506ーそんなのって
でも、ピカやレオ兄がいると役に立つのじゃないか?
「僕たちがいても、足手まといになるだけだ」
「けど! レオ兄はそれでいいのか!?」
ニコ兄の気持ちも分かる。俺だってそう思う。だけど、レオ兄が言っていることも分かる。
どうしよう? 俺は頭の中がグルグルして考えがまとまらなくて、自分の短い前髪をクシュッと掴んだ。
「えっちょぉ……えっちょ、れおにい。もうちょっとらけ、かんがえたいのら」
「ロロ、そうだね。僕もそう思うよ」
「それでいいのかよ!?」
「ニコ、冷静になるんだ。僕たちは何もできないだろう?」
「けど! けど俺たちだって魔鳥をやっつけたぞ!」
「魔鳥なんて比べ物にならないんだ。魔族はそんなもんじゃない」
魔族なんて想像もできない。どれだけ強いのかなんてそれこそ分からない。お祖父様たちだって、見たらとにかく逃げろと言っているくらいなのだし。
でも現実味がないことは確かだった。それよりも、目の前にあるロック鳥の卵の方が俺を惹きつけた。いつ孵るのかとワクワクする。
「れおにい、たまごがかえるのを、みたいのら」
「ロロはそこかぁ」
「ろろはまら、かえらないよな?」
エルが泣きそうな顔をして、俺の手を握ってきた。小さなプクプクとしたエルの手が、キュッと俺の手を握る。
エルだって理解している。魔族なんて絵本の世界でしか知らないものが、攻めてくるかも知れない。それだけでも不安なのに、急に俺たちが帰っちゃうなんて心細いに違いない。
「うん。しゅぐには、かえらないのら」
ね、レオ兄と顔を見る。ニッコリしているから、レオ兄もそう思っているのだろう。
やっぱもう少し考えたい。ルルンデに帰らないという選択肢はない。でも魔族の存在が発覚したこの時点で、すぐ帰るなんてことは考えられない。
だって心配じゃないか。お祖父様たちが大丈夫だと分かるまで。と、俺は思うのだけど。
「ロロは心配なんだろう?」
「しょれは、にこにいらってしょうなのら」
「おう、当たり前だぞ!」
何もできないかも知れないけど、ピカとチロが役に立つかも知れない。それに、クリスティー先生に相談するのだろう? なら、何か打開策があるかも知れない。
クリスティー先生の意見を聞いてからでも遅くないと思う。ルルンデに帰る時もディさんが迎えに来てくれるから、その時にディさんに相談してからでも遅くないと思った。
目の前にあるロック鳥の卵に気を取られて、俺は真剣に考えられなかったのかも知れない。いや、考えたって魔族なんてものが未知なのだから分からない。
ただ、俺だけじゃなくレオ兄やニコ兄も思っていることは、危険だからといって自分たちだけが逃げ帰るなんて有り得ないということだ。
「わふん」
ピカは分かっているのか、どうなのか? 卵が孵るのはそんなに時間はかからないよと言った。
あれれ? じゃあそれって、卵が孵るまでって時間稼ぎにならないよね? 違った。そうじゃなくて、もっとちゃんと兄弟で話し合って決めないといけないことだ。
「れおにい、りあねえもいっしょに、はなしゅのら。まりーや、うぉるたーしゃんも」
「ロロ、そうだね。僕たちだけで決められることじゃないね」
「そっか、そうだな。リア姉だったら帰らない! て言いそうだけどな」
確かに、ニコ兄の言うとおりだ。マリーやウォルターさんはなんというだろう?
「ろろ?」
おっと、こんな話をしているからエルが心配している。そうだよね、エルの気持ちだって大切にしなきゃ。だって親友だから。俺はエルの手をギュッと握り返した。
「える、しんゆうなのら!」
「え、きゅうに、なんら?」
「しんゆうら!」
「お、おー。しんゆうらけろな!」
だから、親友を危険だと分かっているのに、残して帰るなんてできないってことだ。そんなの心配すぎる。
でも本当に、ちゃんとみんなで話し合わないといけないことだと思った。
それからいつもみんなで集まるお部屋で、マリー、ユーリア、エルザ、ウォルターさんも交えて相談した。お祖父様とお祖母様、伯父様も一緒だ。
「みんなの気持ちは嬉しいけど、危険なのは分かるわよね? みんなはまだ子供なんだから、安全な場所にいる方が良いわ」
お祖母様が本当に心配そうな表情で言った。でもそれは理由にならない。
「らって、えるもいるのら」
「ロロ、そうだね。お祖母様、エルだってロロと同い年ですよ」
「エルはだって……」
ほら、言葉に詰まるだろう? だってそれって、俺たちとエルとは違うと思っていることだもの。
それはある意味、悲しいことだと分かってほしい。俺たちはもうお祖母様たちとは家族だと思っているから。エルだって家族だ。親友だけど。
「お祖父様も同じように思っているのですか?」
「リア、お前たちは何を仕出かすか分からないだろう?」
え……お祖父様はそういう意味で、帰って欲しいって思ってたのか? それは心外だな。
「特にロロだぞ」
「そうですね、またエルやニコと一緒に討伐に参加するでしょうね」
おっと、伯父様までそんなことを言う。だってみんなが戦っているのに、俺だってできることをしようって思うのだもの。前には出ないからそこは許して欲しい。




