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リィンカーネーションクエスト  作者: シュガーロック
クエスト7 炎の巨神(集の大陸・ミザン島編)
93/106

クエスト7-6 邂逅

 


 ここは……




 ベッド?









 上半身を起こすと、ベッドの右隣にある椅子にタンデが、左側にリズが座っていた。


 タンデは腕を組みつつ俯いて眠り、リズは壁にもたれかかりながら寝ていた。





 よかった、2人とも無事だったか!

 ピスは……腕輪はしっかり付いているが、反応が無い。

 前にもこんな事があったが……無事だろうか。





 あまり広くはない木造の部屋の隅の窓からは、夕日の光が差し込んでいる。




 直後、タンデの耳がピクリと動き、顔を上げてこちらを見た。





「起きたか、シンヤ! おいリズ! シンヤが起きたぞ!」





 タンデは俺を見るなり、リズの鼻をつまんで叫ぶ。

 そのやり取りの最中、差し込む夕日の光によってタンデは頭と腹に、リズは左手に包帯を巻いているのが見えた。





 誰の仕業かは、考えるまでもない。


 あの野郎……!




「もー! なんでそこつまむのー!?」

「怪我した肩の方が良かったか?」

「いいわけないじゃん!」

「2人とも、その傷は大丈夫なのか!?」

「おめーほど重傷じゃねーよ」

「シンヤこそ、身体の方はどうなの?」




 リズに言われて、少し身体を動かしてみる。

 特に痛みや違和感は感じられない。


 動かした際に、俺も胸に包帯が巻かれていることに気付いた。


「問題無い」

「そっか、よかった。ごめんね、ぼくをかばったせいで……」

「気にするな、俺が勝手にやったことだ。それで、俺がやられた後アイツはどうなったんだ?」

「手ひどくやられて、何とか逃げ延びたって感じ」

「そういや途中ですげー速いなんかが飛んできて、そっから赤黒い魔法かなんかこうぐわーっってなって吹っ飛ばされてからは追ってこなかったな」



 素早い何かが飛んできて赤黒い何かが飛んできてぐわー……?

 分からん、さっぱり分からん。



「それよりよぉ、あのわけわかんねー女は何なんだよ」

「シンヤを連れ帰るとか言ってたけど……」

「相澤きらら……今はミーティアと名乗っているようだが、まあどっちでもいい。アイツは……アイツは俺と同じ世界から来た存在だ」

「お前と……」

「同じ世界……?」




 タンデは驚愕の表情を見せ、リズは顎に手を当てて考え込むような仕草を見せる。





「シンヤの世界って世界と世界を渡る技術とかあるの?」

「無い。そして女神ニヴァリスの力でこっちに来たわけでもない」

「じゃあ、魔王とかいう奴が引っ張ってきたのか?」

「分からん」

「んだよ、じゃあ考えるだけ無駄ってことじゃねーか」


 タンデは頭の後ろに手を回し、椅子に座り直す。



「いずれにせよ、奴はメアシスさんの言っていた偽物の勇者の可能性が高い」

「何それ?」

「ああ、リズはあの時いなかったか。勇者を名乗り、各地で好き放題やる連中だ。加護のある武器を持ち、当人も加護を受け、この世界の人間にとって馴染みの無い単語を用いる……そんな連中の事だ」

「あー、そういえば似たような話を前に聞いたことあるよ。ぼくが聞いた時は異界人って呼ばれてたけど」




 異界人……なんかそっちの方がスッキリした呼び名だな。




「これからどうする?」

「それに関してはだな……」



 相澤をぶちのめす……のは流石に無茶だ。

 とはいえ、また遭遇したら手も足も出ないだろう。

 鍛えまくってレベルを大幅に上げるか? いや、トルカとフィンの事を考えるとそういうわけにもいかない。だが……



「……あー、まとまってないなら明日決めよう、うん。今日はもう日が暮れてるし」

「……そうだな」




 リズの一言によりその日は解散とし、俺も眠りに就いた。





 ……………………






 ………………




 翌日。







 身体自体は問題なく動かせたが、念のため2日ほど激しい運動は控えるように、と教会の神父さんから通達が出た。

 ピスは変身こそできないものの、会話が可能な程度には回復した。




「これからどうする?」




 俺達は酒場の一角で集まり、話し合いをしていた。




「今のところ、例の人物……ミーティアの魔力は感じないのデス。どこかへ行ったのデスかね?」

「さてな。いないのであれば、早いとこ火の大精霊に会って、この島を離れよう」

「おう」

「そういえばピスさん、ミーティアとは別に恐ろしく邪悪な魔力がどうのって言ってなかった?」

「そうなのデス。ミーティアとは別に、とても邪悪な魔力を感じ取ったのデス」

「前に船を襲ったあいつか?」

「いえ、それとは違う魔力なのデス。あの感じは……混沌の魔物と似ていたのデス」





 混沌の魔物……あっ




「リズ、渡すものがある」

「ん? なあに?」

「これだ、マインドシールドという魔法の記された魔導書。異形の魔物と近付いた際の症状を抑えるらしい」

「あー、あの魔法か……ありがと」



 クソッ、俺としたことがこんな重要なアイテムを渡し忘れるとは……ああもうなんで忘れてたんだよ俺!




