509ーロック鳥は賢い
魔族のことがあって、お邸全体の空気が少しピリピリしていたのに一気に和やかになった。二人は全然慌てていない。俺たちの前だからそうなのか? それとも魔族はエルフさんにとっては楽勝なのか?
でもこの時の俺は、二人がやってきた理由はどこかに飛んでいっちゃってた。
ただディさんに会えて嬉しくて、ロック鳥の卵が孵るのが楽しみなのを伝えたくて。
「あしょこら!」
ちゃんと小屋の中に小枝を並べてその上に藁を敷いた。そこにロック鳥の卵を乗せてある。毎日何度もレオ兄と俺とで魔力を流している。
「へえ~、これがロック鳥の卵なんだ」
「初めて見ましたね」
「ボクとれおにいが、まりょくをながしてるのら」
「そうなの? コッコちゃんと一緒だね」
「しょうなのら」
「わふ」
ピカさんも、もうすぐ孵るよと言っている。
「もしかして、もうすぐなの?」
「みたいなのら」
でもピカさんにしかそれは分からない。レオ兄の鑑定眼ではそこまで分からないのだって。
「へえ~」
そう言いながら、ディさんの目がゴールドに光った。精霊眼で見ているんだ。
「うわ、本当にロック鳥の卵だ。もうすぐ孵るんじゃない?」
「おや、そうですか?」
「うん、今日明日にでもって感じだ」
「え、しょうなの?」
「うん、そうみたいだよ。ロロが魔力を流したんだから、やんちゃなロック鳥の雛だったらどうするー!?」
そんなことを言いながら、俺をくすぐってくる。
「キャハハハ! でぃしゃん、くしゅぐったいのら!」
「ロロ、会いたかったよ!」
「ボクもなのら!」
ふふふ、思わずディさんの首にギュッと抱きついてしまった。だってとっても久しぶりなのだもの。
「ディ、少し落ち着きなさい」
「アハハハ。だって先輩――」
「クリスティー先生でっす」
「はいはい、クリスティー先生。こんなに長く会わなかったのは初めてなんだよ」
「しょうなのら」
騒ぎを聞きつけて、同じ裏にいたニコ兄とお祖母様がやって来た。
「あー! やっぱそうだ! ディさんの声だと思ったんだ!」
「ニコー! 元気そうだね!」
「おう! 元気だぞ!」
「まあ! クリスティー先生!」
「こんにちは~! 突然お邪魔しまっす」
ふふふ、クリスティー先生がお顔の横で手を振っている。
とっても賑やかになってしまった。ちょっとお祖母様も慌てている。
「まあ、大変! みんなに知らせなきゃ!」
なんて言っている。でもそこはユーリアが、知らせに行ってくれていたらしい。俺はそれも気付かなかった。お祖父様がお邸から走って来た。
「うおー! クリスティー先生! ディさん! よくぞ来てくださったぁッ!」
「アハハハ! なんだか大騒ぎになっちゃったね~!」
「ふふふふ」
ディさんと二人で、ね~ってお顔を見合わせる。ずっと俺はディさんに抱っこされたままだ。ふふふ、それが嬉しいのだ。
「やだ! ディさんじゃない!」
「アハハハ! 本当にディさんとクリスティー先生だ!」
なんでレオ兄はそこで笑うのかな? それにリア姉、『やだ!』てなんだ? 嫌じゃない、大歓迎じゃないか。
エルフさん二人が来ただけで、こんなに空気が変わるんだ。みんなめっちゃ安心している。だって自分たちよりずっと強いエルフさんだから。
みんなが集まってきてやっと思い出した。魔族のことを相談するのだって。俺たちが知らない情報を持っている。ディさんは実際に魔族と戦っているんだ、約300年前に。
「わざわざ来ていただいて、申し訳ない!」
「ブルクハルト様、この領地だけのことではありませんから」
「ここでなんとしても止めたいのです!」
「はい、分かっておりまっす」
お祖父様まで少しテンションが高くなっている。
「それよりこの卵、もうそろそろ孵るよ」
「あら、そうなのですか? もうすぐだとは聞いてましたが」
「楽しみだね~、ロロ」
「しょうなのら、たのしみなのら」
そうそう、どこのロック鳥の卵なのか分からないんだけどね。親を探してあげたいんだけど。
「ねえ、でぃしゃん。おやのろっくちょうをね」
「ああ、それは心配ないよ。ロック鳥は分かるんだ」
「え?」
ディさんが言うには、ロック鳥は魔鳥の中でも人の言葉を理解して話せるくらいに賢い魔鳥さんだ。それに魔力も多い。そのロック鳥の雛が孵ると親のロック鳥には魔力で分かるらしい。
「だから親ロック鳥が迎えにくると思うよ」
「ひょー! しょうなのら!?」
「何ぃッ!? ではここにロック鳥がやって来るのですかッ!?」
「アハハハ、そうだね。そうなるね」
お祖父様がフリーズしているぞ。いやいや、ロック鳥と戦うわけじゃないのだから。あ、でも俺たちが盗んだって思われちゃったらどうしよう?
「ロック鳥はとっても賢いからね。ロロとレオが魔力を与えてたってことも分かると思うよ」
「そうなのですか? それは凄いな」
「れおにい、あのろっくちょうらったらいいね」
「ふふふ、そうだね」
お墓参りの時にお友達になったロック鳥、元気にしてるかな?
「なんですか? ロック鳥に知り合いがいるのですか?」
「そうなんだよ、この子たちは凄いんだ」
ディさんが自分のことを自慢するみたいに、俺たちがロック鳥とお友達になったことを話した。クリスティー先生ったら、綺麗な眼を大きくしてびっくりしていた。




