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リィンカーネーションクエスト  作者: シュガーロック
クエスト5 再起(集の大陸・シュティリ島編)
54/106

クエスト5-3 変化と予兆

 





 一面の麦畑を越え、タンデに連れられて入った森の中は、やや鬱蒼としている。

 地面にちょいちょい生えている紫色の雑草のような草が少し不気味ではあるが、日光が差し込んでいるせいかそこまで暗い雰囲気ではない。




 そんな森の中を、弓と短剣で武装したタンデと話しながら進む。


「この辺にはどんな魔物が出るんだ?」

「マッドラットとかキラーマンティスとか、マタンゴとか……あと人食い草とかもいるかな」

「結構色々いるな」

「訓練ってんならマッドラットがいいんじゃね?あれが一番弱いし。まーでもあんまり美味しくないんだよなあれ」

「食えるのか?」

「食えるぜ。ああそうだ! キッカーラビットっていう魔物は美味ぇぞ! 肉に弾力が……」



 タンデが生き生きと話しているまさにその時、中型犬レベルの大きさの土色の鼠が襲いかかる。

 これがマッドラットか!



「そらっ!」


 タンデは咄嗟にナイフを投げると、その鼠は潰れた声をあげて地面に転がる。



「シンヤ!」

「おう!」



 悶える鼠を剣で突き刺し、絶命させる。



「ふぅ……」

「気ぃ抜くなよ、マッドラットはどんどん来るぞ!」

「それを早く言えよ!」



 直後、次々とマッドラットが茂みから飛び出してくる。




「てめぇらに用はねぇんだよ! キッカーラビット出しやがれ! オラッ!」

「まとめて経験値にしてやる!」



 弾丸のように飛びかかってくるマッドラットを、俺は鉄の剣で、タンデはナイフで次々とマッドラットを斬り伏せていく。



 襲撃が止んだ頃には、周囲にはマッドラットの死体が散乱する。




「さーてと、一応貰えるものは貰っておくか」


 タンデは慣れた手つきで剥ぎ取りを行なっていく。


「おいシンヤ、何してんだよ。手伝ってくれよ」

「ああ、すまない」


 俺も剥ぎ取りを行うが、上手くいかない。


「お前へったくそだな! しょーがねーからこのタンデ様が教えてやるぜ!」


 妙に上から目線で剥ぎ取りについてレクチャーされる。

 最初の言い方こそ偉そうだったが、教え方自体は結構分かりやすく、俺でもスラリと解体できた。



「へー、お前結構物覚えいいな」

「タンデの教え方が分かりやすかったからさ」

「え、マジ……? ま、オレにかかればこんなもんよ!」


 タンデは一瞬目を丸くしたかと思うと、横を向いて胸を張る。

 こいつさては照れ隠しに威張ってるな?









