プロローグ
なろう版は誤字脱字と修正箇所が多く、このまま掲載するのが恥ずかしかったので、本文を消去させていただいておりました。
しかし、ブックマークされた方がこのまま本文を読めないのもよくないのではないかと思い、以前のものを再掲いたします。
誤字脱字多いままで恐縮ですが、あくまで電子書籍版が最終ということでご理解くださいませ。(2026.9)
黒猫の獣人リンリンは、この状況を理解しきれず困惑していた。
「あなたは私の『番』です」
そう言われて連れてこられた。
リンリンは、一般市民である。
本来ならば王宮なんて、一生足を踏み入れるはずのない無縁の場所だ。
しかし今、その王宮の執務室で、国王の側近たちに囲まれ顔面蒼白になっている。
竜族の彼らはめちゃくちゃ怖い。見た目は人間と変わらないし、顔は笑っている。しかし、威圧感がすごいのだ。
カタカタと震えそうになるのをリンリンは必死に堪えた。
いっそのこと、このまま流れに身を任せてしまおうか。
きっとそれが一番楽に決まっている。
何も考えなくていいし、もう何も考えたくない。
だけど――。
突然、「『番』です」なんて言われたって、そもそも猫族には「番」の概念がないのだ。
なぜなら、猫族は獣人の中でもネズミ族に次いで寿命が短い。のんびり「運命の相手」なんぞ探していたら、たちまち絶滅危機に瀕してしまう。
いくら獣の血を持つ者の本能とはいえ、種の保存が最優先に決まっている。
だから「番」の習性を持つのは、狼族やクマ族、羊族などの比較的寿命の長い種族に限られる。長寿でも獅子族やトラ族のように、一夫多妻制の種族もいる。
まあ、獣人と一言で言ってもいろいろなのだ。
それに、リンリンにだって理想はある。
フサフサの白耳と白いしっぽ。
種族は問わない。
できれば一夫一婦制の種族で、誠実な男性を希望。
家事全般が得意であれば言うことなし。
高望みではないはずだ。
リンリンは、自分のことをぎゅっと抱きしめて離そうとしない、この男の髪をチラリと見た。
黒だ……。
ダメだ。これでは夢は叶わない。
(ま、負けちゃダメよ。しっかりしなきゃ!)
そうだ。どんなに怖くても言うべきことは言わねばならぬ。
リンリンは、グッと拳を握った。
勇気を振り絞り、凛とした瞳で雲の上の人をはたと見据えて訴えた。
「あのっ……そろそろ、は、はなっ、離していただけませんかっ」