 そんな俺の内心はさておき、リズは俺に微笑みかけた後、ペラペラとページをめくっていく。

 ページをめくる度、頷いたりへー、と小さく声をあげたりと、感嘆する様子が見える。



「これ、かなり分かりやすくまとめられてるね。店売りの本じゃないっぽいけど、誰が書いたんだろう?」

「さてな。メアシスさんから貰ったが、その辺は分からん」

「あー、あの赤帽子の人か。あの人滅茶苦茶お金持ちだし、いろんなところに繋がりあるんだろうなー」



 リズは本を抱え、席を立つ。



「じゃあぼくはこれを習得してくるね。皆はどうする?」

「どうするったってぶっ壊された短剣の代わり探すくらいしかやる事ねーよ。2日間戦闘すんなって神父様に言われちまったんだからよ」

「あ、そうだったね……」

「シンヤも来いよ。どうせヒマだろ?」

「分かった、一緒に行こう。鎧と盾の修繕もしたいしな」



 リズと一旦別れ、タンデと武具屋へ向かう。





 ……………………





 ………………






「こちらの盾と鎧の修理をお願いできますか?」

「ふむ……この程度であれば、すぐさま元通りにしてみせよう。お代は合わせて100Pdなり」

「ありがとうございます。それでは、お願いします。こちら代金です」

「ひい、ふう、みい……うむ、確かに頂戴した。暫し待たれよ」




 侍のような出で立ちの店主に防具の修繕を頼み、その間にタンデと共に武器を見る。





 武器を見る、というのは不思議なもので、なんだか無性に心が躍る。





 俺は防具の修理するだけで武器を買い換えるつもりは無いのだが、飾られている武器を見ると構えたり振り回してみたくなってくる。


 刀や金棒や薙刀、さらには和弓にクナイなど、和風な武器が取り揃えてある。

 逆にこれまで散々見てきた西洋剣などは置いていない。



「変わった武器ばっか置いてんな」




 そう言いつつタンデが手に持っているのは、忍者刀とクナイ。

 その2つを交互に構え、考え込んでいた。




「前の短剣を直さないのか?」

「逃げる途中で投げつけてそれっきりだ。だから持ってない」

「そういうことか……」




 最終的にタンデは無事だった短剣より少し長い忍者刀を選んで買い、俺は修理の完了した防具を受け取って店を出た。




 ……………………






 ………………





 激しい運動を控えるよう言われた2日を適当に過ごし、その翌日に俺達は再びオニガミネの町を出た。

 いつもの通り、妖精態のピスを先頭に進む。




「周囲にミーティアの反応はありませんデスね」

「あの女、どこへ行ったんだ?」

「さあ……ぼく達を救ってくれた人も、ぼく達の味方じゃないっぽいんでしょ? なんかややこしいなぁ」



 ピスの分析によると、ミーティアから逃げる隙を作った存在の魔力は、どうやらディアマンテ遺跡前で出会った勇者を狩る者ことファフニールと一致するらしい。

 偽物の勇者も狩りの対象なら辻褄は合うが……あいつは何が目的なんだ?