 それはさておき、解体して素材を入手した俺達は、森の奥へ進んでいく。


 少し歩くと、ガサリと茂みが揺れる。



「「!!」」



 剣を抜き、タンデと背中合わせになる。



「へへっ、こういうの憧れてたんだ」

「なんとなくだが、分かるぜその気持ち」


 などと盛り上がっているものの、何も出て来る気配が無い。



「……来ねぇぞ」

「アレかもしれねぇ。鼻と口を何かで覆え」



 ダンテの言われた通り、マントで鼻と口を覆う。


 その少し後、何やらピンク色の煙が茂みから立ち込め始める。



「何だこれ……?」

「吸い込むと眠くなっちまうんだ。気をつけろ」



 タンデは持っていた布を結んでマスクのように口を覆い、目と耳を動かし、弓を構えて周囲を探る。



「そこだっ!!」


 タンデが矢を放った先には、手足と顔が付いた、俺の膝くらいの大きさのキノコの魔物がいた。

 矢は口を貫通しており、既に絶命している。


「こいつがマタンゴだ。眠らせてくるから鬱陶しいんだよな、こいつ」

「へぇ……」


 タンデはマタンゴの剥ぎ取りを行うと、また歩き出す。







「なあ」




 先を進むタンデが、こちらを向かずに声をかける。



「何だ?」

「いや……狩りに付き合ってくれて、ありがとな」



 ここ最近のこいつは毎日俺の元に来ては狩り行こうぜと誘ってきたとはいえ、今回に限っては俺が誘ったようなものだが……



「どうしたよ急に」

「オレさ、あまり歳の近い奴って村にいなかったんだ。だからさ、こうして付き合ってくれる奴がいなかったんだ」


 確かに、村を巡った時に会った人々はタンデや俺と歳の離れた人ばかりだった。


「ズッカはどうなんだ?」

「あいつ鈍臭いからここに連れてくるのは危ねぇ」

「そうか……」




 しばらく歩くと、川のある場所に出た。

 川の水面は非常に澄んでおり、川の水のせせらぐ音と相まってなんとも涼しげで、心が落ち着く。


 川に橋は掛かっておらず、飛んで渡れそうな間隔で存在する大きな石も途中までしか無い。

 向こう岸に渡るのは無理そうだ。




「川か……」

「ああ。ここで魚を取ったりも出来るぜ」

「へぇ……」


 俺達は腰を下ろして休憩していたが、タンデが急に立ち上がる。


「よしシンヤ、でっかい石を探しに行くぞ」

「石?」

「ああ、そいつを使って向こう岸に渡るんだ。今まで行ったことないし、面白ぇものがありそうじゃん?」


 そう話すタンデの目はキラキラしていた。


「危なくないか?」

「大丈夫だって! どうせそんなに強い魔物なんかいねぇよ! シンヤも一緒に行こうぜ!」

「今は駄目だ。もっと鍛えて強くなったら考えてやる」

「ちぇ。まあいいや、とにかく探すぞ」




 それからは、タンデと一緒に大きな石を探しつつ、魔物を討伐していった。



 マッドラットは必ず集団で現れるというゴブリンに似た習性があるが、行動パターンがゴブリンより単調なためあまり脅威ではない。

 マタンゴは眠らせる胞子は厄介だが、動きはさほど速くないためこちらもそこまでではない。

 キラーマンティスは従来のカマキリの4倍の体躯のカマキリの魔物で、斬れ味の鋭い鎌攻撃は厄介だが、脆いので案外なんとかなる。というかどっかで見たなこいつ。


 ちなみにキッカーラビットは逃げ足が速くて討伐できませんでした。




 ……………………





 ………………




 結構な数の魔物を狩ったがいい感じの大きさの石は見つからず、その日は森を出た。




「ドライ・ウィンド!」


 川で服を洗い、ファルコンソードを使って服を乾かす。

 ドライ・ウィンドは濡れた服を見て即興で思いついた、風力の弱いプッシュ・ウィンドのようなものだ。


「何だそれ!? すげー!! オレにもやってくれよ!」


 タンデは目を輝かせてせがんでくる。


「じゃあ服洗えよ。これは服乾かす魔法なんだから」

「お前魔法使えるのか!?」

「うーん……使えるといえば使えるが、この剣の力によるものだ。俺が使えるものじゃない」

「よくわかんねーけど、すげー!」

「何でもいいけどやるんなら早く服洗えよ……」


 テンションの上がるタンデに、俺は半ば呆れるようにしてそう言った。




 タンデの服も乾かし、店じまいの手伝いのために道具屋に行くと、既にズッカがいた。

 タンデは帰った。



「あ、シンヤ。今日は海岸にいなかったけど、どこ行ってたの?」

「タンデと一緒に森に行ってたんだ。今日から魔物相手の実戦修行ってところさ」

「へぇ……すごいなぁ。僕も魔物退治できたらかっこいいって思うけど、できそうにないなぁ」

「できないかどうかは、やってみなくちゃ分からない。しっかり鍛えれば、ズッカにもできるさ。俺だって、冒険者になりたての頃は滅茶苦茶弱かったしな」

「そうなの?」

「ああ、そうさ。最初のうちは腕立て50回すらキツかったからな。特訓して強くなれる保証はないけど、強い奴は皆何かしらの特訓はしてきていると俺は思うぜ」

「そっか……っと、そろそろ行こうか」

「ああ」












