529ーディさんの観察
テオたちは何かな? と精霊眼で見てみると……ああ、やっぱみんな風なんだ。これは遺伝だね。
ならリアが火属性魔法なのは、父親の遺伝なのかな?
「ディさん! 僕もできますか!? 炎の剣!」
「あー、テオは僕と同じ風属性かな」
「なんだよー、リアに負けたくないんだけど!」
風属性だから負けってことはないだろう? 僕だって風属性なんだから。
「ディさん、私も風属性魔法だと思うんです」
「うん、ロッテもそうだね。おや? ジルだけ氷属性なのかな?」
「はい。私は氷属性が得意です」
こうかな? と言いながらジルが剣をスッと撫でた。すると霧のようなものを纏いながら、剣身が氷のように変わった。
ジルはどうして今までできなかったのか分からないな。こんなにあっさりと、できるようになるなんて。
「あ、できました!」
「なんでだ!? なんでジルはできるんだよ!」
「ふふふ、テオ様。才能でしょうか?」
「なんだって!」
アハハハ、二人は仲が良いんだな。従者と一緒にいるというよりも、親友みたいな空気感だ。
「ジル、上手だよ。それをそのまま飛ばしてみて」
「はい、ディさん」
ジルが大きく振りかぶって、剣を振った。すると微細な氷の粒を撒きながら、氷の刃が空高く飛んだ。うん、上手だ。
「よしッ! ジルは上手だぞぉッ!」
だからブルクハルト様の教え方にも問題があるんだよ。あんなの普通は分かんないよ。『ふんッ!』とやって『シュッ』て何だよ。
「くっそ! 僕も!」
「私だって!」
最初は実際に剣身を撫でる方が、やり易いと思うんだ。その方が意識し易いんだ。
「はいはい、むやみにしてもできないよ。まずはしっかりと魔力をまとめて」
テオとロッテが集中している。精霊眼で見てみよう。三人とも上手に魔力をまとめているけど。
そうか、ジルは器用なんだ。ジルだけテオとロッテより早く身体の中心に魔力が集まっている。そこから流れるように手まで持っていく。
魔力量は、テオやロッテの方が多いのにジルは使い方が上手なんだね。氷属性というのも珍しいし。
「ジルは上手だね」
「本当ですか? ありがとうございます」
「僕だって!」
テオは意識が逸れると、もう魔力が分散しているじゃないか。こういうところって、エルも似ている。これも遺伝か? なんてね。
「ほら、テオは集中して。身体の中心にまとめられたら、そのまま手に持っていくんだよ」
「はい!」
ロッテがもう剣を撫でている。そっと慎重に撫でる目が真剣そのものだ。
この子も集中力が高い。そばでテオが騒いでいるのに、気にせず集中を続けている。そして剣身を撫でると、薄っすらとエメラルドグリーンに輝き出した。途端に、パアーッと表情が輝き出して僕を見る。
「うん、ロッテ。その調子だよ。でもまだ魔力が薄いね。色の濃さが僕と全然違うだろう?」
そう言って、また剣に魔力を流して見せる。
「あーん、全然違いますぅ~!」
でもそこまでできたら、もうすぐにできるようになる。
「ロッテ! おしいぞぉッ!」
「はい! お祖父様、頑張りまっす!」
みんな素直な良い子たちだ。嬉しくなっちゃうよ。
「ディ、この家の子たちも良いでしょう?」
「うん、クリスティー先生。みんな良い子たちだ」
「そうでしょう。だからつい世話を焼いてしまうのでっす」
世話を焼くだなんて、クリスティー先生はいつもは辺境伯家にいるから、そうそう来られないだろうに。
「私は代々こちらの魔法の先生もしているのでっす」
ふふふん、って自慢そうにしている。クリスティー先生ったら転移で来ているのだろう。
僕ももし四兄弟がこっちに住むことになったら、しょっちゅう来てしまいそうだ。
今でもロロたちがいなくて、とっても寂しいから。ドルフ爺だってそう思っている。
でも四兄弟が選んだことを応援するって言ってるから、予想はしているのだろう。
あの国から四兄弟がいなくなるのは、もしかして損失なのかな? あの子たちはどこまで影響力があるのか、まだまだこれからだ。僕はずっと見ていたいな。
「もう後は何度か練習すれば、皆できるでしょう」
「そうだね。僕はロロを見てこようかな」
「ディはロロがお気に入りですね」
「ロロだけじゃないよ。四兄弟みんなだ」
「その気持ちはよく分かりまっす」
だよね。才能豊かで素直な子たちだから。しかも健気だ。ルルンデで自分たちだけで生活していたんだよ。マリーがいるけど、大人に頼らずよく兄弟だけでやってきたと思う。
だから、可愛くて仕方ない。ロロは特に懐いてくれているから、余計に可愛い。これから少年になって青年になる。どんな大人に成長するのか楽しみだ。その間くらいは、ロロたちのそばにいようと思う。
そんなことを考えながら、ロロとレオがいる部屋に向かう。部屋の外までロロの声が聞こえてきた。
「あー! またわれたのら!」
おやおや、ロロはまた魔石を割ってしまったらしい。
「だから、ロロ。少しずつだよ」
「らって、れおにい。ちゅい、ガッてしてしまうのら」
魔力操作はできるはずなのに、ロロったらどうしてかな?
「ロロ、割れちゃうの?」
「でぃしゃん、しょうなのら」
ディさんが教えてあげよう。




