クエスト7-10 鎧化・ホムラカズチ(後編)
火の精霊剣ホムラカズチを起動し、俺は眼前にいる巨大スケルトンに対し、戦闘態勢を取る。
「ウオオオオオオオオアアアアアアアアア!!!」
本能の昂りに任せた雄叫びの後、頭の冷えた自らの姿を確認してみる。
身体は真紅の鎧に覆われ、身長は5倍くらいになっており、遠くで観ているタンデ達がかなり小さく見える。
腕……というより顔を除いた上半身は特に肥大化し、少し膝を曲げただけで地面に手がつく。
下半身は下に向かうにつれて大きくなっているが、上半身を支えられる程かというと少し不安が残る感じだ。
一言で言えば、漫画やゲームでよくあるパワー型のロボットのような外見になっていた。
かつて戦った四天王ワールヴェントをより極端にし、鎧を着せた感じでもあるか。
武器は体躯に合わせた2本の巨大な刀と、両肩に付いた大砲。あちこちにあるスラスターも、上手く使えば武器になるかもしれない。でも刀は2本もいらねぇよ!
にしても、鎧というよりもはやロボットの類だなこれは。
しかし、この姿は俺がイメージしたものではなく、あらかじめ用意されていた姿だ。
剣だけならともかく、鎧を自らのスタイルに合わせて調整できないのは地味に痛手だな。
「すっご……」
「あれが、シンヤなのか?」
「これはまさに、炎の巨神なのデス!」
巨神を名乗れるほど大きくはないと思うが……
まあいい、今は目の前の敵を倒す。それだけだ。
「はっ!」
邪魔な左手の刀を地面に突き刺した後。右足を前に出し、体重を前にかける。
すると、俺の身体は坂道を下るローラースケートのように滑走を始める。
俗に言うホバー移動であり、ホムラカズチの基本的な移動術となる。
「おらあああああ!!」
慣れない移動方のせいか出だしでつまづきそうになったが、どうにか抑えつつ前傾姿勢で加速して、ラリアットを放つ。
巨大スケルトン……いや、ガシャドクロの方がいいか。
ガシャドクロが構える前にラリアットは命中して吹っ飛び、轟音と土煙と共にガシャドクロは地面に倒れる。
追撃のチャンスか!
「重火砲!」
頭の中に流れてきた技名を叫んだ直後、両肩の大砲が唸りを上げて発砲し、ガシャドクロに命中する。
派手な爆発、爆音。赤い霧を吹き飛ばす土煙。
だが、流石にこれ1発では倒せまい。
足のホバーは体重をかけた方に進む仕組みのようなので、思いっきり前に体重をかけて突撃する。
「はあっ!」
土煙が晴れる直前、ガシャドクロに向けて刀を振り下ろす。
ギィン、という金属音の後、土煙の中から俺の攻撃を刀で受け止めるガシャドクロが現れる。
くっ、向こうも思ったよりパワーがあるな……!
「っ!」
攻撃を受け止めるガシャドクロは刀を滑らせて力を逃し、振り抜いて弾き飛ばす。
「はっ!」
刀の柄で横っ面を殴り、ガシャドクロが怯んだ瞬間に刀を両手で握り直して振り下ろす。
丸太でも切り落とすかのような感覚と岩を破壊するかのような音と共に、ガシャドクロの肋骨を斬り裂く……いや叩き斬る。
技量不足かそれとも元々の仕様か、切れ味は良くない。
重量に任せた攻撃もそれはそれで扱いやすくはあるが……
お互いに刀を構え直し、そして打ち合う。
ガシャドクロはさっきの一撃と重火砲でかなり損傷しているが、そんなことはお構い無しに攻撃を続ける。
疲労の概念が無い敵はペースが落ちないから厄介だ。霧も効いてるか分からないし!
「どうじゃ? ホムラカズチの力は」
連続する金属音の傍、カグヤの声が聞こえる。
「パワーは圧倒的ですし俺自身にデメリット効果が無いのは頼もしいですけど、霧をばら撒くせいで味方がいると使えませんし、大きい故に小回りが効きにくいのは何とかなりませんかね! あと刀2本もいらないです!」
「そんなもの自分で何とかせい。精霊剣は全く融通が効かぬものではないわ。まあ刀は次から1本にしてやる」
微妙に不親切!
仕方ねぇ、自力でなんとかするしかないか!
