俺の日常にファンタジーが突き刺さってきた その20
■さすシバ、さすシバ
・異世界4日目 12:50
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狼兄弟からのお土産が10匹を超えたあたりで
シバ達の様子がおかしい事に気が付いた。
何やらおどおどしてる。もしくはまごまご?
要するにキョドってた。
「どうした?シバ丸」
「きゃ、きゃふ!」
”ポ、ポイントが……!ポイントがッ!”
ポイント?
あぁペッポか。
あー……もしかして
お土産にトドメを刺しまくって大量ゲットしちゃった?
おめめがウルウルしてるシバ丸に確認すんのも酷かと思ったんで
ペッポコマンドを使って調べてみた。
そりゃ。
ぺっぽぺっぽぺっぽー。
シバ丸
【残ポイント: 12,009P】
ちょー増えてんじゃん。
でも念の為シバ吉も確認してみた。
ほい。
ぺっぽぺっぽぺっぽー。
シバ吉
【残ポイント: 13,112P】
こりゃ間違いねぇな。
ペッポって、敵をドツくと増えるらしい。
いや、薄々そうじゃねぇかなー?とは思ってたんだ。
じゃなきゃ、狼兄弟が保有する大量ペッポの説明がつかねぇしな。
中山が作れるくらい、イノシシをぶっころがしたんだ。
そらペッポも溜まりまくるよな。
話が脱線したんで戻すぞ。
工兵コンビがおろおろしてる原因。
それこそまさに、このペッポ獲得ルールに関係することだった。
”トドメ刺しただけなのに、いっぱい入ってきた……!”
”よかったのかなぁ……?ドロボーさんしちゃったかも……”
さっきからずっとこの調子。
どうやら、狼兄弟のペッポを横取りしたんじゃないかと悩んでたらしい。
シバ達って、いちいち真面目だよな。
でもなー。
ぶっちゃけ気にしなくて大丈夫だぞソレ。
横取りしたつっても、2人で2万ポイントくらいだろ?
既に100万単位でペッポを保有してる狼兄弟にしてみりゃ、誤差だよ誤差。
”怒られたらオレも一緒に謝る!”
”オレも謝る!”
”オレもオレも!”
工兵コンビを励ますその他3シバ。
見てて目頭が熱くなる友情だが、そんな盛り上がらなくていいんだぞー。
そもそもの話、狼兄弟は自主的にトドメを放棄してるからな。
間違いなく、アイツらペッポを全く意識してねぇ。
だったら代わりにシバ達がぶっころがすしかねぇじゃんか。
流石に、瀕死とはいえ生きてるモンスターを道に放置するわけにはいかねぇしな。
少なくとも俺は困るぞ。
万が一、意識を取り戻したモンスターが、ピクリとでも動いてみろ。
その瞬間「ふぇぇぇぇぇぇ……」って崩れ落ちる自信があるぞ。
だからコレでよかったんだよ。
よくぞトドメを刺してくれた。さすシバ!さすシバ!
「気にすることねぇぞ」
「きゅ、きゅーん……」
励ましてみたが、ションボリしたままの工兵コンビ。
股の間にしっぽを折り込んだまま、不安そうに”きゅんきゅん”鳴いてる。
正直、見てらんねぇ。
なので、別アプローチで元気づけることにした。
「そのペッポは、ウィリアム達からの激励だぞ」
「わふ?」
”激励……?”
そう。激励。
いつも一生懸命ガンバるシバ達への、ささやかなプレゼントだぞ。
もちろん狼兄弟にそんな気は一切ないだろうけどな。
でもそんなことは問題じゃあない。
我が軍の絶対正義たる俺が「激励だ」って断じた時点で、それはもう揺るぎなく「激励」なんだよ。
これがご主人様権限ってヤツだ。別名ゴリ押しとも言う。権力万歳だわ。
俺の言葉を聞いて
”激励だって”
”じゃあもらってもいいのかな?”
