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更新停止中 イズちゅん  作者: ちゅん助の!
第十三章 ひらけ!ゴ窓! シュダリア愛哀窓の儀
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第十三話 その29 開けゴ窓

「ご主人さみゃあ?」

「女の人がこっちをしきりに気にして」

「なんか用事があるみたいですみゃあ?」


「ん?誰か見送りにでも来てるのかお?」

「なるほど、綺麗な娘さんが確かにわしらの車を気にしておるようだが?」

「誰かお?」


「あ、あれは!?」

「リリーシア!」

「ネコさん!止めて頂けますかっ!」


 道端でこちらを見つめていた少女をエマーチはリリーシアと呼び、急いで猫車を降りてその少女に駆け寄って行った。

 ひょっとしたらあれが儀式の相手の少女だったのだろうか?なるほど品の良さそうな少女だった。

 だが、少女の表情は怒りの色というか、困惑の色と言うか、あまりよくない感情が滲み出ている様な?


「イズサン!ひょっとしてあの方が!?」


灯も俺と同じ予想を持っていた。


「り、リリーシア!」

「ひょっとして見送りに来てくれたのかい!?」

「もう会えないと思っていた!」


「………」


話しかけるエマーチに対してリリーシアは応えない…かな~り怒っているような?


「僕はもう一度…」

「もう一度、自分の歌を、思いを信じて挑戦する事にしたよ」

「君は幼い時からあんなに傍にいてくれたのに」

「突き放す様な事をして本当に後悔している…」


「………」


「いつかまた、君に会える日が来たなら」

「今度は胸を張って君に会えるように努力するよ」


「………」


少女はエマーチをやや睨むように見つめるだけでなおも応えなかった。


「僕は今日でシュダリアを去るけど」

「君の幸せを祈っている…」


「…が…るよ」


「え?」


「なにが!幸せを祈っているよ!」


「え!?」


バチコーーーーーオオオオオオオン!!!!!


「いたあああああああああ!!!???」


 突然、リリーシアと呼ばれる少女は容赦なくエマーチに平手打ちを喰らわしたのだった。

 俺は普段、ちゅん助がアスリに何度もブッ飛ばされるのを見慣れてはいるが、そんな俺でもびっくりするぐらいの勢いの平手打ち!

 灯は、まあっ!と息を飲み(灯も結構な容赦ない平手打ちを俺とちゅん助に食らわした事があるが…)アスリーズも突然の展開に狼狽え、ええ!?となっている!


「なっ!?なにをするんだ!?リリーシア!」


「こっちのセリフよ!」

「何が幸せを祈っているよっ!」

「エマーチ!貴方とんでもないことしてくれたわね!!!」


「ええ!?」


 世紀の大失恋から数日、それでも立ち直って新たな道を進むと決めたエマーチの身に突然起こったトラブルに、俺達は慌てふためき様子を見る事しか出来なかった。


「貴方のせいで私は!」

「私の縁談は破談になったのよっ!」

「まったく!どうしてくれるのよ!」


「!」


 リリーシアはエマーチに殴りかからんばかりに詰め寄った。理由はどうあれ、これ以上の暴力沙汰に発展するとマズイ。俺達は成り行き上エマーチを庇い、なんとかリリーシアをなだめて、事の次第を聞きだした。


 リリーシアの話によると事の顛末はこうだった。


 あの一世一代の儀式の後、リリーシアは予定通り騎士様の求婚を受けるはずだったのだが、あまりの話題となったあの愛哀窓の儀は当然、騎士の耳にもその成行と結末が入った。この出来事を聞いた騎士は熱く心を揺さぶられ大層に感動したという事だった。

 殊にエマーチの町の住民の大半を敵に回して、風習や伝統を破った行いについては事の善悪はさておき、それほどの振る舞いをさせた熱き愛には痛く感動された様で、その男の愛の強さ、大きさにに比べたら自分のリリーシアに対する愛など

比べ物にならないのに気付いた。

 自分は騎士としての地位も名誉も富もある、その男には幼馴染と言うだけでその他には何も無いはずなのに、真の騎士たる心構えを持っていたのはどちらの方だったか?

 儀式の事を聞くまでは求婚する事に何の疑問も持たなかったが、この男を差し置いて求婚をする行為は、何か違うのではないか?大変失礼だが今回の件は見合わせて欲しい…


そんな事情の様だった。


「あわわわ…その…リリーシア…」

「僕は…その…君の縁談を邪魔するとか…」

「そういう意図じゃ…」


「どういう意図でも関係ない!」

「どうしてくれるのよ!?」

「こんな風にしておいて!」

「貴方一人で町を出るですって!?」


(うん?)


(イズサン…これって!?)


(アカリ、君もそう思うか?)


(ええ!ええ!これって!もしかして!)


「いや、その…」


「貴方が大それた事したおかげで!」

「私はとばっちりを受けて破談になった挙句!」

「町では熱い想いに応えなかった薄情な女!」

「そう言う事になってるのよ!」

「おかげさまで私《《も》》町に居場所が無いのよっ!」


「リリーシア…その…なんて言って良いのか…」

「僕はどうすれば良いのだろうか…」

「どうしたら許してもらえる?」

「どうしたら償えるのだろうか…?」


「貴方ねえ!」

「少しは自分で考えてよっ!」

「…と、とにかく!」

「一人でさっさと町を出るなんて!」

「私は許さないわ!」


(い!イズサン!もしかしてこれって!!!)


