491-20226お正月SS 豪華なのら
本編とは全く関係ありません。
急遽思いついて書いたので、細かいところはご容赦いただけると有り難いです!(^◇^;)
「おう、来たか!」
「おめでとうなのら」
「アハハハ、なんだそれ」
今日はこの世界の新年なんだって。だからみんなで『うまいルルンデ』に来ている。新年からエルザはお仕事だ。
オスカーさんがにこやかに迎えてくれて、エルザが席に案内してくれる。
「来ると言ってたから、席を取ってあるんですよ」
「あらあら、ご迷惑じゃないかしら?」
「おばあちゃん、大丈夫よ」
朝ご飯はこの世界の新年のメニューらしいのを食べた。真っ赤な人参とマンドラゴラを入れたコンソメの野菜スープに、角兎のソテーを入れたものがとっても美味しかった。前世だとお澄ましのお雑煮ってとこかな?
それにいつものように、コッコちゃんの卵のオムレツだ。いつもと違うのは、お隣の領地レーヴェント領の美味しい塩で作られたソーセージが登場する。
年末にマリーと一緒にお買い物に行ったのだけど、ソーセージというよりも腸詰めと言った方が合う感じのものが、お店の天井からぶら下がっていた。
それをみんな買っていく。少し茹でてから焼くと、食べる時にパリッとしていてとっても美味しいのだって。
みんな新年に食べようと、買い求める。これって、とっても良い産業になっている。
あのお邸に住んでたころも、食べたのかな?
「まりー、とうしゃまと、かあしゃまもたべた?」
「はいはい、ルルンデでは新年しか入ってこないですけど、お邸にいる頃は時々食べておられましたよ」
そうなんだ。じゃあ、新年のためにいっぱい作って流通させているのだろうね。作る人は大変だ。
「ルルンデと王都には入ってきますよ」
「へえ~」
「わふ」
「ふふふ、しょうらね」
ピカが、街中に良い匂いがしてると言って、お鼻をヒクヒクさせている。もう食べたいのだよね、俺もそうだ。お腹が空いてくる。
「お野菜はドルフ爺さんにもらって、角兎はリア嬢ちゃまとレオ坊ちゃまが狩ってきてくださいますから」
ほうほう、なら今日はソーセージだけかな?
「年末ですから教会に行っておきましょうね」
「びおじいと、はんな?」
「はいはい。女神様に今年も無事に一年を過ごせましたと、感謝を捧げるのですよ」
あの女神にか。きっと見ていると思うのだ。また長い髪を小川の水で濡らしていないと良いけど。
小川を覗き込みながら、髪が濡れているのに気づかない。あの女神は本当、もう少しちゃんとしなきゃいけないと思う。
「わふぅ」
「うん、しかたないのら」
ピカが、大目に見てあげて。なんて言っている。それでも優しい女神だと知っているから大丈夫だよ。ピカやチロを送ってくれたのだし。
昨日はそうしてお買い物をして、教会に行ってきた。
今日はみんなで『うまいルルンデ』に、お昼ご飯を食べにきたのだ。
「みんな新年限定スペシャルメニューでいいか?」
「ええ、お腹空いちゃったわ」
「オスカーさん、忙しいのにすみません」
「何言ってんだ、レオ。コッコちゃんでは世話になったんだ」
「いらっしゃい、みんな風邪とかひいてない?」
「めありーしゃん、げんきなのら」
「そう、良かったわ。急に寒くなったでしょう、気を付けてね」
「あい、ありがと」
「もう、ロロちゃんったら可愛いわ~」
メアリーさんが優しく撫でてくれる。ちょっぴり良い匂いがする。これはスープの匂いかな?
「キュル」
「ちろ、ごはんたべるよ」
「キュルン」
チロが、良い匂いがするといって起きてきた。お出かけの時はずっと俺のポシェットに入っているのに、こんな時は敏感だ。
「ロロ、ちゃんと座ろうな」
「にこにい、ぷりんもあるかな?」
「あるんじゃないか?」
「でじゃーとに、たべるのら」
「おお、いいな」
お店の中は新年なのに、お客様がいっぱいだ。冒険者の人たちも、今日はお休みらしい。
「冒険者ギルドが、今日はお休みだからね」
「れおにい、きょうらけ?」
「ううん、明後日までお休みだよ」
「じゃあ、レオ兄も明後日までいるのか?」
「うん、いるよ。ニコはどうするんだい?」
「俺は明日から手伝いに出るぞ」
ニコ兄は働き者だ。と言っても、ドルフ爺は今朝も畑に出ていた。
「野菜は休みなんてないからな! ワッハッハッハ」
なんて言ってたよ。片手にマンドラゴラを持ちながら。
「ドルフ爺にマンドラゴラをたくさんもらったんだ。あれは美味いな!」
「そうでしょう? うちもよくいただくんですよ」
ドルフ爺はマンドラゴラを配っているのか? まあ、しょっちゅう出てくるものね。気付けば池の端に生えている。
「今日のスープに入れてあるぞ。美味いって評判だ」
オスカーさんが作る料理はどれも美味しいから楽しみだ。
それより、俺は気になることがあるのだ。
「おしゅかーしゃん、でぃしゃんは?」
「ディさんか? 今朝も特盛サラダを食べてたぞ」
「こないのら」
「ロロの家にか?」
「しょう、まいにちくるのに、きょうはこないのら」
「ディさんも忙しいんだろうよ。領主様に呼ばれてたりするんじゃないか?」
「しょっか」
そうなのか、ディさんがいないと寂しく感じる。いつも一緒だから。
