490ー恐怖
姉上ったら大丈夫かな? 魔力切れで倒れたりしないよな?
「わふ」
「そう? だって姉上だから心配じゃない?」
「わふわふ」
アハハハ、ピカまで、リアは加減を知らないからなんて言っている。でも大丈夫らしい。お墓参りから帰ってきてから、姉上は意識して炎を使っている。ブラックウルフの襲撃の時も、ずっと剣に炎を纏わせていた。それで魔力量が増えている。と、ピカが言ってた。
威力もお墓参りで使った時とは段違いだ。一気に卵を焼き尽くしていく。
それだけの威力の炎を放っておいて、姉上は平気そうな顔をしている。日々の積み重ねって大事だね。てっきりいつも嬉しがって使っているのだと思っていたよ。
「ふふふ」
「レオ、何笑ってるのよ」
「姉上は凄いな~って、思っているんだよ」
「本当、そういうところってロロにそっくりだわ」
違うよ、順番が逆だ。僕の方が先に生まれているんだから、ロロが僕に似てるんだって。
「リア! 奥の方にもう一度炎を出せるか!?」
「はい! お祖父様!」
呼ばれた方へ姉上は走って行く。もう大丈夫じゃない? 飛んでいる魔鳥も少なくなったし。そう思って上空を見ていた。何気なしに見ていたのだけど、視界の隅に映った物に僕の心のどこかで盛大に警鐘が鳴った。
「え……? ピカ、あの黒いのって何?」
「わふ!?」
僕たちがいる場所のずっと上空に、何か黒い靄に包まれたものが浮いていた。よく目を凝らして見てみると、蝙蝠みたいな翼らしき物があるようにも見える。
なんだ、あれは? あの靄があるから何なのか実体が分からない。分からないのだけど、それから目が離せない。一瞬で体温が下がったように感じるのに、背中にツーッと変な汗が伝う。
「ねえ……ピカ?」
ピカが答えてくれない。でもピカの様子で、これは只事ではないと分かる。ピカがこんなに警戒しているのを見たことがない。体勢を低くして全身の毛を逆立て尻尾を高く真っ直ぐにピンと立てて、犬歯を見せながら低い唸り声をあげている。
あれは一体何なのだ? あんなの見たことがない。しかもそれを見ているだけなのに、とっても距離があるのに、身体中の毛が逆立つような気がする。それも恐怖でだ。
あれはヤバイ。本能がそう言っている。
「ピカ、どうしよう!?」
「わふ」
偵察をしているようで、攻撃するつもりはないみたいだとピカが言った。もしも攻撃されたら、僕たちなんてひとたまりもないだろう。存在感が違う。圧倒的強者だと分かる。こんなに離れているのに、恐怖で足がすくむ。
「レオ! どうしたぁッ!?」
「お、お祖父様! あれ! 上空を見てください!」
「なんだぁッ!?」
お祖父様が魔鳥を斬る手を止めて、僕が指している上空を見た。
「……ッ!?」
「お祖父様、あれは何ですか!? あれって、とんでもなく強いですよ!?」
お祖父様が、何も言わない。言葉が出ないんだ。僕と同じように上空を見つめて、言葉も出ないくらいに驚いている。お祖父様の表情が強張っているのが分かる。
「お祖父様!」
「レオ……この巣を潰したら即行で退避だ」
つぶやくようにお祖父様が言った。
「どうだぁッ!? 巣は潰せたか!?」
お祖父様が大声で確認する。どこからか、兵士さんが答える。完璧に燃やしたと。
「よしッ! すぐに退避! 退避だぁーッ!」
「姉上! 行くよ!」
「何!? どうしたの!?」
「いいから、逃げるんだ!」
「逃げるって、何から逃げるのよ!?」
僕も何がなんだか分からないけど、とにかくこの場から離れたかった。ジリジリと背中を這いあがってくる恐怖。 お祖父様とピカが、尋常じゃないほど警戒している。
みんな素早く馬に乗り、その場を離れる。下りている最中に後ろの上空を恐々見てみた。怖くてまだそこにいるのか、確かめずにはいられなかったんだ。
それが浮いていた場所には、もうなにもいなかった。あれは幻覚でも見間違いでもない。僕の鑑定眼が言っている。
巣のあった小さな丘を下りてダンジョンの入り口を過ぎ、少し開けた場所に皆が揃う。ここまできてやっと、呼吸ができるようになった気がした。
「お祖父様、あれって」
「見えたのか?」
「はい、本当に存在しているのか信じられなかったのですが」
「あれは確実にいるぞ。私も見るのは初めてだ」
「お祖父様、レオ、何? 何ですか?」
「姉上……」
僕の鑑定眼でしっかりと見えていた。あの黒い靄ではっきりと姿は見えなかったけど、あれは今ではもうおとぎ話の中の存在だと思われている。
「僕の鑑定眼が『魔族』だと」
「ああ、まさかこの地にくるとは……」
「なんですって!? そんなの架空の存在じゃないの!?」
「リア、違うぞ。約300年前に実際に四英雄が戦っておられる」
「ロロがよく読んでいた、あのおとぎ話の!?」
「ルルンデのお祭りになっている四英雄だ」
今年はみんなで参加したルルンデのお祭り、ルルウィン祭。約300年前に国を守って戦った四英雄と、助けてくださった精霊様のお祭りだ。まさかその四英雄と戦っていただなんて。
「四英雄と精霊様が封印されたのは魔族じゃない。その上位の存在だ。その時に実際に魔族と戦っておられる」
この帝国には被害はなかったそうだ。主にテンブルーム王国の王都とフォーゲル領が襲われたという。
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宜しくお願いします。
今年最後の投稿です!490話にもなりました。来年は500話突入です!
いったいどこまで続くのやらです(^◇^;)
大晦日の夜はこれからです!
実はお正月SSも書きたかったのですが、断念してしまいました( ᐪ꒳ᐪ )
その代わりと言っては何ですが、お正月休み中には新作を投稿しようと!(気持ちは前向きに(^◇^;))
後ほど、活動報告を更新します。読んでいただけると嬉しいです!
どうか皆様、よいお年をお迎えくださいませ!
これからまだお節&お雑煮を作ります。キッチンのお掃除も!↓のディさんみたいな気迫で頑張ります!