それまでキョドってた2匹の様子が、目に見えて落ち着き始めた。
実に良い傾向。
「ありがたく、もらっとけもらっとけ」
「わ、わふっ」
”いいのかなぁ……?”
いいんだよ。
俺が許す。
それに狼兄弟に聞いても、間違いなく「いいよ!」って答えるだろうしな。
つーか、シバ達が喜ぶとわかった時点で「もっと持ってきてやるぞ!」って走り去る未来しか見えねーわ。
「ウィリアム達の激励に応えるためにも、もっと強くなんねぇとな」
最後の〆に発破をかけると
「わんっ!!!!」
”おー!!”
ようやく完全復活してくれた。
あ、折角なんで、ペッポも使ってみたぞ。
うりゃー!1万ポイントを喰らえーッ!!
的なノリで、盾やら魔法やらをガン積みしてやった。
うむ。盤石。
これからも無理せず、ほどほどに頑張って欲しい。
差し当たっては、そろそろ”お土産”咥えたウィリアムが戻ってくる頃合いなんで
さっくりとトドメを刺してくれよな!!!!
ご主人様との約束だぞ!!
ホント、頼んだからなマジで (真顔)
■伝説の剣が刺さってると思ったんだよ
・異世界4日目 13:15
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草がまばらに茂る真冬の河川敷。
そんな寂れたド田舎の一角が、何やら神々しい事になっていた。
天からピンポイントに光が降り注いでる。
スゴい光量だ。目を細めたくなるレベル。
しかも地面に降り注いだ光が、地面を丸く覆うように光のドームを形成してやがる。
どこからどう見ても、選ばれし者のために用意されたプレイス。
圧倒的な伝説の始まり感だった。
いやー、見た瞬間『あ、剣が刺さってる系の演出だな』って確信したもんな。
同時に『とうとう俺も聖剣GETかー』ってニヤケちゃったわ。
当然、うきうきしながら近寄ったよね。
だって選ばれたと思ったんだもん。男なら誰だってそうする。
もちろん、キリッとした勇者的表情でだぞ。
だから選ばれたと思ったんだって。男なら誰だってそうする。だから俺もそうした。
俺が俺こそが選ばれし勇者だ!
手を伸ばせば光のドームに届く位置で立ち止まる。
数秒の空白の後、脳内にいつもの声が響いた。
”アクティベーションしますか?”
おもてた展開とちゃうんだが。
なになに何なの?
セオリー通りなら、ここで美人のチャンネーが登場して、”よくきました勇者よ”的な展開が始まるとこじゃねぇの?
こんなところでオリジナリティ出されても困る。
ってか”アクティーベーションしますか?”って何だよ。
何をアクティブにすんだよ。ざっくりしすぎだろ。
なんだこの意味不な状況。
だがしかし、勇者フラグがバッキバキに折れた事だけは理解できた。
マジかよ、ふざけんなし。
とりあえず膝がチョー冷たくなったんで、立ち上がった。
ん?いつの間に座ったのかって?
いや座ってねぇよ。片膝立ちしてただけ。
何でそんなポーズしてたのかって?
だって片膝立ちって、何となく勇者っぽいじゃん。
右膝の土埃をパタパタと払っていると、再び脳内に声が響いた。
”アクティベーションしますか?”
今度は、同じ質問が書かれたボードも出現した。
ボードにはいつもの「Yes/No」のボタンが付いてた。
右下には信頼と実績のHelpボタン先輩も付いてた。
そら、まずはHelpボタンをタップするよね。
Helpボタンをポティットナすると、脳内にアナウンスが流れた。
”アクティベーションすると目的の草が手に入ります”
どうやら今日のHelpさんは調子が悪いらしい。
違ぇ、そうじゃねぇ。『何をアクティベーションするか』を教えろよ。
ってか、目的の草って七草のことか?
なぜ『七草』とダイレクトに書かねぇんだ?
情報の出し方が雑過ぎる。いろいろ取っ散らかり過ぎててよー分からんわ!