「さあさあ、たくさん食べてちょうだいね」
そう言って、メアリーさんとエルザが持ってきてくれた。『うまいルルンデ』の新年限定スペシャルメニューらしい。ドドンとテーブルに出てきた料理を見て驚いた。
「うわ、スゲーな!」
「本当、美味しそう!」
「これは、豪華だね」
「しゅごいのら!」
「わふ」
「キュル」
ピカとチロが早く食べたいと急かしてくる。新年限定スペシャルメニューは驚いた。角兎が丸々こんがりと焼かれて出てきた。それと、マンドラゴラ入りのスープだ。
「めありーしゃん、どうやってたべるのら!?」
「ふふふ、凄いでしょう? これはね、こうして切って」
メアリーさんがブスッと大きなナイフを入れて真っ二つに切った。中にはお米のようなものが詰められてあった。マジ、お米があるのか? と俺はまたまた驚いた。
「ひょぉー!」
「あまり流通してないの。新年だけ食べるのよ」
「肉汁がしみ込んでて美味しいですよ」
どんどん切っていくメアリーさんの隣で、エルザが取り分けてくれる。
ああ、懐かしい。米だ。俺にとっては、ソウルフードだよ。チートな人とかだと米を植えたり探したりとかできるのだろうけど、俺はまだ3歳だ。だからそんなこと、最初からあきらめてた。食べたいな~と思っても、マリーの料理は美味しいからそんなに思いもしなかった。
なのに、ここにきてお米だ。ちょっと泣きそうだよ。
「ふ、ふ、ふわ~!」
「アハハハ、ロロ、どうしたの?」
「らって、れおにい、おいししょうなのら!」
「な、めっちゃ美味しそうだ!」
「ほら、食べるわよ!」
リア姉ったらもうフォークを持っている。よし、食べよう! きっと美味しいに間違いない。小さな手で大きなスプーンを握って、まずはやっぱお米をお口に入れる。
ピラフみたいなんだけど、角兎の旨味が染みててとっても美味しい。想像以上に美味しい。もう感動ものだ。いや、語彙力がなくてごめんなさい。
足下では、ピカがワフワフ言いながら食べている。
「ちろも、おいしい?」
「キュル」
小皿に入れてもらって、チロもがっついていた。美味しいよね、もう匂いだけで美味しいものね。
「めっちゃ美味しいぞ!」
「ね、とっても美味しいわ!」
「アハハハ、そうだろう! 毎年出すうちの新年限定スペシャルメニューだからな!」
「うしゃぎも、やわらかい!」
「な、皮はパリパリなのに中はめっちゃ柔らかいよな」
これは家でも作りたいぞ。
「まりー、ちゅくれる?」
「あらあら、マリーは作れませんよ」
そっか、それは残念だ。なら年に一度の楽しみにしようかな。
「らいねんも、たべるのら」
「おー、食べにこような」
「あらあら、ふふふ」
とっても美味しく食べてお腹いっぱいになった。でもね、忘れてはいけない。
「ぷりん!」
「ロロったら、プリンも食べるの?」
「りあねえは、いらない?」
「食べるわよ」
なんだよ、食べるのか。みんなでプリンも食べて、もう満足だ。
「ああ、ロロ。眠いね」
「れおにい」
どこにいても、満腹になったら俺は眠くなる。いかんよ、いかん。今年は4歳になるのだから、もう少し起きていられるようになろう。
レオ兄に抱っこされたところまで覚えている。目が覚めたら、隣にディさんの綺麗なお顔があってびっくりした。
「でぃしゃん、きたのら?」
「ん、ロロ。おはよう」
おはようじゃない。もうオヤツの時間だぞ。
ディさんはオスカーさんが話していたとおり、領主様に呼ばれていたそうだ。朝早くから行くのは面倒なんだとか言っていた。
「ロロ、お土産があるんだよ」
「おみやげ?」
「そう、マリーが用意してくれてるから」
ディさんに抱っこされて1階に行くと、フワリと良い匂いがした。
「領主様とハンザさんが進めていたのだけどね、コッコちゃんの卵を使ったエッグタルトを貰ってきたんだ。まだ試作品なんだけど、美味しいよ」
「えっぐたると!」
なんだなんだ、今日はやっぱ新年だからか? 大盤振る舞いじゃないか。
「片手で持って食べられるように、小さめに作ってあるんだ」
「ほらほら、ロロ坊ちゃま、座りましょうね」
「まりー、りんごじゅーしゅもほしいのら」
「はいはい」
俺の小さな手でもちゃんと持てる大きさだ。ハムッとお口に入れると卵の風味が生きている。なんて、ちょっと知ったかぶっちゃった。
「おいしい! ふわふわ!」
「だろう? 美味しいよね」
これが名物になると良いのにね。産業になって雇用も生まれて、街が活性化する。ふむふむと、エッグタルトを手に持って考える。
「ロロはまた何か考えてるの?」
おっと、それよりディさん。
「でぃしゃん、ことしも、よろしくなのら」
「今年も一緒に遊ぼうね!」
ディさんにちゃんと挨拶しなきゃと思ってた。今日はこないからどうしたのかなって。
「あー! ロロったらもう食べてる!」
「姉上、ちゃんとあるから」
リア姉とレオ兄が家に入ってきた。手に木剣を持っているから、きっとリア姉の鍛練にレオ兄が付き合っていたのだろう。
ニコ兄が一緒に食べられないのは残念だけど。
こんな感じで俺の新年は平和で、ちょっぴり豪華だった。
今年もよろしくなのら!