(アカリ!俺もそんな気がしてきたんだけど!)


「僕は…どうすれば…」


「どうすれば…?じゃないわよ!」

「責任を取りなさい!って言ってるのよ!」


「いや、だからどうやって…」


「あんな非常識な事やるくせにホントに何も分かってないのね!」

「一緒に町を出る!」

「そう言ってるのよ!」


「え?」

「ええ!?」

「ええええ~!!!!」


「す、すてきいいいいいいいいい!!!!」

「エマーチさん!どうやら貴方の窓は遅れて、今、開いた」

「彼女さんはそう言ってるんですよ!」


「ぎゃ、逆転!いや大逆転勝利じゃないかエマーチさん!」


「へ、へえ!こういう結末もあるんだ?」

「神様も捨てたもんじゃないわね!」

「こころにくいカミサマぴゅう!」

「まさかのてんかいだっぽ!」


 俺達は思わぬ展開に思わず感想を口走っていた。


 儀式では開かなかった窓、どうやっても開くはずが無かった窓がまさかの急展開で、物理的な窓は無くても、俺達の眼前でそれは開いたのだ。


「リリーシア…」

「僕と一緒に…ついて来てくれるんだね?」


「勘違いしないで!」

「私がついて行くのは居場所が無くなったからよ!」


「ああ、わかってる!」

「それでも!」

「それでも僕は嬉しいのさ!」


「そう!」

「だったら次は…」

「絶対に離さないで!!!」


 リリーシアはそう言うとエマーチの胸に飛び込んだ。エマーチは彼女を強く抱きしめた。


「ああ!離すもんか!」


「すてきいいいい!!!」


 痛く感動したらしい灯は珍しく飛び跳ねるように興奮し、アスリーズは二人の抱き合う姿を、アスリは普段は絶対見せないうっとりとした表情しながら眺めていた。


「ご主人さみゃあ!こんな事もありますみゃあ!」


「………」


「ちゅん助さん!」

「やりました!僕はやったんです!」


「………」


「やったんですよね!?」


「………」


「これもちゅん助さん!貴方が背中を押してくれたからですよ!」


「………」


「あの…?ちゅん助さん?」


「………ねお…」


「え?なんです?」


「………しねお…」


「ええ?どういう?」


「しねおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!エマーチ!」

「氏ねじゃなくて死ねだおおおおおオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


ダダダダダッ!

ポコポコポコポコ!


「わあああ!?ちゅん助さん???」

「叩かないで!」

「一体、どうしたんです!?」

「喜んでくれると思ったのに~???」


「わしはああ!わしはああああ!!!」

「エマーチ!貴様がこっち側の人間と確信しておったから手を貸しただけだおおおお!!!」


「はい~!?」


「こっちの非リア側だと思っていたからこそ!」

「安心して全力で手を貸してやっただけなのにいいいいいい!」


「ええ…」


「蓋を開けてみれば腐れリア充!」

「丸々太った幸福ブタ野郎ではないかお!!!」

「絶対に失敗すると思っていたからこそ!」

「似た者同士で!仲間意識で手を貸してやっていただけなのに!」

「この裏切りモンがあああああ!」

「しねおしねおしねおおおおおおおおお!!!!」


「はあ…」


「ええと…エマーチ、このおかし…ぶきみ…不思議な方は?」


「僕はてっきり好意的に協力してくれているものだと…」


「ふぁふぁーん!(←泣いている音)」

「わしの善意()の協力をかえせお~!」

「この裏切り抜け駆けリア充がああ!」



「ちゅん助…」

「ちゅん助…」

「ちゅんすけ…」

「ちゅんすけ…」

「ちゅん助さん…」

「ご主人さみゃ…」


 何と言う奴だ…俺達は珍しくちゅん助が熱心に善行に励んでいると思って感心し少し見直して(俺はしていないが)いたのにちゅん助という男は同類相哀れむを上から目線で施しを与えてやっているつもりでいい気になっていたのだ…

 ただそれだけの事で町を二分し、長の首を飛ばすかもしれない事態を引き起こして愉悦に浸ってやがったのだ!!!

 先程は偉そうに過去の自分と重ねていただの、自分のためにエマーチを応援しただの綺麗ごとを抜かしていたくせに!実際の所、おそらくは自分の思いが届かなかった経験ばかりの過去を逆恨みして、同じ仲間を増やしてほくそ笑むつもりだったのだ!


なんというやつだ!!!


「流石の私もドン引きだわ…」

「なんというあさましさだっぽう…」

「おそるべしまけいぬこんじょうだぴゅ…」


「ちゅん助さん…貴方には神のご加護が本当にあら『ぬ』事を…」


「なんかあるだろうと思っていたけど、これ程とは…」

「ちゅん助…」


 泣きながらエマーチをポカポカしていたちゅん助であったが、なにか急に思い付いた様にエマーチから飛び降りると、急いで荷車の中からどこで作ったのか、30cm程の小さな窓のミニチュア模型を持ち出して来ては、なぜかアスリの前に持ってきてその足元に設置した。


「エマーチ!」

「ぬけがけは許さんお!」

「わしも続くお!!!」


トチ狂ったアホがそう言うと、アスリの前に立ちはだかる


「アスリちゃん!」


「な、なによ!?」


「ここは、まだシュダリアの町の領内だお!」


「だからなによ!?」


「フッ!」

「この窓を見ても分からんのかお!」

「わしは貴様に!愛哀窓の儀を申し込むんだおw!!!」

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