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リィンカーネーションクエスト  作者: シュガーロック
クエスト6 港町動乱(集の大陸・イェルデン島編)
72/106

クエスト6-5 問題点

 




 謎の鳴き声を追い、洞窟へ入った俺達。


 先行したタンデの姿が消える。



「気をつけろよ! そっからは低い崖だ!」


 下から聞こえたタンデの方を向くと、入口直後は急な段差になっている。



 足を滑らせないよう慎重に降り、俺とズッカも洞窟内へ。

 暗闇の中、足先に何も触れない瞬間は中々の恐怖だ。





 洞窟内部は思ったより広い。



 俺達3人が横に並んで歩いても半分くらいはスペースが余っているし、松明を高く掲げてようやく天井が見えるくらいだ。




 とはいっても、人工の建造物ではないので高さは一定ではなく、端の方は天井が低い。憶測だが、分度器の端を伸ばしたような形になっているんじゃないだろうか。




 そんな洞窟の中を、先程と同じくタンデ、ズッカ、俺の順番で探索する。


 俺は松明を使っているが、ズッカとタンデは蛍光石という光る石で視界を確保している。


 蛍光石は野球ボールの半分ほどの光る石あり、蛍光塗料の光量を思いっきり増やしたような色と光り方をしている。

 光量は松明に比べると物足りないが、コンパクトで嵩張らないのは魅力的だな。今度探してみるか。




「ズッカ、タンデ、それで大丈夫なのか?」

「うん。洞窟の民の目は暗い所でも見えやすいから、このくらいあれば見えるよ」

「ま、オレ様ともなればこんなもん無くても見えるし、ニオイでも分かるんだけどな」

「頼りにしてるぜ?」

「へっ、まっかせろい」




 暗い洞窟に、足音と話し声だけが響いていく。





 ……………………





 ………………




 洞窟の中はどことなくジメジメしている。




 風穴の洞窟のような事態を避けるため、分かれ道に出る度にくまなく調査しているが、どこもかしこもすぐに行き止まりだ。念のため隠しが無いかも調べたが、特に何も無かった。


 今もちょうど、行き止まりの道の調査をしているところだ。


「なぁシンヤよぉ、お前いつまでそれやるんだ? さっさと進もうぜ」

「そう焦るな。不意打ちなんかされたらたまったものじゃない」

「何にもいねーよ! 見えねーしニオイもしねーんだから絶対いねぇだろ!」

「何もいないと高を括った時が一番危険なんだよ!」

「ま、まあまあ……」



 痺れを切らしたタンデにキレられたが、詰めの甘さで壊滅した経験のあるこっちとしてはやっておかなければ気が済まない。



「不意打ちって言うけど……例えばどんな感じなの?」

「そうだな……まず、ここにゴブリンが数多く住んでたとする」

「ゴブリンなんていなかったぞ?」

「例えばの話だ! ……で、俺達がこの先に攻め込んだとして、抜け道があったらどうしてくると思う?」

「……逃げる用か?」

「挟み撃ちとか?」

「タンデの言う逃走経路という可能性もあるが、俺が警戒するのはズッカの言った挟み撃ちだ。囲まれればゴブリン相手でも厄介だし、逃げ道も塞がれる。俺は過去にそれで死にかけた事があるくらいだ」

