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リィンカーネーションクエスト  作者: シュガーロック
クエスト5 再起(集の大陸・シュティリ島編)
63/106

クエスト5-10 総仕上げ

 



 修行の地が変わってやる事が変わるかと言われると、別にそんな事は無い。



 魔物と戦ってレベルを上げ、改善点を洗い出す。

 ダミー相手に技を放ったり、組み手を行なったりして技の精度上げる。

 筋トレなどを行なって基礎能力の向上を図る。



 やる事は大体、この三点に帰結する。


 組み手でひたすらシゴくのではなく魔物の討伐を組み込むのは、村長曰く命を懸けた実戦だからこそ掴めるものもある、との事。

 まあ確かに危機感というか、実戦にしかない雰囲気とかもあるし、納得はいく。



 それはさておき、俺は今何をしているかというと……




「ほっ、ほっ、ほっ」

「くっ……!」



 村長とタイマンで組み手をしている。

 厳密に言えば、村長の繰り出す攻撃を避けたり、受け流したりし続けている。


 敵の攻撃をまともに盾で受ければ、当然そこにかかる力も受け止める事になる。

 攻撃にもよるが、まともに受け止めるとパワー負けして無駄に体力を消費しがちだ。

 これまでの修行でも何度かそういう事があった。

 それと、盾があるとは言ってもあくまで保険のようなものであり、受けきれない攻撃は当然ある。


 なので、攻撃の際にかかる力を逃すように受けたり、攻撃を回避したりする訓練を行っている。

 特定の項目を集中的に鍛えられるのは、実戦にはないメリットだ。





「どうした、息が切れかかっておるぞ?」



 村長の繰り出す攻撃は非常に素早い上に強烈だ。それだけでなく、防ぎにくい箇所を的確に突いてくる。しかも左手左足のみで。

 加減がヘタクソとは本世界の冒険の際の会話で聞いたが、そもそも加減してるのか? 手足に残る痛みが凄まじいんですけど。




 そんな強烈な攻撃をかわし、防ぎ、どうにかこうにか耐えてきたが、スタミナがそろそろ限界だ。全身が重い。汗もダラッダラ。




「ほれ」

「しまっ……!」




 村長の放った蹴り上げで盾が吹っ飛ばされてしまった。



「ふむ、中々持ち堪えるようになったのう」

「それは……どうも……」





 座り込み、汗を拭う。


 この特訓を開始したのはレベル5くらいの時からだが、もって10秒ほどだった初期の頃と比べれば、5、6分持ち堪えられるようになった今は成長しているといえるだろう。

 だが、これで終わりではない。









 ……………………





 ………………





 魔物の討伐においては、攻撃はタンデに任せ、俺は敵の引きつけをメインに動く。ズッカは補助と、時に交代することはあれど基本的な役割は固定化された。



 川向こうにはポイズンクローラー……初日に戦ったあの毒を持ったクローラーのような、搦め手を使ってくる魔物も少なくない。

 それでいて通常攻撃も普通に強力、搦め手を使わない魔物はもっと強力なため、中々に手強い。




 だが、俺達だって伊達に鍛えてきたわけじゃない。

 攻撃が強力といえども村長のような異様な速さがあるわけでもなければ、的確に弱点を突いてくるわけでもない。

 色々勝手が違うとはいえ、強敵は本の中の世界で何度も相手してきてもいる。



 度重なる村長との組み手でどこを狙われると危険かは把握しているし、村長の攻撃と比較すれば魔物の攻撃はスローモーションみたいなものだ。




 それでもステータスで劣っている分ジリ貧に陥ったりもしたが、これはレベルが上がると徐々にその回数は減っていった。






 ……役割といえば、もうひとつ。






「茂みの先にいるよ。フォレストミューが3匹。木が3本並んだところの茂みの先」

「あそこか……」