 その後はいつも通りズッカと一緒に閉店作業を手伝う。

 作業中冒険者になるかどうかを考える旨の独り言を言っていた辺り、ズッカにも冒険者に対する憧れがあるのだろうか。



 作業を終えて、家に戻り、夕食を取る。


 その後、寝る前にステータスをチェックしてみた。



 名前:シンヤ・ハギ  種族:荒野の民

 属性:無  レベル:2 職業:勇者

 体力:11 魔力:0

 筋力:6  敏捷:6

 創造:3  器用:6




 よし、能力が上がっている。

 作戦は成功だ。






 ……………………






 ………………






 その日以降、毎日タンデと共に森に出かけて魔物を狩っていった。



 タンデは毎日のように大きな石とキッカーラビットを追い求めているが、そちらに関しては特に成果の無い日々が続いている。


 一方でレベル上げの方は順調に進んでおり、およそ2週間でレベル5まで到達した。





 名前:シンヤ・ハギ  種族:荒野の民

 属性:無  レベル:5 職業:勇者

 体力:20  魔力:0

 筋力:15  敏捷:15

 創造:6   器用:18





 ……トルカとかフィンとか、かつての俺のレベル20辺りのステータスを思い起こすと、凄まじくショボく見える。

 創造の値だけは既に上回っているが、だからどうしたといった具合の数値だし。




 タンデと共に行う魔物狩りには、俺が見落としていたことを拾うことができた。


 それは足捌き。もう少し具体的に言えば、回避や距離の詰め方といった、ステップの使い方……といったところか。




 フィンは攻撃を避けるというより受け止める戦い方が主流だし、トルカは殆ど固定砲台のようなものだ。


 こういったスピードを生かした戦い方を間近で見る機会は、意外と無かった。


 見様見真似でやってみたり、コツを聞いたりして、少しでもものにできるよう努力した。









 そんなある日の朝。


 いつものように森へ行こうとすると、鍛冶屋に向かうラーバノさんに声をかけられた。




「おう、シンヤか。今日も森か?」





 田舎の方は情報の伝達速度が早いと聞くが、ここもそうらしい。

 俺もズッカもタンデも特に喋ったわけでもないのに、森で特訓をしてから2日も経たないうちに村の人々に知れ渡っていたのだ。


 ……いやタンデはやたら森に誘ってたから俺が根負けしたと思われた可能性があるのか。




「ええ。今日も特訓です」

「どれ、ちょいと剣を貸してみな」

「あ、はい」


 背中の剣を渡すと、鞘から剣を抜いて剣の状態をチェックし、俺に返す。



「よし、この分なら大丈夫だ! ま、俺が手を加えた武器がそうそう壊れたりはせんがな! ガッハッハ!」


 ラーバノさんは豪快に笑う。


「ありがとうございます。では、行ってk……」

「ちょいと待った。お前さんに言っておきたい事があるんだ」


 家を出ようとする俺を、ラーバノさんが止める。



「何でしょう?」

「お前さん、森には道を遮るように川があるのは知ってるか?」

「はい。それが、何か?」


 そう尋ねる俺に、ラーバノさんはいつになく真剣な表情になって話しだす。


「元冒険者として言わせてもらうが……あの川の向こう岸には渡るなよ。川の前までの魔物は大したことはないが、あそこから先の魔物はかなり強くなる。まあ橋も無いし、向こう岸に渡ったりはせんと思うが、一応な」

「分かりました」



 俺は頷くと、タンデと共に森へと向かう。





 ……………………







 ………………






「あの川の向こう岸には渡らない方がいいって?」

「ああ」



 ラーバノさんから受けた忠告を、タンデにも共有する。


「何でだよ」

「滅茶苦茶強い魔物が出るらしいんだ。危ないからやめとけって、ラーバノさん……ズッカの親父さんが言ってたぞ」

「ほーん、じゃあやめとくか……」



 あれ、意外と素直な反応……



「……なんて言うほど、オレは良い子ちゃんじゃないんだよ。へへっ」



 ……と思ったのも束の間、ニヤリと笑ってタンデは言った。

 まあそんな気はしてたよ、うん。



「は?」

「俺は冒険者じゃないけど、冒険ってのは危険が付きものなんだろ? 強い敵があってこそ、燃えるってもんだろ! なぁ?」

「気持ちは分からなくもないが……俺は行かねぇぞ。どうせ返り討ちだろうし」

「んだよ、ビビってんのかぁ?」


 タンデが挑発してくるが、それに乗っかるほど俺は自分の実力を知らないわけではない。

どれ、ここは1発……


「ああ、そうさ。強い魔物ってのは一瞬、一撃で俺達を殺せる。一撃で骨を砕き壊して身動きを封じられるかもしれないし、鋭い爪か何かで真っ二つにされるかもしれない。群体型の魔物なら、数の力を活かして取り囲み、追い詰め、袋叩きにされるだろう」

「えっ……」

「そういう魔物は、総じて防御も手堅い。分厚い外皮はナイフどころかこの剣でさえもかすり傷すら付かない。矢も弾くだろうな。タンデ、お前はそんな魔物相手に、どうやって戦う?」