「マジかよ……」



 話しながら、脳裏に風穴の洞窟での出来事が思い浮かぶ。

 アレの二の舞だけは勘弁だ。



「隠し通路に罠を仕掛けて、逃げたフリしてそこに誘導する……っていう手もあるよね。ゴブリンって結構頭がいいからさ」

「時間はかかるが、こうした方が安全だ。すまんが、もう少し我慢してくれ」

「……ったく、しょーがねぇなぁ。まあ、冒険者として1番経験あるのはおめーだし、合わせてやるよ」

「ありがとう。よし、ここは何も無さそうだ」




 調査を終えて更に進むと、またしても分かれ道に遭遇する。



「左から魔物っぽいニオイがするぜ。どうすんだ?」

「右から行こう」

「へいへい」「うん」






 過去の経験からの奇襲警戒もあるが、RPG脳のせいでもありそうだな、と我ながら思うこの執拗な脇道調査。




 右もまた行き止まりだったが、どういうわけか宝箱が置いてあった。


 RPG的に考えればよくあることだが、実際こうして脈拍無く宝箱をポンと置かれるとなんか違和感を感じる。遺跡とかならまだしも人の手の入ってなさそうなこの洞窟で。


 それはそうと、何が入っているかすごく気になる。なんとなく罠っぽい。だけど開けたい。






「宝箱だ……」

「開けようぜ!」

「ちょっ、待てタン……」




 罠の可能性もある、と制止するより先にタンデが開けてしまった。



 万が一を考え急いで駆け寄るも特に何も起こらず、タンデの手には見覚えの無い短剣が握られていた。



「何か入ってたぞ!」

「どんなの?」

「短剣って事以外は分からん。ほい」


 タンデは持っていた短剣をズッカに渡す。


 横から覗いてみると、それは鍔の中央に宝石の埋められた、風属性っぽい感じの片刃の短剣だ。


 ……なんというか、RPGで前半の中頃手に入りそうな感じの、手頃な店売りの武器よりちょっとばかし強そうな、そんなポジションの武器な気がする。





 ゲームで見ると申し訳程度に興味を引くくらいだろうが、こうして肉眼で見ると何だか妙な感動がある。






「ちょっと魔力を感じるね。使い方は分からないけど、魔力を撃ち出したりできるかも。それを抜きにしても素材は鉄よりも軽くて丈夫そうだし、普通のお店で売ってる短剣よりも強いと思うよ」