 双眼鏡のようなアタッチメントをゴーグルに付けたズッカが、小声で俺に話す。フォレストミューは川向こうで最初に遭遇した、エミューに似た魔物だ。



 もうひとつの役割。それは、弓を用いた狙撃による先制攻撃。

 四天王の1人にすら何の気配も感じないとまで言わしめた俺の魔力は、ここにいる魔物ではまるで察知する事は出来ないらしい。




「場所は把握した。後はいつも通りに行くぞ」

「分かった」

「りょーかい」


 ズッカとタンデはそう言って、俺から離れた場所に陣取って準備する。





 全部がそうかは分からないが、少なくともこのエリアに生息する魔物は魔力を感知する事によって獲物や敵の場所を探る傾向にある。


 無論それだけに頼っているわけではないが、ズッカかタンデが近くにいれば、俺が物音を立ててもそっちに注意が向くくらいには感知されにくい。

 流石に近距離だとバレるが、身を隠して狙撃する分には問題無い。



 息を殺し、狙いを定め、矢を放つ。






 俺の放った矢は、3体のフォレストミューのうち、真ん中の個体の頭部を貫き、絶命させた。

 残りのフォレストミューが混乱して騒ぎ立てるので、胴体を狙ってダメージを与える。ここでヘッドショットを狙うには技量が足りない。



「よし、行くぞ!」


 そこからは3人がかりで一気に畳み掛ける。

 統率の取れていない複数の魔物など、もはや物の数ではない。

 戸惑うフォレストミューに技を叩き込み、決着を付ける。


 そして今日もまた、装備が血と泥で汚れていった。






 ……………………





 ………………





 本の中の世界の冒険においては、何やらラストダンジョンめいた雰囲気の巨大な塔をひたすらに登っていた。



 異次元なのではないかと思う程の複雑で入り組んだ構造の内部を進み、魔物を蹴散らし、ボス級の魔物と対峙する。



 村の裏手の森の中での実戦と違って、魔物の強さは徐々に強くなっていく方式だが、難易度で言えばどれだけ攻撃しても反撃の手を緩めないこちらの方がきついかもしれない。






 ……………………






 ………………







 そうして俺達は特訓を重ね、戦いと鍛錬に明け暮れる日々を送っていった。

 剣を持つ右手のひらは、マメができては潰れてを繰り返して硬化している。変なにおいするし……ってそんな事はどうでもいいんだ。





 身体を鍛え、技を磨き、己の弱点を知り、人の弱点を知り、魔物の技を知り、弱点を知る……



 強くなるってのは、知る事なのかもしれない。

 昔見た異様に早いRTA動画も、そのゲームを隅々まで知り尽くしてチャートを構築しているわけだし。




 で、レベルとステータスの方だが……




 名前:シンヤ・ハギ  種族:荒野の民

 属性:無  レベル:15 職業:勇者

 体力:78  魔力:0

 筋力:59  敏捷:73

 創造:17  器用:72



 しっかり上がっている。



 とはいえ、正直フィンやトルカの3桁超えが混じったステータスと比較すればこれでもまだ足りない。


 だが、前にラーバノさんの言っていたレベル10における基準値の200をそのまま1.5倍してレベル15の基準値を300とした場合、俺の数値を全部足して…………うわっ1足りねぇ!


 得意な項目の数値……長所と言い張れる基準値も同じく1.5倍して90……何にも無ぇ。でも魔力と創造以外はそれなりな数値に纏まっているからバランス型としてはこれでいいのか。いいのか……?






 ……とにかく、どうしようもなかった前の状況に比べれば、今はかなり改善したと言える。これは間違いない。

 基準値には届いていないが、不足値が1なら大丈夫だろう。一般的な冒険者相応のの基礎能力は身に付いているはずだ。

 基準は分からないが、たった半年の修行でこの成果なら上々だと俺は思う。前のステータスの合計確か170にも届いてなかったはずだし、ほぼ2倍だ。これで上々じゃなかったら俺はもう無理だ。