まずは情報を整理しねぇとな。
熱く滾る不満を隠しつつ、脳内アナウンスさんに質問してみた。
「何をアクティベーションすんの?」
”アクティベーションしますか?”
あーはいはい、このパティーンね。おっけーおっけー。
知ってる知ってる。これ話通じないやつだろ。クソが。
だったらアクティベーションでもなんでも好きにすりゃいい。
秒で思考放棄したった。
どうせ次は【吟遊詩人】だろうしな。
だって、他のJOBは全部アクティベーション済みだからよ。
ヤケクソ気分で「Yes」をタップする。
と、脳内アナウンスが流れた。
”ではJOBを覚醒させますが、よろしいですか?”
おもてた展開とちゃうんだが。
え、新しく覚醒すんの?
いきなり前提が崩れた。
ってか、何のJOBだよ。
ハッキリ言えよ。隠すな。無駄に俺の不安を煽るんじゃない。
もしかしてコイツ、俺に心理戦を挑んできてるのか……?
だとしたらその宣戦布告は無意味だぞ。
もう既に大量のJOBを覚醒しまくってる俺をなめるんじゃない。
今さら新JOBが1個ばかり増えたところで、屁でもねぇつーの。
さぁ、遠慮せずにかかってくるがいい (震え声)
震える気持ちで「Yes」をタップする。
と、更に脳内アナウンスが流れた。
”最終確認です。”
”すべてのJOBを覚醒させ、すべてのJOBをアクティベーションしますがよろしいですか?”
やっぱ止め。よろしくないです。
ちょっと待って。ふざけんなよテメェ。
流石に立ち止まざるを得なかった。
すべてのJOBってなんだよ。
そんなに何個も覚醒させるつもりなのか?1個だけじゃねぇの?
もうちょい考えさせろ。
”アクティベーションさせてもよいですか?”
うるさい。黙れ。
今、考えてるでしょーが!
■勇者にはなれなくとも張り通さねばならない見栄がある
・異世界4日目 13:20
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うーん、どうすっかなぁ……。
じめじめ悩んでる俺の姿を、ペットの皆さんがじーっと観察してたらしい。
随行してくれてたシバ達はもちろん
知らぬ間に狼兄弟も集まってくれてたらしい。
”どうしたんだろ……?”
”ぽんぽん痛いのかな……?”
”薬あるよ!”
”オレ、撫でるよ!”
”オレも撫でたい!”
シバ達はチョー心配してくれてた。
ありがとうなお前達。ちなみに俺もお前達を撫でたいぞ。相思相愛だな俺たち。
そんなシバ達に比べ、狼兄弟はのんきなもんだった。
「ガウガウー」
”ご主人様の真似ー”
しかめっ面するウィリアム。
「ガウガウー」
”オレも真似ー”
しかめっ面するエドガー。
なんだよー。真似っこすんなよなー。
でも、ちょっと和んだわ。
おかげで、うじうじ悩んでるのがバカバカしく思えてきた。
つーか、悩んだところで最終的には「Yes」をポチる事になるんだろうな。って良い意味で吹っ切るきっかけになったわ。
やっぱ、やらない後悔よりもやる後悔だよな。
一丁、腹を括ってやろうじゃねぇか。
つー訳で。
すっかり待たせてしまったようだな脳内アナウンスよ。
さぁ、どこからでもかかって来やがれってんだ!
改めて気合を入れてみたものの
”あ、そろそろOK?”
対応が雑ぅぅぅ……。
チョーフランクな返答に、思わず脱力してしまった.
何だよその態度ー。
さっきと全然違うじゃねーか。
客商売ナメてんのかよテメェ。
そりゃこっち都合で待たせてたけど、流石にその対応はあんまりだろ。
それに元はと言えば、テメェの不親切すぎるアナウンスが元凶だからな。
キッチリと説明してくれてりゃ、パパッと決断できてたっつーの。
”おっけー?”
