのは無理があるし、僕がいなくなればまた魔族は増える。
どうすればいいんだろう…。)
ロックは大事な人たちの幸せを守りたくて冒険をしているが、魔族やモンスターをただ倒すことではその目的を果たせないことを改めて痛感した。
でも、どうすればいいのか、その答えは今はわからない。
しばらく考え込み、そして口を開いた。
「すみません、正直なんて言えばいいのか…、わかりません。
でも、僕も魔王は…、許せない。
大事な人同士を傷つけ合わせるなんて、あんまりだ。
倒しちゃダメなのかもしれないけど、今のままじゃまた同じことが繰り返される。
ゴルドさん、魔王は、こんなおかしな世界は、僕たちがきっとどうにかします。」
決意を込めた目でゴルドを見るロック。
そして、声に出さずとも同じ気持ちであることがティナとミラの目から伝わった。
「ロッグ…。」
「魔王をどうにかする…、か…。
考えないようにしてたわ。」
セアラからボソッと声が漏れた。
他のS級冒険者たちも何か思うところがあったようだ。
それから一同は言葉を発することなく、魔族とモンスターを回収して要塞へと戻った。