 考えつつも足を進め、やがてエンキ山の登山口に到着する。



 木漏れ日が差し込んではいるが、微妙に鬱蒼とした森の様相はさして変わらない。




 ピスが周囲の反応を探知し、それが終わるといよいよ登山を開始する。





 石畳の道や階段のようなものがあるにはあるが、破損や風化が進んでいてあまり意味を成していない。


 整備されていない……というより、ずっと前に整備を放棄されたっきり、といった感じか。




「今は壊れているが、この辺りは道があったみたいだな」

「かつてはエンキ山を訪れる人々もいたけど、魔物が増えて寄り付かなくなった……ってことかな。この世界じゃよくあることだよ」

「なるほど……」



 おそらく、今回は土の精霊剣の時のようにダンジョンを攻略していく形になるだろうな。




「ま、要はパパッと行ってパパッと取って来りゃいいんだろ? 戦いはオレに任せときな」

「頼りにしてるぞ、タンデ」




 そうして歩いているうちに森を抜けると、岩肌の露出した場所に出る。

 視界は一気に開け、道幅も広がって見通しは良くなったものの、木々が大幅に減ってなんだか殺風景な感じだ。



 見通しが良くなったおかげで前方の道も遠くまで見えるようになったが、ただただ長い道のりが続いている。

 これは到着までかなりかかりそうだ。




「ピス、周囲に魔物の反応はあるか?」

「この先に少し反応がありますデス。デスが、皆様なら楽勝なのデス!」

「分かった。それだけなら問題無いが、もしかしたら相澤……いや、こっちではミーティアだったな。奴が現れるかもしれない。引き続き反応を探ってくれ」

「がってんデス!」




 それにしても、相澤を警戒しながら進む事になるとはな……チッ、考えただけで腹立たしい。他の事を考えて気を紛らわそう。






 今のところ天気は快晴、左手側は壁のようにそそり立つ崖、右手側は大人4人でも余裕で並んで歩ける程の道幅。ただし手すりや柵は無く、道の右端は30°もない急な下り坂になっているので万が一落ちれば良くて大怪我、最悪の場合死ぬ。




「この辺鳥の魔物が多いな……」




 先を歩くタンデが独り言のように漏らす。


 目を凝らすと、距離こそ遠いものの、あちこちにただの野鳥にしては大きい影がいくつか点在しているのが確認できる。




 直後、ピスが振り返って叫ぶ。




「皆様! 上から魔物がこちらにやって来るのデス!」

「へへっ、ちょうど腹が減り始めたところだ。サクッとやっつけて丸焼きにでもして食ってやるぜ!」




 そう意気込み先頭に立つタンデの前に豪快な着地音と共に現れたのは、直径が俺の腰くらいの、顔のついた丸い岩石。




「タンデ、岩なんか食べるんだ……」

「ちげーよ! 誰がこんなもん食うか!」

「じゃあ何が来ると思ったんだよ」

「鳥だよ!」





 人面岩(この辺りの魔物の情報は得られなかったので仮にこの名称とする)は何かをすることもなく、修行僧のような顔をしながらじっとしている。


 なんとなくだけど、こいつもしかして……




「リズ、こいつがどんな魔物か知ってるか?」

「これと似たようなのは知ってるよ。ボムロックっていう、確か攻撃すると爆発するやつだったような……」

「は?」



 素っ頓狂な声を出したタンデの方を向くと、攻撃を加えたタンデの姿と、先程と違って怒り狂う鬼のような顔に変化した人面岩の姿が目に入る。




「ねえこれやばくない!?」

「落とせばいいんだよ! オラッ!」




 タンデは急遽獣人態に変身し、体当たりやキックをかまして落とそうとする。

 俺も加勢し、ヒビが入ってそこから光が漏れている人面岩を転がして落とす。


 人面岩が地面を離れて約2秒後、人面岩は派手に爆散した。


 爆風で壁まで吹き飛ばされ、破片が構えた盾にぶつかる。

 壁までノックバックを受ける程の爆風故に飛んでくる破片の勢いも凄まじく、下手な魔物の攻撃より強力なものであった。




「ふぃー、危なかったぜ」

「あーびっくりしたー」


 汗を拭いつつ、息を整える。

 ったく、油断も隙も無いな……


「どうせならもっと早く言ってくれよな」

「もっと早く言ってくれよな〜、じゃないよ! そっちこそ、迂闊に攻撃したりしないでよね!」

「へいへい」


頬を膨らませるリズを、タンデは適当にあしらう。


「皆、怪我は無いか?」

「オレはへっちゃらだぜ」

「ぼくも大丈夫」

「問題なしデス!」

「よし、じゃあ進もう」



 素材を回収し、再び行軍を開始する。






 ……………………






 ………………








 山道を歩き通すこと数時間。




「疲れたぁ〜」



 坂は若干なだらかになり、木々が少しだけ増えてきた。少し遠いが、山小屋も見える。

 今でちょうど半分越えたくらいか?




「ちょうど山小屋もあるし、あそこで一休み……」

「ムムッ!? 皆様、大量の魔力反応があるのデス!」

「何?」



 目を凝らすと、山小屋の近くで鳥の集団が上空を旋回している。

 下に何かがいて、それを襲うタイミングを図っているように見える。




「魔物の群れに誰かが襲われているのかもしれない。行こう!」

「おう」

「うん」

「がってんデス!」




 走りながら弓を取り出し、戦闘態勢に移行する。




 山小屋近付くにつれ、多量の鳥の鳴き声に混じって人の声が聞こえてきた。




「待ってシンヤ! 強い闇属性の魔力を感じる!」

「もしかすると、ミーティアとは別の偽物の勇者かもしれないのデス!」



 リズとピスの声で一旦足を止め、近くにあった倒木に身を隠しながら山小屋前の状況を見る。




 あ、あいつは……!





