1000ユニーク&5000PV突破記念!
とある日の文具協会でのこと。
僕は会長への挨拶を済ませ、日本へ帰るべく廊下を外に向かって歩いていた。
「おぉーい!」
という声が聞こえたのはその時だ。
振り返ることはせずに立ち止まる。
すると荒い息遣いで男が走ってきて僕の後ろで止まったのを背中で感じた。
「どうしたんだ?矢代」
僕は肩で息をしている彼に声をかけた。
「っ・・・それが・・・ッッがっあっく・・・すっんのッッ!!」
「落ち着け馬鹿」
「・・・ッいや・・・まぁ、この、話、は・・・」
皆がいるところでする、とのことだった。
文具協会本部の中で建物の一階北西側に位置する「小会議室」へ数人が集められていた。もちろん、矢代の呼びかけによるものだ。
定子、シュナイダー、ナズナ、アレックス、創、藍、そして僕と矢代を合わせ8人が集まっていた。
会長にも声をかけたが「忙しい」と一蹴されたのだとか。
定子も本当はそうしたかったのだろうか、痺れを切らして沈黙を破った。
「それで、どうしたのかしら?」
ふふん、と矢代が鼻を鳴らし何故か誇らしげな表情になったので思わず拳を振り抜きかけたが握りしめるまでにとどまった。
「なんと!・・・」
そして数秒の沈黙。本人はもったいぶっているのだろうが皆は一様に冷ややかな視線を矢代に注いでいた。創だけが喉を鳴らし、期待しているようだった。
「この小説の総PVが5000突破&総ユニークアクセスが1000突破したんだ!!!」
これを聞いた途端そこにいたメンバー全員の目が驚愕に見開かれた。
「なんですって・・・!?」
「馬鹿な」
「こんな駄文を誰が・・・?」
と口々に漏らす。
藍は苦笑いしながら「駄文・・・」と悲しげだ。
そこで僕はある事を思い出した。
「そういえば1000PV突破の時は・・・」
「よくぞ思い出した!それだよ、それ」
と矢代に遮られる。
確か、拳銃と文具の能力のどちらが強いのか、とかいう企画をした気がする。
「そこで」と矢代が皆に提案する。
「今回も何かしよう!という事で・・・」
そして再び数秒の沈黙。皆は一様に───────以下略。ちなみに今度は創までもクールだ。
「次回予告をしようと思う!!」
世間一般でいうところの、ドヤ顔で言い切った。
「え?何言ってるのかしら?」
「もう終わってんじゃん」
「次回とか無いだろ」
というコメントに対し
「ばっかやろ、お前らな、あんな最終回が許せるのか?いいや、俺は許せない」
何故反語なのか甚だ疑問だが突っ込んでは負けだ。
「大体、最終話の最後の文を見てみろぃ!『if』の文字が見えないのか?つまりあれは本当の最後じゃない!」
ここに集まってる俺らは、なにをしでかすかわからないお前に『畏怖』の念を抱いているがな。
「ただ単に作者が高校生であり、忙しくて更新が出来ない、という事で終わらせてあるんだ!連載漫画でいうところの「打ち切り」のような終わり方なんだよ」
それは、まぁ、誰もがそうだと思っただろう。
矢代の熱弁は続く。
「最終話のあとがきにもあるとおり、作者が大学へ無事進学できた暁には『文具戦争ー改訂版ー(仮)』
が始まるんだよ!」
なるほど、それで次回予告をする、ということらしい。
なんだが『次回予告』とは趣旨が違う気がするのはこの際気にしないことにする。
一同は仕方なく、不本意ながらもその企画に参加することとなったのであった。
「はいカ───────ットぉ!」
文具の能力によって人工的に作られた空間の西の空に夕陽が沈む頃、妙に長い矢代の合図と共に『次回予告ムービー』の撮影が完了した。
それを矢代が速攻で編集し、再び小会議室へ戻り皆で鑑賞会だ。
「わくわくするね!」と創は藍と笑顔ではしゃいでいる。
「もちろん綺麗に取れたんでしょうね?」と言った定子に対し「バッチリだ」と親指を立てる矢代。
果たしてうまく出来たのだろうか。矢代は「出来た」とつぶやくと、Enterキーを弾きマウスで少し操作した後、皆と同じく観賞用のパイプ椅子にかけた。
「『予告ムービー』、スタート!!』
画面一面に舞う白い羽。そしてその向こうから現れたのは、一枚の写真。幼い三人の少年少女が写っている。左の少年は金髪で元気良くピースサインをカメラに向け、歯を見せて笑っている。真ん中の黒髪の少女は左右の少年を無理矢理抱き込むように回した両手をダブルピースにして、やはり白い歯を輝かせている。そして、右の少年は少し照れながらも、小さなピースと満面の笑顔。その頭は───────白髪。
次の瞬間、画面が切り替わる。
血で赤く染まった金髪。横たわる少年を前に白髪の少年は吠える。『こんな─────こんなはずじゃ────!!』
震えながら後ずさりをし、なにやら叫びながら逃げていく白髪の少年。後に残された金髪の少年の体の上に舞い降りる一つの小さな影。
「あーあ、死んじまった」
悲哀に満ちた溜息。
再び画面が切り替わる。
そこに映し出されたのは、文具協会本部の建物に背を向ける僕。辺りはまだ暗い。
「早く行こうぜ」とヒロシに急かされ、曖昧に頷いて肩越しにその建物を振り返る。
「じゃあな。・・・今までありがとう」
ヒロシが開いた、黒い空間の隙間に僕は吸い込まれていった。
そして画面が切り替わる。
激昂する創。闘志溢れ狂喜乱舞するナズナ。自分の部隊員に指示しながら、ピンク色のヘルメットにジャージ姿で共闘する矢代。その戦線の後方でなにやら"ルール"を作ろうとしている定子。それを護衛するように佇むシュナイダー、アレックスそしてアレン。不気味な笑い声をあげながら戦線を前進してくる神威。次の瞬間、神威はなにかを察知して後ろへ飛び退くと、先ほどまで立っていた場所に現れたのは、ダイヤモンドの針山。その時神威の後ろで叫び声が聞こえ、振り返ると倒れた『イレイザー』とシャープペンを振りかざす僕。振り下ろされたそれと神威の突き出した右手が衝突し、爆発が起こる───────。
真っ暗になった画面に白い文字が浮かび上がった。
『to be continue...』
この小説は、以前一度完結させたものに一話付け加えさせてもらいました。
改訂版、是非、よろしければ1年半後から連載始めますのでお付き合い下さいませ。
感想等、毎回丁寧に読ませていただいております。アドバイスも大変参考になります。
お気軽にどうぞ。必ず反応、返信いたします。
それではまたしばらくのお別れです。
ありがとうございました。




