507ー最悪を考えて
伯父様に言われたことで、ニコ兄が俺を見た。
「あー、ロロ。しまったな」
「にこにい、けろあれは、しかたないのら」
「そうだよな」
「しょうしょう」
「だって俺たちにできることを、しているだけだぞ」
「それが危険だと言っているんだ」
俺たち兄弟は、今ルルンデに戻ることは考えてない。卵が孵るのも見たい。でもマリーたちはどうなのだろう? やっぱ怖いよね? そう思って、マリーたちを見る。
マリーとウォルターさんはもうお年だし、ユーリアとエルザは普通の女の子だからどうなのだろうって。
「ロロ坊ちゃま、私たちのことは考えなくて大丈夫ですよ」
「そうです」
「ええ、気にしなくていいです」
「私も同じ気持ちですね」
四人が同じことを言った。考えなくていいってマリーたちは言うけど、そんなわけにはいかない。だって命に関わることなのだから。魔族なんて、どれだけ強いか分からない。
「マリーたちは帰る方がいいわ」
「そんな、リア嬢ちゃま!」
「私たちだけ帰るなんて!」
「そうですよ、リア様」
四人はそう言うけど、リア姉の気持ちはよく分かる。俺たちが残りたいと思っていることに、四人が付き合う必要なんてない。
戦う術がないのに、危険だ思う。安全なところにいて欲しいって気持ちもある。
みんな危険っていうけど、どれくらいのものなのか俺には判断がつかない。
「れおにい、まじょく」
「ああ、魔族かな?」
「しょう、ちゅよい? かあしゃまととうしゃまが、たたかったのも、まじょく」
「そうかも知れないってディさんが言ってたね」
「ふむ、それをロロも知っているのだな」
「はい、お祖父様。ちゃんとニコもロロも理解してます」
「なら、余計にだ。お前たちはルルンデに帰りなさい。クロエとアルが犠牲になっているかも知れないんだ。その時にマリーの息子さん夫婦もだろう。その上、お前たちまで犠牲にするわけにはいかない」
「お祖父様! 敵ですよ! お父様とお母様の仇です!」
リア姉が立ち上がり、大きな声で言った。俺にはその意識がなかった。そうか、仇になるのか。その時に初めてそう認識した。
リア姉やレオ兄、もしかしたらニコ兄もそう思っていたのかな? 俺だけなにも覚えてないから……温度差を感じて、なんだか寂しいと思ってしまった。
「リア、君は落ち着きなさい」
伯父様に叱られてる。リア姉はちょっと熱くなっちゃうから。でも、リア姉が言ったとおり俺たちの両親の仇なんだ。
「ぴかは、やくにたたない?」
「わふ?」
ロロが戦うなら守るよ。と言ってくれる。ピカは余裕に見えるのだけど?
「ぴかは、やっちゅけられる?」
「わふ」
さあ? 魔族と戦ったことがないから分からないと言った。ピカも戦ったことがないのか。でもピカは強いぞ。回復に特化したチロだっている。
「お祖父様、でも辺境伯家のご先祖様の令嬢が魔族を討伐したって聞きました! なら、私だって!」
「リア、それは……詳しいことを聞いたのか?」
「いえ、詳しくは聞いてませんけど……でも私たちだって一緒に戦います!」
「姉上、ちょっと落ち着こう」
「だって、レオ!」
リア姉が言いたいことも分かるのだけど。
「少しよろしいでしょうか?」
こんな時はいつもにこやかに話を聞いているウォルターさんだ。
「ウォルター、あなたたちも一緒に帰りなさい」
「大奥様、私は思うのですが……」
そう言ってウォルターさんが話し出した。
もしも本当に魔族が攻撃をしてきたとする。ならきっと魔鳥のように魔物を動かしているだろう。そして、お祖父様が言うように、魔族の強さは未知だと。そして言葉を続けた。
「皆様がお強いのは存じておりますが、もしかしたら別次元なのかも知れません。それを危惧されているから、坊ちゃまたちに帰れとおっしゃっている」
ウォルターの言うとおりだ。絵本では四英雄が四人ががりでやっつけた魔族なのに、今四英雄はいない。
お祖父様たちだって、今まで遭遇したことがないんだ。ならやっぱここはディさんを呼ぼう! どう考えても、それしかないのだ!
「でぃしゃんを、よぶのら!」
「ロロ坊ちゃま、それはその方が良いと私も思います。ですが……」
ウォルターさんが、とっても深刻なことを言った。
もしもこの地に魔族が魔物を従えて攻めてきたとする。そしてもしも、撃退できなかったとする。ならその後はどうなるのだろうと。
「この領地を攻めて、それで終わりだとは思えないのです」
「ウォルター、そうならないように私たちがだな!」
「ええ、分かっております。最悪を考えてのことです」
ウォルターはそう言って続ける。最悪、やられてしまったら……そんなこと考えたくもないのだけど。それでもウォルターが言うのは、それで魔族は止まらないのではないかということだ。
「どっちにしろ、次は辺境伯領、そしてルルンデと攻め続けるのではないでしょうか? ならどこにいても、同じということになりませんか?」
本当に最悪のパターンだ。この領地を侵略して、その次にお隣の辺境伯領、そして同じようにダンジョンのあるルルンデの街にも侵攻して来るだろう。
もしかしたら、魔鳥に襲わせたのも俺たちの力量を量っていたりして?
たまたま魔鳥の巣を焼きに行った時に気付いただけで、今までだってどこかで見ていたのかも知れない。
ウォルターはとっても冷静にそう言った。