「はっ!」
刀を弾いた隙にタックルで体勢を崩させ、追い討ちに一太刀浴びせる。
直後、刀を手でなぞる。
刀はなぞった所から燃え上がり、炎を纏う。
「炎一閃!」
居合斬りのように鞘に収めるような構えを取り、真一文字に全力で振り抜く。
炎の斬撃を受けたガシャドクロの身体は上下に分かれ、バラバラになりながら崩れていった。
「片付いたか……ん?」
ガシャドクロの手から刀が離れた途端、奴の身体はどんどん小さくなり、一般的な成人男性と同じレベルまで縮んでいった。
黒く輝いていた刀もオーラが消え、普通の刀と同サイズになって地面に転がる。
鎧化を解除すると、身体の感覚が元通りになり、地面に落下する。
それと同時に赤い霧も晴れ、地面に着地する頃には完全に霧は無くなっていた。
「シンヤ様ー!」
声と共に、妖精態のピスが飛んでくる。
それを追うようにして、タンデ達もやってきた。
「火の精霊剣、凄まじい力デスね!」
「初見の相手だから、詳しい実力を算出できないのがもどかしいところだが……あの巨大な魔物を単独で倒せたんだ、かなりの力を持っているだろう」
……デメリットは相応に厄介だが。
「あれは多分変異種だからぼくもよく知らないけど……大きい魔物は複数で討伐するのが基本だし、そういうことだろうね」
「で、これからどうすんだ? まだ何かやる事あんのか?」
「そうだな……火の精霊剣はもう取ったし、ミザン島でやる事はもう無い……あれ? アイゼンどこ行った?」
周囲を見回すと、リズがガシャドクロの残骸の方角を指す。
そこに目を向けると、黒く輝く刀を手に取ったアイゼンの姿があった。
「お、お前……!」
「ようやく見つけたぞ……妖刀骸烏……!」
「お前のかよ! おいシンヤ、コイツ1発シメようぜ」
タンデが指をパキポキと鳴らす。
「やめろ。火の精霊剣の練習になったし、貸し1つ程度にしとけ」
「そこは水に流すのがセオリーではないのか!?」
「あんなデカブツを生み出しておきながらそれは流石に虫が良すぎないか?」
「はい……サーセン」
「ま、シンヤがそう言うならそういうことにしといてやるよ。さっさと行こうぜ」
「ああ」
……………………
………………
数日後。
俺達はグレン村を後にし、ミザン島の港へとやってきた。
「次はセデム島……デスね」
「ああ、フィンがいる場所だ」
「皆は無事かな……」
そういえば、リズも仲間とはぐれたんだったな。
「きっと無事なのデス! シアルフィア様はとてもお強いお方デスし、リズ様のお仲間様とは面識が無いデスが、きっとリズ様の事を待ってくださっているのデス!」
「うん、そうだね。じゃ、早速乗船券を買いに行こー!」
リズに押される形で、俺は乗船券の売り場へと連行される。
「ちょ、押すな!」
「不屈の勇者シンヤよ、その場所を変わってもらおうか!」
「うるせぇ!」
セデム島行きの船の乗船券を買い、到着まで待った後、船に乗り込む。
和の趣を感じるミザン島を離れ、船は大海原へと進み出す。
ああ、米ともお別れか……
「そういえばピス、次の大精霊のいる場所ってどこだ?」
「次はデサティ島デスね」
「デサティ島……? あそこ廃墟で何も無いって聞いたけど」
「そうなのか?」
何も無い……? 村か町ごと滅んだのか?
「まあ、ウワサだけどね。あ、これ返すよ。覚えたし」
リズはそう言ってマインドシールドの魔導書を俺に手渡した。
「シンヤはこの先も戦い続けるんでしょ? だとしたらまたあの魔物と遭遇するかもしれないし、今度は仲間に渡してあげて」
「ああ、分かった。ありがとう」
「まあ、今はセデム島の事が先だね」
「そうだな」
フィン……無事でいてくれよ……!
――現在のギルドカード――
名前:シンヤ・ハギ 種族:荒野の民 階級:黒鉄
属性:無 レベル:18 職業:勇者
体力:93 魔力:0
筋力:71 敏捷:88
創造:20 器用:87
名前:タンデ・エコノ 種族:草原の民 階級:黒鉄
属性:風 レベル:17 職業:シーフ
体力:71 魔力:15
筋力:105 敏捷:123
創造:7 器用:46
名前:リーズヴェル・コランダム 種族:森の民 階級:黒鉄
属性:水 レベル:17 職業:魔法使い
体力:49 魔力:74
筋力:25 敏捷:36
創造:105 器用:55
名前:ピーステール・フォリア 種族:森の民 階級:緋銅
属性:風 レベル:1 職業:吟遊詩人
体力:35 魔力:130
筋力:5 敏捷:25
創造:35 器用:25
クエスト7はこれで終了となります。




