第130話 ロックたちが犯した罪
ギルマスは大きな台車を持ってきた。
素材となるモンスターを運ぶためのものだ。
通常であればB級冒険者やC級冒険者が担う役割なのだが、込み入った話になるだろうということでギルマス、S級冒険者4人、ゴルドを含むロックのパーティでそのまま出発することになった。
「あそこです。」
はじめに魔族たちと顔を合わせた場所から少し離れたところに、魔族の死体が1体横たわっている。
モンスターたちが生息域に引き上げるときに踏まれてしまったのだろう、遺体はボロボロになっている。
近寄り、ギルマスがうつ伏せになっていた遺体を仰向けにする。
そのとき、妖しく光る珠がコロコロと転がってきた。
ロックたちはこの珠について頭を悩ましていた。
ダートで魔族を倒した後こっそりもらった珠がまた出てきた場合、公になればダートで出現したはずの珠の所在を問われる。
そうすると関与したダートのギルマスやアメリアにも調査のメスが入ることになる。
善意でもらったのに、そうなると非常にまずいことになる。
「なんだ?
これは。」
アルカトルのギルマスが光る珠を拾い上げた。
「これが何かわかる奴はいるか?」
周りが首を横にふる中、ロックたちは黙ってギルマスを見ていた。
「ロックたちは心当たりがあるのか?」
「それが何かはわかりません…。
ただ、ダートでも魔族を倒したとき同じものを拾いました。」
「ほう。
ギルド間の連絡事項では聞いてなかったな。」
「それは…、経緯は言えないのですが、公にしないままこの珠を手に入れたんです…。」
場の雰囲気がピンと張り詰める。
「ロック、それが規則に違反しているということは認識してるのか?」
「…まずいことだとはわかっていましたが、具体的にどのような規則に違反するかはわかっていません。」
「モンスター侵攻の戦果を個人的に取得することは、他の冒険者への平等性を犯し、今まで築かれてきた信頼関係を崩す行為となる。
団結力が重要な戦いにおいて、これは見過ごせない違反行為なのだ。」
「…すみません。
違反行為に対する罰は…、どのような罰ですか?」
「ちょっと!!
ロックは悪いことしてないじゃない!」
ミラが我慢できずに口を挟む。
「あれは、ア…、むぐぐ…。」
名前を出しかけたミラの口をティナが塞ぐ。
「ギルドマスター、確かにおっしゃる通りです。
ただ、ダートの光る珠は、ロックのおかげで犠牲者を出さずに済んだお礼にいただいたものなんです。
成り行き上その話を全てしてしまうと、お世話になった方々に迷惑をかけてしまうことになります。」
ティナの後をロックが引き継ぐ、
「必要であればダートでいただいたものも返却しますし、内容によりますが罪も償います。
ただダートでどんな経緯で手に入れたかは不問にしていただけませんか?」
腕を組み考え込むギルマス。
「それだけロッグたちの貢献が大きかっだってこどじゃねえか?
魔族を倒すこど自体今までながったこどだ。
これだげみんなのために、自分の秘密をバラしてまで頑張っでくれだロッグたぢを、不平等だって言うやづがいるが?」
「それを言われるとこっちも弱ってしまうが…。」
「文句言う奴がいたら、私が黒焦げにしてやるわよ。」
セアラが物騒なことを口にする。
「そうだな。
ロックたちに罰を与えるってんなら、S級冒険者の俺たちを敵に回すことになるぜ?」
「ティナとミラを守るためなら、僕は世界中のギルドと敵対したって構わないよ。」
「…私利私欲のために動くような者たちではないだろう。」
S級冒険者たちの援護射撃が頼もしすぎる。
「おいおい。
これじゃまるで俺が悪者みたいじゃないか。
…俺だってロックたちに処罰を与えるつもりなんてないさ。
しかし、どう処理したらいいもんか…。」
「黙っとけばいいじゃない。」
セアラがなんでもないようにいう。
(アメリアと似てるな…。)
「ダートの魔族からドロップした珠のことを黙ってても、今回のことを報告したらどうしたって聞かれるだろう?」
「じゃあ、今回の珠もレディにプレゼントしようじゃないか!」
「リッチェル、お前は黙っててくれ…。」
「俺もそれでいいと思うぜ?
だって倒したのもロックたちだろ?」
「お前ら…。
俺の立場にもなってくれよ…。
バレたらなんて言われるか…。」
「…ロックたちはバレたらもっと困ることを打ち明けてくれてる。
守る秘密が1つ増えただけだろう。」
「みなさん…。」
「わかったよ!
俺は何も知らなかった!
魔族から光った珠なんて見つけてねえ!」
「ギルドマスターさん!
さっすが〜!」
「んだんだ!
それがいいべ!」
「すみません…。
ありがとうございます…。
とは言っても、これがなんなのか、全然わからないんです。
もし貴重なものでしたら、秘密を共有してる皆さんにだけでもお知らせします。」
「マジでバレないようにしてくれよ…。」




