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更新停止中 イズちゅん  作者: ちゅん助の!
第十三章 ひらけ!ゴ窓! シュダリア愛哀窓の儀
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第十三話 その28 政治屋

 エマーチの儀式のから数日後、俺達の峠越えの準備はほぼ整ったと言って良かった。だが峠越えのルートの情報が未だに入ってこない。

 準備が出来たのなら思い切って移動を開始してみては?とアスリに進言したが彼女は首を縦に振らなかった。

 旅を急いでいるはずの、そして凄腕のアスリがそう判断しているのだ。従う他は無いが、その判断の裏には未熟な俺達を連れて、状況未確定な危険地帯に足を踏み入れるわけには行かない、という要素が大きい様に思えた。

 はっきりと口に出しては言わないものの、彼女のその振る舞いには感心し、それ以上にバツが悪い感じもした。


「峠の城砦区域の状態も気になるけど…」

「この町も今後どうなるんだろうな?」


「長の件ですか?イズサン」


「ああ、エマーチさんの儀式であの人、首が飛んだだろ?」


 幸いにも儀式は大感動の中で終える事が出来た。あの後すぐ議会が開かれ今後の儀式は伝統通り歌って良いのは3曲まで!そう厳しく取り決めがなされたそうなのだが、エマーチのあの熱意を見て、たった一つだけルールが変わった。

 真に熱い想いがあるなら、プラスして1曲だけ歌って良い、そう言う事になったらしいのだ。

 まさか何百年に渡って引き継がれた伝統儀式にアンコールが取り入れられる事になろうとは…

 それだけエマーチの行動は物議を醸しだし混乱を生んだのだが、きっとあの思いの強さがルール迄も変えたのだ。


 それだけでもあの儀式には意味があった、そう思える要素の一つだった。


 泣きの1曲はたった1曲かもしれないが、これがまた新たなるドラマを生み出す事だろう。


「次の長とか、上手くまとまると良いんだが…」


「ぶわはっはw!」

「イズサン!」

「いや!イズミクンは純粋だなおwww」


「ふふ、そうね…」

「そうぴゅ!」

「そうぽ!」


「あらちゅん助さん達はイズサンとは違うお考えなのですか?」


「そうだなお!」

「長は間違いなく続投だおw」


「え!?どういうことだよ?」


「考えてもみろおw」

「あれだけの逆風と大混乱を、これ以上ないタミイングで出張って来て」

「見事に収めたんは誰かお?」


「!」


「そう言う事だおw」

「奴はとんだ、いいや流石の凄腕の骨の髄まで政治屋だおw」

「天令の勇者やザンガリアの聖女を後ろ盾にして!」

「い~や踏み台にして!」

「あの熱すぎる演説をブチかます事によって、それ以上の統率を見せたのだお?」

「あの瞬間、あの状況!」

「これ以上ない民衆の注目が集められる一世一代の場面に!」

「ただ乗りして、注目を奪って!」

「見事にやってのけたんだおwww」

「どんな街頭演説や討論会よりも効果的!」

「最強の選挙活動やないかw!」

「しかも!」

「奴にとっては駄目元!」

「駄目なら長の座を降りるだけ!」

「長を今日この日まで長年務めた奴やぞ?」

「長を降りても就く役職はいくらでもあるわw」

「ノーリスクハイリターン案件やないかw」


「そうよ?イズサン!あんた住民の声に気付かないの?」

「流石は長!見事でした!とか」

「長が身を引くなんて考えられない!御考え直しを!とか」

「貴方意外に適任、誰が居られると言うのですか!」

「そんなのばっかり!」

「あの件で彼の評価はうなぎのぼりよ?」

「あの騒ぎを皆が納得いく形で収めたのよ」

「裏にどんな意図があったとしても結果がすべてよ」


「そうぴゅ!おさ!おさ!れんじつのたいへんなさわぎだったぴゅ!」

「そうぽ!でもほんにんがいちばんまんざらでもなさそうだっぽ!」


「マジかよ…」


「お生憎さんだったわね」

「アンタら、ダシにされたのよ?ダ・シ・に!」


「ふみだいっぽw」

「ダシっぴゅw」


 やられた…言われてみると確かに…まさかエマーチよりもしれっと株を上げてる奴が居たとは…


「やられたなあ~」

「政治家なのにあの状況でそこまで読んでたってのか…」

「謀ってたのかよ!」


「イズサン!」

「なのにじゃないお!」

「だからだおw!」


「またそれかよ…」


「そう言う事よ」

「そういうことぴゅ」

「そういうことっぽ」


「イズサン、長ともなればいろいろ大変なのです」


「まあ、そう言う事にしておいてやるかあ~」


 長の華麗なる?手法に舌を巻きながらも俺は俺が絡んだ件で誰かの首が飛ぶ、そう言う事態にならずに済んだ事には胸をなでおろした。


だが…


「政治の世界では偶然起こる事は有り得ないんだお…」


 誰に、という訳でもなく、ちゅん助がそっと呟いたのを俺の耳が聞き逃さなかった。一瞬…何のことか分からなかったがアクリムのよこしまな御守り事業の事が脳裏を過ぎった。

 ギョッとしてちゅん助を見つめると、その時の彼の姿はコミカルな面構えではあったが悪魔の様な禍々しい何かにしか見えた気がした。


(やりやがった…)