更に雑ぅぅぅぅ……。
心がポキッと折れる音が聞こえた気がした。
もういいや。もう何も言うまい。さっさと片付けよう。
ボード上でほんのり光る「Yes」ボタンをゆっくりとタップした。
と、同時に脳内にアナウンスが流れた。
”最終確認です。”
”すべてのJOBを覚醒させ、すべてのJOBをアクティベーションしますがよろしいですよね?”
あ、対応戻った。
いや微妙に言葉尻が違ぇ。さっきは「よろしいですか?」だったのに、今回は「よろしいですよね?」になっとる。高圧的になっとる。とっとと終わらせたい本音がにじみ出まくっとる。
ま、まぁいい。
既に腹は括り済みだしな。俺はもう迷わん。当然ここも「Yes」だ。
徐にタップした瞬間、またしても脳内アナウンスが鳴り響いた。
”JOB【ドルイド】を覚醒しました。”
”JOB【ドルイド】をアクティベーションします。”
”アクティベーションに伴い、JOB特性【大自然万能主義者】を取得しました。”
”JOB特性【大自然万能主義者】取得に伴い、【ドルイド魔法】を取得しました。”
おぉ、魔法職っぽいJOBキタコレ。
とりあえず最初のJOBガチャは当たりを引けたっぽいな。
しかも【ドルイド】って戦える系のJOBだよな?
念願の戦闘力GETフラグだろこれ。
とか思ってたら、
いきなり何かが始まった。
”パワースポットのSPを使用し【ドルイド魔法:大自然の祝福】を発動します。”
まさかのオート発動。
そしてまさかの事後報告。
やりたい放題かよ。
あ、ちなみに【大自然の祝福】の効果はこんな感じだったぞ。
まずドーム型の光がどーんって破裂して
そのまま光がぐわぁって散って
最後にぎゅいーんって地面に吸い込まれていった。
たぶん全行程で2秒もかかってねぇ。まさに一瞬の出来事だったわ。
で、光が地面に吸い込まれた後、再び脳内アナウンスが流れた。
”パワースポットを祝福し、精霊を呼び込む条件が整いました。”
突然のメルヘン要素登場!!
何つーか、取ってつけたようなファンタジー感だった。
”JOB【シャーマン】を覚醒しました。”
”JOB【シャーマン】をアクティベートします。”
”アクティベーションに伴い、JOB特性【精霊万能主義者】を取得しました。”
”JOB特性【精霊万能主義者】取得に伴い、【シャーマン魔法】を取得しました。”
なるほど。
次は精霊を呼び込む作業をするわけですね。わかります。
そんな俺の考えを裏付けるように、再び脳内にアナウンスが流れた。
”祝福された土地に精霊を呼び込みます。”
”この世界には『精霊』の存在しないため失敗しました。”
まぁ、最後の最後に壮大なオチが付いてた訳だけどもな。
おい。ここまで来てそりゃねぇだろ。
「しっかしりてくれよ」
思わずボヤく。
と、一瞬の間を空けて脳内アナウンスが聞こえてきた。
”【精霊誘致】のスペルを最適化し、【精霊創造】へと作り変えました。”
”精霊を創造します。”
”精霊を創造しましした。”
アナウンスが終わると同時に
ポンッ。と軽い破裂音が生じた。
そして唐突に目の前にソフトボールくらいの球体が現れた。
ボール状のソイツは、ゆらゆらと緑色の炎みたいなヤツをまとっていた。
どうやら薄ぼんやりと緑色の光も放ってるらしい。
「せ、精霊さん……?」
尋ねると、チカチカと身体を光らせて返事するカラフルソフトボールさん。
一切言葉を発して無いにもかかわらず、ソイツが”そうだよ!”と肯定したことが理解できた。
さらにチカチカ光るフライング・グリーンライト・ソフトボールさん。
ただ、その伝達内容が問題だった。
”パパ!”
うん。ちょっと待とうか。
いろいろと整理したいから、少し時間をくれないか。
あ、でも取り急ぎこれだけは言っとかねぇとな。
誰がパパやねん。