「ほーん……?」





 魔力を撃ち出す……となれば、俺では使えそうにないな。




「気に入ったなら持ってていいんじゃないか? タンデ。多分、俺には使いこなせない代物だ」

「いや、いらん。ズッカにやる」

「いいの?」

「オレ様は強いからな! そんな武器無くたってへっちゃらさ!」



 まあタンデも魔力的に適性無さそうだし。



「じゃあ、僕が持っておくね」



 ズッカが短剣をしまったところで、抜け道調査を開始する。


 どこかに隠し扉というか偽装壁の類を探して壁を剣の柄で叩いてみる。

 が、帰ってくる音はなんの変哲も無い岩壁の音。



「なぁ、もっとパパッとできねぇのか?」

「魔法も無いのにそんな事出来るわけねぇだろ」

「こういう地味な作業、僕は結構好きだけどなぁ」

「あー、分かる」

「ウソだろ……」







 あちこち調べた結果、特にそれらしいものは見当たらなかった。


「結局何にもねーじゃねぇかよ!」

「無い方がいいんだよ」

「ねぇ」

「ん?」「お?」


 来た道を戻る間、考え事をしているように俯いていたズッカが顔を上げる。




「僕達で罠を仕掛けてみるのはどうだろう?」

「なるほど……」

「罠って言っても、危なくなった時の撤退を円滑にするためのものだけどね」

「っても何すんだ?」

「とりあえず分かれ道まで戻ってからね」





 分かれ道まで戻ってくると、ズッカは背負った鞄を下ろしてロープを出して長さを調節する。

 その後、洞窟の壁や地面にある、氷柱を逆さまにしたような出っ張りの中から足元辺りのものを選んで括り、それとは反対の壁際にもう片方を結びつける。



 なるほど、簡易的なワイヤートラップか。



「こんな感じでやっておけば、足を引っ掛けて転ぶんじゃないかな。僕達には分かるようにこの辺の壁に印付けておいてさ」

「おお、いいんじゃないか?」

「悪かねぇと思うけど、お前ら引っかかんなよ?」

「お前もだよタンデ」

「シンヤ、あの辺の壁に印付けておいてくれるかな? 僕じゃ届かないよ」

「分かった」


 ロープを短く切り、向かって左の少し奥の出っ張りに結びつける。



「こんな感じでいいか?」

「うん、ありがとう」

「通用しなかったらごめんね」

「無いよりはいいだろうさ。さあ、奥に進もう」

「おう!」「うん」




 改めて分かれ道の左、洞窟の奥へと進む。










 限られた光源の中、果てしない暗闇を、俺を含んだ全員が左手の壁を頼りに黙り込んで歩く。

 坂にでもなっているのか、足取りのペースが掴みにくい。





 俺達3人の会話の発端は概ねタンデなのだが、当人が黙り込んでいるせいだろう。理由に関しては言うまでもなく、依頼されていた巨大生物が近くにいるからだ。




 今気付いたが、分かれ道を通過してからは道幅が大体半分くらいになっている。反対側の壁が近い。





 誰もいない中、コツ、コツ……と、3人の足音だけが響く……と思った矢先、何かが聞こえてきた。




 言葉として表現するならチキチキチキ、といった妙な音と、ゴシャリ、ゴシャリといった感じの岩石を崩すような音。




「近いぞ」




 短く告げたタンデの言葉から推察するに、音の主は例の巨大生物だろう。

 でもそんな音を出す生物って何だ? 岩石を削ってどうする? ……あぁ、そうか、巣の拡張か。じゃあチキチキ音は何だ。









 その答えが出ないまま、右の壁と天井が唐突に消えた。

 どうやら広い場所に出たらしい。




「ここだ」




 そうタンデは告げるが、魔物らしき影は無い。


 左からはさっきから聴こえるチキチキ音と岩肌を削る音が聴こえるが、目の前にあるのは奇妙な岩壁くらいだ。




「皆……あの壁、変じゃない?」

「壁? どこだよ」

「あれだろ、目の前の」




 目の前の岩壁に近付いた時、その違和感の正体に気付いた。



 蠢いているのだ、壁が。



 驚いた俺は思わず壁の周囲を見渡し、タンデの言葉の真意を知る。



「こいつ、壁じゃない……魔物だ!」



 俺が一目見て壁だと思い込んでいたのは、荷台込みの大型のトレーラークラスの高さと全長を持つ、岩を大量にくっつけたような体表と重機のような鋭い大顎を持つ巨大な芋虫の魔物だった。





 チキチキチキといった音の正体は大顎を動かす音、岩石が削れる音はそれを砕いて食べるためであった事は、食事中である芋虫の頭部に光を当てて分かった。





「こいつが依頼にあった奴か……!」




 こちらの存在に気づいた岩の芋虫は食事をやめ、大顎を振りかざし、金属音のような鳴き声を出して威嚇する。



「一応このまま撤退しても依頼は完了だが……」

「何言ってんだよ、ぶっ飛ばすに決まってんだろ! ストリーク!」





 言うが早いか、ストリークで懐に飛び込むタンデ。


 岩のような体表の隙間を狙って放った一撃に、岩の芋虫は全くダメージを受けた様子を見せない。




「何だコイツ!? おっと!」





 大顎を振り回して反撃するが、大ぶりなその一撃をタンデは難なくかわす。





「くっそー……思ったよりかてぇぞ、あいつ」

「であれば……」

「待ってシンヤ、かの者に研ぎ澄ました力を与えよ……エンチャント・クリティカル!」



 ハンマーを取り出した俺をズッカが呼び止め、俺に魔法をかける。

言葉にするのは難しいが、身体のコンディションが異様によくなってる感覚がある。



「これは?」

「1回だけ攻撃が強くなる魔法。上手くいくか分からないから、今まで使わなかったんだけど……」

「助かるぜ! うぉらぁ!」



改めて俺はケイブワームと距離を詰める。



 前のものとは違うグリップの感触に違和感を覚えつつも、勢いを付けて芋虫に叩きつける。




 自分の身体の全ての歯車が噛み合ったかのような、会心の一撃とも言うべき一撃を当て込み、そのまま反転してもう1度打撃をお見舞いするが、それでも1回目の手応えはごく僅か、2回目は通用している様子は無い。



 だったらこれはどうだ!