 さて、そんな俺とタンデとズッカは今、ジェインツさんの本の世界の中にいる。


 修行の総仕上げとして、強力な敵と戦う……といったやつだ。




 ムウルの討伐ではないのは、元々ムウルは数が少なく、探し出すのが困難だからだそうだ。

 それに、前みたいに村が襲われでもしない限り、強い魔物を下手に突っつく必要も無い……とのこと。そりゃそうか。



 村長との組み手ではないのはおそらく、ジェインツさんとの会話にあった村長の弟と息子を半身不随に追い込んだエピソードのせいだろう。

 俺と組手している際も手加減してるのか疑わしい程強烈な攻撃を繰り出してたし。初回の攻撃で手の感覚抜けた時は正気を疑った記憶がある。








「なんか……雰囲気がすごいね」

「分かる」

「天気滅茶苦茶じゃねぇか」



 俺達がいる場所は、巨大な塔の頂上。周囲を見下ろすと、険しい山脈と荒れきった大地が雷鳴に照らされる。

 タンデの言う通り、天気は大荒れ。雷鳴が轟き、滝のように雨が打ち付ける。

 ドットの風景は前の通りだが、ずぶ濡れでもおかしくない俺達には濡れている感じは無く、いつもと変わらない。服も重くないし、髪が肌に張り付く嫌な感じも無い。



 ……こんな調子だが、これからラスボス戦が始まるかのような雰囲気はバシバシ出ている。




 そして目の前にいるのは……ドラゴン。

 4本足で地を踏みしめ、巨大な翼と尻尾、そして鋭い牙を持った、典型的な姿の黒い竜。図体も圧倒的だ。


 ドラゴンは、俺達を威圧するかのように見下ろす。






 雷鳴によって照らされる、巨大な影。

 巨体から放たれるプレッシャーに気圧されそうになりながらも、弓を構える。







「行くぞ」

「おう!」

「うん」




 身体を竦ませる恐怖を押し殺し、毒薬を塗った矢を放つ。

 効くかは分からない。分からないなら試すのみ!





 放った矢は命中こそしたが、毒を受けた様子は無い。

 ……本の中の敵は毒を受けると紫に点滅するというゲームライクな特性を持つ。

 何故そうなるかはさておき、ドラゴンはダメージを受けた証として一瞬赤く点滅しただけで、紫には点滅していない。


 とりあえず1発で効くようなザル耐性じゃないってことだけは分かった。





「ストリーク!」

「ラピッドスロー!」




 タンデは懐に飛び込み、ズッカは遠距離から攻撃を加える。

 俺も弓矢で顔付近を狙撃し、ダメージと共にヘイトを稼ぐ。




 何度も赤く点滅すれど怯むことはなく、ドラゴンは大きく息を吸い込む。

 ドラゴンの牙と牙の隙間から光が漏れ出し、やがてそれは炎に変わる。

 これは……ブレス攻撃!





「炎を吐くぞ! 離れろ!」




 2人にそう告げ、俺も脇へと逃げる。


 直後、ドラゴンは灼熱のブレスを放ち、正面を焼き払う。

 右に避けて回避したが、灼けるような熱はこちらにもヒリヒリと伝わってくる。




「今のうちに……!」



 ドラゴンの死角へと滑り込み、後足の付け根付近を狙って攻撃を仕掛ける。


 本の世界の中の魔物は部位破壊や一撃必殺は望めないが、一定量のダメージを与えれば必ず倒せる。




 ブレス攻撃が終わると、ドラゴンは翼をはためかせて飛び上がり、俺達の真上に来る。



「どこ行った!?」

「上だ!」




 ドラゴンは羽ばたきをやめて急降下し、踏み潰すようにして地面に降り立つ。

 その風圧は、俺達3人を風に舞う木の葉のごとく吹っ飛ばした。

 俺はまだ装備が重いから大丈夫だったが、2人は……!?




「うわっ!?」

「ズッカ!」



 塔から落ちそうになったズッカの手をタンデが掴む。

 よかった、最悪の事態は免れたようだ。



「タンデ、いけるか!?」

「任せろ! お前はそこのデカいのを引きつけておいてくれ!」

「分かった!」





 ドラゴンへと駆け出し、弓を引き絞って矢を放つ。

 意図的にドラゴンの攻撃の届く範囲へ飛び込み、そこから攻撃を加えていく。



「!」



 ドラゴンは頭を一瞬引き、猛烈な勢いで噛みついてくる。


 回避をすれば、今度は右前足による叩きつけ。砂塵が飛ぶ。


 飛び込むようにして交わした後、背中に何かが迫り来る音がする。

 振り向けば、迫るのは丸太のようなドラゴンの尻尾。跳んでもしゃがんでも回避ができない!




 ファルコンソードで回避を……駄目だ、これも間に合わない!


 万事休すか……!?