 そう、間違いなくやりやがったのだ。


 聞いていた話では、あの長は高齢のため次期町長候補へ交代するのでは?すべきでは?という世代交代論がちらほら上がっていたのだと言う。そこへちゅん助があの儀式で大混乱を起こす計画を漏らして、これを見事治めれば交代論など引っ込むに違いない!きっとそんな感じで持ち掛けたのだ!あの場で灯や俺まで引きずり出して、必要以上に観衆を煽って暴徒化させたのは、長が出るタイミングをわざと作っていたに違いない。


 俺はちゅん助を睨み付けてたが、彼はじっと視線を逸らさず俺を睨み返していた。何が悪いのか!?そう言わんばかりの視線だった。








 儀式から5日目、あの大波乱の儀式の主役であったエマーチが町を出ると言う。彼の行いはいくつもの物議を醸しだしたが、長の手腕もあって特にお咎めなしとなった。伝統ではあったがルールとして明記されてなかった以上、罪に問うたり罰を与えることは出来ないのだろう。

 しかし、エマーチ自身は今回の事にけじめをつけるため、また再び歌で人生を切り開くという夢に挑戦するため町を出る決断をしたのだった。


 その件に関して灯がまた非常に関心を抱き、是非ともエマーチの新たなる旅立ちを後押しするために猫車で目的の街までなんとか送ってやれないか?との提案をした。

 峠ルートの情報が入らない以上アスリが峠越えは難しいと判断している今、メンバーからはさしたる反対も出ず


「儀式の英雄をお送りできるなんて光栄ですみゃア!」


というみぁ助の言葉の後押しもあって、この提案はすんなりと通ったのだった。


 翌日、エマーチの出発の日となった。


「ちゅん助さん、貴方には感謝しています」

「良い結果をお見せ出来なかったのは残念ですが…」


「エマーチ、おまえは自分のために戦ったのだお!」

「物事は世のため、人のため」

「そう言いだすと途端に胡散臭くなるものだお」

「理由はおまえの中だけに」

「誇りはおまえの中だけにあれば」

「それでいいのだお」

「わしは若かれし時」

「おまえのように出来なかった」

「その時の自分とおまえを重ねて」

「こんどはなんとか行動してもらいたい」

「そう思っただけなのかもしれん…」

「だが、おかげで良いものをみたお」

「わしもまた自分のためだけにおまえを応援した」

「お互いそれでよいのではなかろうかお?」


「そうですね」

「貴方の言う通りです」


「エマーチさん!」

「それでも私は」

「私は感動しました!」

「どんなに熱い情熱を持っておられようが」

「あんな事なかなか出来る事じゃありません!」

「願いは通じなかったかもしれませんが」

「想いはきっと届いています!」


「シスター…」

「大変お世話になりました」

「貴方の後押しがあったからこそです」

「おかげで僕は悔いなくこの町を去る事が出来る」 

「本当にありがとうございました」


「貴方に神の祝福があらん事を」


「アナタの歌声には感動したわ」

「きっと、それはあの場に居た全員がそうだったと思う」

「たとえ真の目的を果たせなくても」

「人々の心に何かは残したわ」

「それは忘れないで」


「うつくしいメロディだったぴゅう~♪」

「あついじょうねつだったぽう~!」


「神魔弓士様ありがとうございます」

「精霊さんたちも」


「俺はあの状況下であの場に立った」

「それだけでも凄い事だと思う」

「俺にはとても出来ない…」


「ガリンの英雄にそんな事言ってもらって」

「貴方が成し遂げた事に比べれば僕なんて…」

「儀式では矢面に立っていただき」

「いや、それ以前にもシスターと共に長を説得して下さったとか」

「本当にありがとうございました」


「え?いやあ~それは~」


まあ長には色々してやられたが、まあ触れないでおこう…


猫車は儀式の感想を話し合う面々を乗せ、見送られる事も無く静かに町を出て行った。


だが…?


「ご主人さみゃあ?」

「女の人がこちらをしきりに気にして」

「なんか用事があるみたいですみゃあ?」

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