「いや、その……えっと……」



 そう問いかけると、タンデはしどろもどろになった。


 これまで出会った魔物で起こった、あるいは起こりうる惨劇を列挙してみたが、どうやら効いたらしい。それ以降、タンデからは向こう岸に渡る提案はされなかった。






 その日以降もタンデと共に毎日朝から夕方まで魔物をひたすら討伐していき、レベルを上げていった。

 キッカーラビット何度か遭遇したものの、逃げられてばかりで成果は無い。



 レベル上げに関しては、今まではタンデが削り、俺がトドメを刺す形でやってきていたが、次第にそれぞれ各個撃破、いざというときはフォローという形になっている。


 ぶっちゃけタンデの方が強く、結構な頻度で俺がフォローされている。

 タンデは冒険者じゃないからギルドカードを持っていないが、俺の見立てでは既にレベル12〜14相当の一般的な冒険者くらいの実力があると思われる。








 倒した際にはタンデと共に剥ぎ取りを行なっていく。

 タンデに色々言われたり、言い返したりしながら数をこなしていくうちにグロ耐性が付き、ナイフ捌きも上手くなっていった……と思う。







 朝から夕方まで魔物を相手しているので昼に休憩も挟んだりするのだが、その際は決まって川の側にやって来ていた。


 魚を釣って昼食にしたり、川のせせらぎに耳を傾けながら討伐した魔物の肉を食ったりしていた。


 ちなみにマッドラットは味はそこそこだが骨が細かく絡んでいるせいで食いにくく、マタンゴは食感が硬めで気持ち悪い感じのする甘味があり、はっきり言って微妙な感じだ。キラーマンティスが海老みたいで意外にも一番美味かった。







 タンデと軽口を叩き合いながら狩りをしていて、楽しくなってきている自分がいることに気付く。


 トルカ達との旅が楽しくないといえば嘘になるが、適当な事を言い合える関係というのは非常に気楽だ。

 こればっかりは異性相手だと簡単にはいかない。




 ……それでもやっぱり、トルカとフィン、それからピスともう一度、旅がしたい。

 今度は皆に並び立てる実力を携えて。





 ……………………







 ………………







 そんなこんなでさらに2週間魔物を狩り続け、レベルは10になった。




 名前:シンヤ・ハギ  種族:荒野の民

 属性:無  レベル:10 職業:勇者

 体力:36  魔力:0

 筋力:31  敏捷:31

 創造:11  器用:49




 結構まともな数値になってき……あれ?



 今までは器用が4、創造が1、魔力は0、残りは3ずつ上昇してきた。

 レベル9の時は確か……



 体力:32  魔力:0

 筋力:28  敏捷:28

 創造:10  器用:44


 こうだった。

 創造と魔力以外の数値の上昇値が、たった1とはいえ増加している……?


 いや、よく考えればレベルアップによる上昇値の増減は過去にもあったか。待てよ、でもほぼ全部増えたことってあったっけ……?



「おーい、何してんだ。さっさと行こうぜ」

「あ、悪い」



 俺は今日も森へと赴き、魔物を討伐していく。

 レベルは15くらいまでは上げておきたい。そこまでいけば元のステータスに追いつける。




 それはさておき、俺とタンデは森の中を進んでいく。



「……なあ、タンデ」

「何だよ」

「今日の森、なんか変じゃないか?」



 言葉にするのは難しいが、今日の森はいつもと違う。


 生き物の鳴き声が今日はあまり聞こえないし、魔物ともあまり遭遇していない。

 風景自体は今までと変わらないが、何やら不気味な雰囲気を感じる。


「お前もそう思うか。さっきから全然動物の足音がやけに慌ただしいし、どっかで変な音が聞こえるし、魔物も出てこねぇし……なんつーか気色悪いんだよな」


 タンデも同じことを考えていたらしい。


「変な音ってのは、どこからだ?」

「分かんねぇ。とりあえず、川の方へ行ってみようぜ」

「ああ」





 俺とタンデは、嫌な雰囲気を纏う森の中を走り抜ける。





 ……………………





 ………………



 程なくして、いつも休憩地点として使っている川のほとりへと辿り着く。




「これは……!」




 川底には見たことのない、どことなく猿っぽい巨大な足跡が川を横断するように残っており、撤去してなかった石の足場は一部が砕き壊されている。



「なあ、シンヤ……これってまさか……」

「魔物の足跡だろうな。それも……かなり大きい図体を持った魔物の、な」




 直後、獣の唸り声のような鳴き声と地響き、そして鳥が一斉に飛び立つ音が聞こえた。



「この方向……村に戻るぞ、シンヤ!」

「分かった!」





 俺達は急いで来た道を戻り、村へと走っていった。



 その胸に一抹の不安を抱きながら。





タンデ・エコノ:猫の力を持つ草原の民で、村長の孫。良くも悪くも単純でガサツ。直情的でもある。

ノコロという妹がいる。

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