 苦し紛れに盾を構えた瞬間、俺の身体が宙に浮く。





 吹っ飛ばされたのかと思ったが、それにしては痛みが無い上に飛んだ方向もおかしい。

 攻撃が飛んできたのは左からだから、右へ吹っ飛ぶはず。なのに飛んだ方向は上……



 周囲を見回すと、俺を脇に抱え、ズッカを米俵のごとく担ぐ獣人化したタンデの姿が目に入った。




 タンデはそのままバックステップで射程距離外に着地し、俺とズッカを降ろす。



「助かった。ありがとうタンデ」

「ヘヘッ」



 タンデはニヤリと笑うと両手から鋭い爪を出現させて膝を折り曲げ、地面を蹴る。



「ブリッツクロー!」




 弾丸のようにドラゴンに向かい、跳弾のように縦横無尽に飛び跳ねては攻撃を加えていく。


 爪を出した事を考えると引っ掻き攻撃だろうが、動きが速くて何をやっているか見えない。




 連続でダメージを与えて赤く点滅させ、爪を地面に立ててブレーキとし、俺達の元へ戻ってきた。



「オレのとっておきでもまだ倒れねぇのかよ!」



 人間に近い姿へ戻ったタンデがキレ気味に言う。

 ドラゴンが雄叫びをあげて、なんとなく怒ったようなモーションをしている辺り、効いてない事は無さそうだが……



「攻撃が来るよ!」



 ドラゴンはまたしても大きく息を吸い込む。

 ブレス攻撃を警戒して、ドラゴンの足元まで走る。



 奴が放ったのは、ブレスではなく4発の火球。



 狙いをつけずに放たれたそれらは、地面に着弾した途端に大爆発を起こし、周囲は炎の海に包まれる。





 直撃は回避したが、爆風で身体が飛び、地面に叩きつけられる。

 継戦は可能だが、全身強打するし背中は熱いしで少々きついか。




「!」




 倒れたところに、ドラゴンが俺を踏み潰そうと足を上げる。

 転がってかわし、立ち上がって走り、ドラゴンの身体の下側を斬りつける。


 待てよ、ここはあれの出番じゃないか。




「ガイアエッジ!」




 地面に手をつき、ガイアエッジを呼び出す。



 轟音と共にガイアエッジが勢いよく現れ、ドラゴンの腹部に突き刺さる。


 飛び立って離れようとするドラゴンに追撃をかまそうとしたが、ケーブルが祟って空を切った。





 またも上空へと移動したドラゴンは、そのままさっきの爆発する火球を上空から放つ。





「あってめぇこの野郎! 上からの攻撃は卑怯だぞ! 降りてきやがれ!!」




 よし、タンデは無事だな。ズッカは……



「あ、危なかった……」



 よかった、大丈夫そうだ。



 上空から放たれる火の爆弾を、右に左にかわしていく。

 攻撃モーションは遅く着弾地点は読みやすいが、爆風の範囲が広いために大きめに動いて回避しなければならない。





 6発放ったところで飛翔時間の限界が来たのか、ゆっくりと高度が落ちてくる。



 着地ポイントへと走り、ガイアエッジの準備をする。

 着地の瞬間にガイアエッジを出現させれば、確実にダメージを与えられる。上手くいけば、ドラゴンがもう1度飛び立つまでに追撃できるかもしれない。



「タンデ! ズッカ! 一気に畳み掛けるぞ!」

「よっしゃ! ストリーク!」

「分かったよ!」



 タンデとズッカはそう言い、タンデは俊足を活かして一足先に攻撃する。



「ガイアエッジ!」





 ドラゴンの着地寸前でガイアエッジを呼び出す。


 再び地を裂いて現れたガイアエッジは、ドラゴンの腹部に突き刺さる。


 それを引き抜き、手に持って更に斬りつける。



「シンヤ、ドラゴンから離れて!」

「分かった!」




 ズッカの言葉に従ってその場を離れると、獣人化したタンデの姿と白く光る身の丈以上の巨大なブーメランを構えたズッカの姿が目に入る。



「タイタンスロー!」

「ダブルスラッシュ!」




 ズッカがハンマー投げの要領で巨大化したブーメランを投げ、タンデが大きなX字の斬撃を放つ。



 巨大化したブーメランは光の軌跡を描いてブレスを吐こうとしたドラゴンの口に突き刺さり、爆発を起こす。

 タンデの爪もまた光の軌跡を描き、怯んだドラゴンを攻撃する。




 タンデの二撃目が当たった瞬間、謎のスロー演出と共にドラゴンは倒れ、白い炎に包まれた。




「……」



 燃え盛るドラゴンを見つめて少し経った頃、地面に帰還用‎の青白い魔法陣が現れる。



 その上に乗り、帰還した。





 ……………………





 ………………





「よくやったのう。これで修行は終わりじゃ」

「よっしゃぁ!」

「やったね!」



 村長の言葉に、タンデとズッカが歓喜の声を上げる。

 俺も何故かは分からないが目頭が熱くなってきた。



「シンヤお前泣いてるのか?」

「泣いてない!」

「喜んでいるところ悪いが、これは終わりではなく始まりじゃ。わしらは基礎を教えただけに過ぎん。それを忘れるでないぞ」

「はい」

「やっぱお前泣いてるだろ」

「泣いてねぇよ!」



 今までのクソ雑魚ステータスだった自分はもういないと考えたら感慨深いものがあったけどこいつの所為で台無しだ!



