code:meteor
コマンドを確認しました
モードを切り替えます
集の大陸のとある島。
チャナ村近くの森にいたムウルの上位種である、白い体毛を持ったムウル。
シルバームウルと呼ばれるそれは、白と青で彩られた改造軍服を着用した1人の少女剣士に襲いかかる。
「よい、しょっと」
少女は特に怯える様子も昂ぶる様子もなく、ただ作業のように剣を振り下ろす。
剣からは光がほとばしり、刃となってシルバームウルを真っ二つにした。
一拍置いてシルバームウルは断末魔をあげ、光の粒子となって消滅する。
「はぁ……」
少女はため息混じりに地面に座り、手のひらサイズの金属板を取り出し、それを弄る。
その表情は人間が本来持ちうる感情の一切を失ったかのような、退屈と虚無に満ちたものであった。
「ふーん、あの芸能人不祥事起こして逮捕されちゃったんだ」
彼女の持っている金属板……スマートフォンと呼ばれるそれは、この世界、テラステラからでも地球……彼女の場合は日本の情報を入手することができた。
少女は口に出しこそすれど、そのニュースに対して興味を持つこともなくスマートフォンに下から上、上から下へ指をなぞる。
「あーもう、マップは無駄に広すぎるし敵は雑魚だから作業感丸出しだし進也君いないし……あっハルちゃんだ」
「やれやれ、捕まったから出せとは……カズヨシ君は人使いが荒い。まあ、彼の情報が手に入ったのは有難いが……」
ミーティアが愚痴をこぼしている最中に現れたのは、黒い燕尾服に身を包み、顔の上半分を覆う鳥のクチバシを彷彿とさせる仮面を着けた赤髪の男。
「やあ、ミーティア君。シルバームウルはどうだったかな?」
彼は少女をミーティアと呼び、声をかける。
「ミーティアって誰……えっハルちゃん何その仮面!?」
「あのゴーグルはこっちの世界観的に浮くのだよ、ミーティア君。それから、僕の事はここではジョーカーと呼びたまえ相澤君。それにミーティアで登録したのは君自身だろう」
「あー……そうだっけ? まあいいや、ハル……じゃなかった、ジョーカーさん。で、えーと……シルバームウルっていうのさっきの?」
「ああ。そこらの冒険者では中々苦戦する魔物だが……」
「ハァ……」
ミーティアと呼ばれた少女は溜め息混じりに立ち上がり、手でスカートに付いた土を払う。
「ねー、あれも一撃だったんですけど? この仕様絶対おかしいでしょ! 虚無だよ虚無! ゲームとして虚無だよ! 行く先々のモンスター全部一撃ってこんな仕様誰が喜ぶの!? どう考えてもすぐ飽きるでしょこんなの!」
「ま、まあ落ち着きたまえ」
大きな声でまくし立てるミーティアに、ジョーカーと呼称する男は彼女を宥める。
「意外とそうでもないのさ。皆、君のようになんでも成功できるわけじゃない。せめて娯楽においては、蹂躙する喜び、勝利する喜びを味わいたいものなんだよ」
「そうなの?ゲームっていわば駆け引きとか、試合そのものを楽しむものじゃないの?」
「そういう層もいるといえばいる。だが、次第に飽きてきて、純粋な勝利だけを求めるようになっていくのさ、人はね」
「ふーん……」
ミーティアはジョーカーに背中を向け、3歩歩いて振り返る。
「じゃあさ、私だけチート切るか弱めにしておいてよ。楽勝試合はもう飽きたし、私だって苦戦してみたいしー。ボス戦の時だけでいいからさー」
「そういうわけにもいかないんだ。こいつはまだ調整中でね、固有スキルはともかく、ステータスにおいては個人個人での調整は出来ない。悪いけど我慢してくれ」
タブレット型端末を弄りながらジョーカーはそう告げた。
「えぇー……」
「だが、不完全というのは君が思うより不便で面倒だぞ。やめておきたまえ。捜索にも支障が出る」
「それはそうだけど……うーん……」
頭では納得できるが心では理解できない。
そんなジレンマを抱えたミーティアは複雑な面持ちで地面の石を蹴る。
蹴った石のぶつかった木の枝を見て、ミーティアはある事を思いついた。
「しょーがない、木の枝ハンデでもしてみようかな」
「すまないが、そうしてくれ。ところで、君が探していた彼の事だが……」
「見つかったの!?」
ジョーカーの言葉に反応し、先程の不機嫌さが嘘のように目を輝かせて振り向くミーティア。
「詳細な位置を特定したわけではないが……彼はこの大陸……いや、この諸島にいる。間違いなくね。アクシデントがあって上手く捜索できなかったが、ようやく見つけたよ」
「やったー! じゃ、早速出発しよっ!」
「そうだね。では、早速手はずを整えるとしよう」
「よろしく〜」
ジョーカーはそう言うと、一瞬で姿を消す。
「ふふふ……大和田君の連絡通り! 待っててね……私の進也君……! さーて木の枝探ししよーっと」
ミーティアは独り、上機嫌で自らの武器となる木の枝を探し始めるのであった。




