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最凶の天使  作者: 河野 る宇
◆駐車場にて
11/14

*そこからの誰ですか

「待て!」

 男たちは車の影に隠れながらもダグラスたちに発砲を試みる。

「きゃあ!」

 車体に弾かれる金属音に幸子は頭を抱えた。いつ弾丸が車を突き抜けて自分に当たるのかと震えが止まらない。

「大丈夫、これ防弾だから」

「え?」

 目を丸くしている幸子を意に介さずダグラスはエンジンをかけて車を発進させた。

「な、仲間がいたの?」

 追ってこないかと後ろをちらちらと見ながらダグラスに問いかける。この車には後部座席もついていて、背後の壁には小さなガラス窓があった。

「ホントにいたんだねぇ」

「は!?」

「隙を作ろうかとカマをかけたらホントにいたよ」

 ケタケタと笑うダグラスに幸子は唖然とした。まさに開いた口がふさがらない、二の句が継げない。

 落ち着いた処でシートベルトを絞めるダグラスに幸子も慌ててそれに倣った。

「あの、車盗んじゃったけど」

「借りたの」

 言い直すように発したが、盗んだ事の言い訳にしか幸子には聞こえない。

「そもそもこれに乗るように促したのはベリルなんだから」

「え!?」

「これはベリルの車なの」

 言われて幸子は納得した。

「ベリルの車はどれも特別仕様だからね」

 車内に視線を送り懐かしむような表情に、幸子も無意識に笑みを浮かべていた。

「いいなぁ」

「何が?」

 つぶやいた言葉にダグラスは小首をかしげた。

「そんな風に慕える人がいるって素敵だなって」

「そりゃ憧れの存在だったし、親代わりだったし──」

 ベリルは俺に父さんを見たんだと思う。小さくつむがれた声に幸子はダグラスを見つめた。

「え?」

「父さんはね、ベリルの盟友だったんだ」

 だから俺を引き取ってくれたんだと思う。

「俺は父さんによく似てるらしいから」

「へえ」

 なんかそれって凄い運命的なものを感じる。幸子が感心していると、背後からバイクのエンジン音が聞こえた。

 大型だろうか、気がつけば暗めの緑に塗られたバイクが車と平行するように走っている。運転席側を走っているバイクはダグラスが見ている事を確認すると軽く手を挙げた。

「はいはい」

 青年は返事するようにつぶやくとステレオをいじり始めた。幸子は車を持っている訳ではないが友達の車にはよく乗せてもらうので多少はカーステレオについて知っているつもりだ。

 しかし、ダグラスのいじっているステレオには知らないボタンがいくつもあった。何かをはめ込むくぼみまで付いている。

ふもとに警察車両と救急車両を呼んでいる>

「あ、サンキュ」

「えっ!?」

 車内に響く男の声に幸子はキョロキョロと見回した。どうやらスピーカーからの声のようだが、声の主は一体、誰なのだろうか。

「そこのバイクだよ」

 挙動不審な幸子に見かねて説明する。

「あの人?」

 フルフェイスで顔は解らないが、男だという事は体型から理解出来る。ライダースーツを着る暇がなかったのか、着てはいけない意味でもあるのか、ソフトデニムのジーンズに前開きの長袖シャツといった格好をしていた。

 詳しい服の色合いは夜ということもあって解らない。

<手前で待ち伏せしている、先に行く>

「よろしく~」

 速度を上げて遠ざかるバイクにひらひらと手を振り車の速度を緩めた。

「なに?」

 さらに説明を求めるようにダグラスを見やる。

「奴らが待ち伏せしてるから先に行って倒してくれるってさ」

 ラッキーと鼻歌交じりにつぶやく。

「あなたの仲間?」

 その問いかけに、ダグラスは無言で眉間のしわをこれでもかと深くした。

「え、なに?」

 あたし何か変なこと言ったかしらと一瞬、不安になる。

「今までの話で普通はすぐ誰かを考えないかな」

「えっ!? そうなの!? だって──」

 スピーカーから聞こえてきた声は凄く若い気がしたんですもの。あれがダグの師匠なんだ……。幸子は見えなくなった影を追うように眼前に視線を送った。

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