 ……それはさておき、これからは散り散りになった皆を探しに行かなければならない。


 特訓の日々も、この村での生活ももう終わりだ。




 ……ちょっと、空虚さを感じるのは何故だろう。






 ……………………








 ………………




「なっ、シンヤお前ここを出て行っちまうのか!?」

「ああ、散り散りになった仲間を探しに行かなきゃならねぇしな」


 昼、村長の家。


 ズッカとタンデ、それから村長とジェインツさん。彼らに、近々この村を出る旨を伝えた。



「そうか……寂しくなるのう」

「ザッカ兄ちゃんが仕事で他の島に行ったりするから、その時に乗せてもらうように僕が頼もうか?」

「いや、俺が頼みに行くさ」

「そっか、分かったよ」

「仲間が身に付けている物を見つけたら、私の元へ来るといい。居場所を特定してみせよう」

「ありがとうございます、ジェインツさん」

「あ、レベル・リスタートはもうやらんからな」

「3度目は流石に頼みませんよ……ともかく、村長さん、ジェインツさん。お世話になりました。タンデもズッカも、今までありがとう」



 皆に頭を下げ、感謝の気持ちを伝えた。




 ……………………





 ………………





 夕方、ズッカの家。




「……本当に行っちゃうのかい?」



 近々この村を出る旨を伝えると、クレーテさんは寂しげにそう言った。




「はい。ここはすごく居心地のいい場所です……ですが、いつまでもこうしているわけにはいきません。まだ、使命の途中ですし……散り散りになった仲間達も探しに行かなければなりませんから」

「そうかい……それじゃあ、引き留めるわけにもいかないねぇ……ならせめて、これを持ってお行き」


 そう言ってクレーテさんが渡してきたのは、緑色の丸薬と飲み薬。

 飲み薬はズッカが持ってたものより若干鮮やかだ。



「これは?」

「ウチで作った回復薬さね。どんな傷もあっという間に治しちまうよ」

「何から何まで、ありがとうございます」

「この島から船で少し行ったところに、デルタポートって港町があるんだ。明日、仕事のついでに送ってやるよ」


 そう言ったのはザッカさん。どの道頼むつもりだったが、言う前に言われてしまった。何かこのパターンどこかであったような……?


 ともあれ、そうなればここで過ごすのは今日が最後か。



「ありがとうございます。お世話になりっぱなしで申し訳ありません……」

「いいんだよ、人は助け合いさ。お仲間さん、早く見つかるといいな」

「ええ」

「シンヤにーちゃーん!」

「あそんで〜!」


 ゼッカとゾッカが俺に飛び込むようにして抱きついてきた。

 倒れ込んだ俺を有無を言わさず引っ張っていく。


「分かったから服持つのはやめるんだ2人とも……」

「「はーい!」」



 夕食の時間になるまで、ゼッカとゾッカと思いっきり遊んだ。




 ……………………






 ………………



「そうか、明日にはこの村を出るのか……」

「はい。今までお世話になりました」



 夜、ラーバノさんにも報告する。




「俺にしてやれる事はもう無いが……頑張れよ、シンヤ」

「はい。今までありがとうございました」

「やる事終わったら、仲間と一緒にまた遊びに来てくれや。ガッハッハ!」

「……ええ」






 ラーバノさんと話し終えた後、縁側に出て夜風に当たる。



 蒼と翠に輝く2つの月と、輝く無数の星々。視線を下ろせば、月明かりを受けて煌めく夜の海。漂ってくる潮の香り。

 波が寄せては引く音が、ここからでも聞こえてくる。





 明日が来るのが、少し怖い。

 でも、逃げるわけにはいかない。











 失ったままでは、終われない。











 気付けば、ぐっと拳を握り締めていた。 


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