「フッ……怪鳥の群れか……だがこの漆黒の魔眼を持ちし宵闇の魔剣士、シュヴァルツ・アイゼンブルートの敵ではない……まとめて粉微塵になりたくなければ今すぐにこの場を離れるんだな……」






 この中二病全開な物言い、奇妙なポーズ、そしてこの声……!





 黒田だ!





「黒田ァ! 久々じゃないか! お前までここにいたのか!」

「シンヤ様!?」




 友人に再会できた嬉しさの余り、ピスの制止も忘れて倒木から身を乗り出し、駆け寄る。






「フッ、久しいな……不屈の勇者シンヤよ。我等に勇者という存在を広く知らしめた始祖たる英雄の姿を継承するとは、実にお前らしいな」



 うん、相変わらずの中二病っぷりだ。

 服も白い上着をマントのように肩にかけ、やたらチェーンの付いた黒い服とズボンを纏い、手には黒い指抜きグローブ、腕と足に包帯を巻いてやがる。そして左目の瞳は赤、右目には眼帯、髪色は黒だが前髪の一部は赤いメッシュときた。

 なんというか、フルスロットルだな。


 始祖たる英雄の姿……は恐らく、テンプレ的な勇者の格好してんなって事だろう。意図してやったわけではないが、言われてみれば似てるかも。




「そういうお前も中二病全開の格好しやがって。で、この状況は何だ?」

「さてな……我が闇の魔力に惹かれて集まったのかもしれん……フッ、やはり俺は追われる運命からは逃げられないらしい……」



 こいつの設定について述べておくと、謎の組織に追われる漆黒の魔眼を持ちし宵闇の魔剣士……だそうだ。

 ちなみに魔眼は左目と両腕両足にあるそうな。

 ……設定を聞いた時から思ってたけど目と腕はともかく足って見栄え的にどうなんだ?




「倒せよ」

「フッ、そうしたいところだが……今宵は魔眼が疼いて仕方がない……この程度の敵、この俺にかかれば黒き花吹雪にすることなど容易い。だが……今迂闊に力を解放すれば、お前を巻き添えにするかもしれない……」




 色々言ってるけど要するに戦えないらしい。

 仕方ねぇなぁ……





「皆! まずはあの鳥の群れをどうにかするぞ!」

「そいつはいいの!?」

「ああ、こいつは大丈夫だ! 理由は後で話す!」

「どうせアレをどうにかしなきゃ小屋にも入れねぇだろ、パパッとやっちまおうぜ!」



 指示の後、俺も弓を構えて鳥の魔物を狙撃していく。



 頭が真珠のように白いハゲワシ、といった風貌の魔物は、どういうわけか黒田に狙いを定めて次々に襲いかかる。

 もはや入れ食い状態であり、矢を放てば放つだけ勝手に命中していくのだが、やたらに数が多い。



「クソッ、何でこんなに多いんだ!」

「そこの奴が何かしたんじゃねーのか!?」

「フッ、俺は無実であると言わせてもらおう!」



 とにかくひたすらに矢を放ち続け、全て撃ち落として空が静かになる頃には、矢筒は予備も含めて空になっていた。




「やれやれ……やっと終わったか……」

「一生分矢を射った気分だぜ……」

「あー……疲れた……」



 俺とタンデは放った矢を回収し、リズはへたり込んで倒木にもたれかかり、ピスも妖精態となってリズの隣に座る。





「フッ、感謝する。不屈の勇者シンヤと勇敢なる仲間達よ……」

「おめー最初にフッって言わないと喋れないのか?」


 あくまでカッコつけて礼を言う黒田に、タンデは呆れ気味に話す。



「よく分からないけど、災難だったね」

「フッ、どうにも俺はそういう運命に……むっ!?」




 リズを見た瞬間、黒田が硬直する。



 あぁ、そういえばこいつは男の娘好きだったな。



「こ……こん」

「おっと、性癖アピールは結構だがその前に教えてほしい事がある」



 リズに向かって何かしそうな黒田の肩を掴み、脱線を阻止する。 




「フッ、他ならぬお前の頼みなら仕方あるまい……それにしても、意外だな」

「意外?何がだ」

「神に祝福されし神童である相澤さんの誘いに乗るとはな。彼女を仇敵のごとく憎む上にレトロマニアのお前だ、てっきり来ないものだと思っていたが」

「……何だって?」










 意味が、分からない。










 一体、どういうことだ?








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― 新着の感想 ―
[良い点] 黒田さんの中二病はこの世界じゃもう止められないですね!wそして男の娘好きとは良い趣味してますねぇ!! [気になる点] ディバイドフィールドの分析はファフニールと一致ですか。彼ならヤさんも一…
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