「ガイアエッジ!」





 ガイアエッジを召喚し、下から奴を突き上げる。




「!?」




 攻撃が通ると確信していた俺の予想に反し、芋虫は突いた勢いで身体の一部持ち上がっただけ。


 すぐに持ち上がった身体の部分は地面に落ち、轟音と砂埃が舞うが、まるでダメージを受けた様子が無い。

 持ち上がった際に見えたが、腹部も外皮と同じように岩のような皮膚になっていた。




 アルマジロ然りダンゴムシ然り、外側が硬いもので覆われている生物は大体腹の辺りが柔らかかったりするものだが、こいつは違うのか!?




「ズッカ! 魔法だ魔法! オレが突っ込むからその後にぶちかませ!」

「タンデ、だったらこれを付けて。狙いやすくなるから」

「おう! おらあぁぁぁぁ!!」




 タンデの声で我に返り、岩の芋虫が持つ大顎の届く範囲から離脱する。



「ダブルスラッシュ!」

「えーっと……炎よ! 緋色に燃やせ! ファイア!」




 入れ替わりで蛍光石を腰に付けたタンデが再び飛び込んで斬撃を浴びせ、続け様にズッカの放った火炎弾が直撃する。






 だが、ダブルスラッシュはまるで通らず、ファイアもわずかに怯ませる程度。






 ガイアエッジもタンデの攻撃も通らない。

 もし魔法が効くとしても、この分では到底倒せない。

 勇者の剣は最終手段、無駄に使えば後で響く。




 であれば……






「シンヤ、次はどうする!?」


 タンデが戻ってきたのを確認し、作戦を告げる。



「撤退だ」

「うん」「お……な、何?」

「あいつは物理攻撃に強い。魔法攻撃手段が圧倒的に乏しい今の俺達じゃ勝ち目は無い」

「ズッカの魔法は効いてたぞ。気を引くのならオレがいくらでもやる」

「無理だよ。確かに効いてたけど、あれじゃちょっと倒せない」

「余裕があるうちに逃げた方がいい。ギリギリまで粘って失敗したら死ぬぞ」

「チッ、しゃぁねぇなぁ」

「目くらましは任せて」




 ズッカが何かを地面に投げた次の瞬間、周囲は眩い光に包まれ、それを合図に走り出す。

 まるで真昼の平原のように明るくなった刹那、岩の芋虫の後ろに何かがいたのが見えた。




「タンデは先頭を頼む! 後ろは任せろ!」

「遅れるなよ!」

「2人とも、罠の事忘れちゃ駄目だよ!」

「ああ!」「おう!」





 行きと同じ陣形になり、一目散に来た道を駆け戻る。


 芋虫は鈍足だから全力で走らなくてもいいんじゃね? と思った頃には、外の光が差し込む場所まで来ていた。



 外の光は崖の上。入る際に崖を降りたように、今度は崖を登らなくてはならない。




「なんだあいつら?」



 タンデがそう言ったのに合わせて目を凝らすと、崖の上に2つの人影。

 正確な姿形までは判別できないが、何かを被り、槍を持っているのは分かる。




「ドル?」

「ドル!」




 明確に人の形だが、言葉は話さずに特撮の戦闘員のような鳴き声じみた声で意思疎通を取っている。


 ……何だあれは?




「人?」

「いや、なんかニオイが違う」




 タンデが一歩前に出た時、そいつらはこちらに反応を示した。



「ドル!」

「ドルー!」




 咄嗟に身構えたが、連中は驚いたようにこちらを指差したかと思うと、溶けるようにして消えてしまった。





 何だったんだ? 今の奴ら……






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