第123話 アルカトル防衛戦⑨
本陣前。
アッサールが乗り移られたことにより、冒険者側の勢いが大きく落ちた。
それだけ彼の存在は大きかった。
さらに、アッサールに対処するグリゴリーたちも一時的に戦力外となったため、全体の戦況はモンスター優勢に傾いた。
A級モンスターの多くが本陣の方へ移動していくことを察知したロックたちは、急いで本陣の方へ戻った。
その途中には、すでに事切れた冒険者たちが横たわっていた。
それをやりきれない思いで見ながら、本陣へ向かう。
本陣ではセアラが奮闘していた。
防衛の一角を1人で担っている。
彼女の魔法はユニークスキル【杖神】によって2倍の威力に引き上げられる。
他の武器の[武技]にあたる能力だ。
さらに、【魔力チャージ】も最大2倍まで威力を高められる。
S級モンスターすらも一撃で葬ることができる威力だ。
そして他の冒険者もA級冒険者を中心に本陣を死守していた。
ロックは分裂体を各チームの援護に向かわせた。
今回侵攻してきているモンスターの数は、いつもの倍。
ただ、同時に攻めてこれるモンスターの数はいつもと変わらない。
攻め込めるルートの幅は限られているからだ。
ロックたちの加入により、かなりの戦力アップを果たしているが、いつもと同じくらいのペースで犠牲者が生まれている。
その要因は、A級モンスターの数と戦術。
戦っているモンスターの群勢に占めるA級モンスターの割合が多く、しかもいつもよりも組織的な攻め方をしてきているためだ。
本陣付近のA級モンスター比率が増えたのも、ついさっき。
おそらくアッサールへの【乗り移り】とタイミングを合わせてきている。
モンスターの数が多いことによる影響は、後半になればなるほど顕著になってくる。
回復しながら戦っているとはいえ、冒険者側の体力・精神力は確実に減っていく。
このままでは多くの犠牲者が出るだろうし、もしかしたら街へも被害があるかもしれない。
本陣の危機に、全体指揮をとっていたA級冒険者であるギルマスも戦場で戦っていた。
ロックたちは敵を掃討しながらギルマスに近づいた。
「ギルドマスター!
このままでは被害が…。
やっぱり僕のスキルで、冒険者たちのスキルを入れ替えましょう!」
「いや、会議でも言ったように、そのスキルが公になれば世界が混乱し、今よりも甚大な被害が生まれる!
この戦いで何人もの冒険者のスキルを入れ替えただけでもかなりリスクがあるのに、他の冒険者まで範囲を広げたら間違いなく情報は漏れる!」
「でも…、このままじゃ…!」
そう、このままじゃ街まで被害が出て、多くの人命が失われる。
それはわかっているが、アルカトルの街を守るために、世界的な混乱を起こす可能性を限りなく高くする手段をとるという決断がくだせない。
「…その必要はない。」
そこに、アッサール・リッチェル・グリゴリーパーティが合流してきた。
「よかった!
無事だったんですね!」
分裂体がやられたためリッチェルに対応をお願いしていたのだが、心配していた面々が無事でホッと胸を撫で下ろすロック。
「それでアッサール、必要ない、というのは?」
ギルマスがアッサールの言葉に対して問いかける。
「ロック、俺にもスキルを与えてくれ。」
「アッサールさん…!」
ギルマスとロックが顔を見合わせる。
「アッサール、それは助かる!
君らが連携して本陣の戦力に加わってくれれば、守り切れる!」
アッサールが【バーサーカー】を使うため、彼は他の冒険者と連携が取れず、また回復のために他のパーティが非効率的な行動を取らざるを得なかった。
これならアッサールが状態異常を受けても、すぐに回復ができる。
「もちろんです!
ちょっと待ってくださいね!」
ロックは目当てのスキルを持っているモンスターを探す。
「いた!
<スキルスナッチ>!」
『どのスキルを奪いますか?』
『【威圧】スキル
【全能力50%UP】スキル』
「【全能力50%UP】!」
『【全能力50%UP】スキルを奪いました。どのスキルと入れ替えますか?』
「【上級特殊魔法】!」
『【上級特殊魔法】スキルは完全に消滅しますが、よろしいですか?』
「うん!」
『【上級特殊魔法】スキルと【全能力50%UP】スキルを入れ替えました。』
「いきますよ?
アッサールさん。
<スキルギフト>。」
『どのスキルを誰に与えますか?』
「【全能力50%UP】をアッサールさんに。」
『【全能力50%UP】スキルをアッサールに与えます。』
「…おお。」
『【全能力50%UP】スキルを受け取りました。どのスキルと入れ替えますか?』
「…【バーサーカー】。」
『【バーサーカー】スキルはなくなりますが、よろしいですか?』
「…ああ。」
『【バーサーカー】スキルと【全能力50%UP】スキルを入れ替えました。』
これで上級特殊魔法のバフをかければ、【バーサーカー】とほぼ同等の火力を出せる。
MP消費は大きいが、本陣で回復することができる。
「…俺のワガママのせいで被害を増やした。
死ぬ気で挽回させてもらう。」
「何言ってるんだよ、アッサール!
あんたが今までどれだけ頑張ってモンスターの数を減らしてくれてたかはみんな知ってる!
感謝してるんだから、前向きに行こうぜ!」
グリゴリーの言葉に、みんなが頷く。
「…恩に着る。」
「それより、早く本陣に向かおう。
あそこには可愛いレディたちがたくさんいるんだ。
なんとしても守らなきゃ!」
「お前はブレないな、リッチェル。
よし、本陣にいくぞ!」
リッチェルの言葉に苦笑いしながらギルマスが号令をかけ、それに応えた一同は本陣へ急いだ。




