渡航
次の日の事。
話が突然すぎてわけのわからない僕たちは「行けば分かる」と言われ、これを無視する事もできずとりあえず校長室へ向かった。
「よし、揃ったわね。」
満足気に胸を反らす女史。
「あ、あの・・・本当にアメリカへ?」
と僕は言ったがそれを見事にスルーして
「よし!」
と定子はもう一度だけ言うと僕と藍の背後に回った。
そして僕たちをグイグイと部屋の隅のクローゼットの前まで押していき、それを勢いよく開けた。
「は?」
と僕が間抜けな声を出した瞬間
ドンッ!と思いっきり後ろから定子に押され、僕と藍はクローゼットに向かって前のめりに倒れこみ───────。
乾いた砂にぶつかった。
顔面からだったのでしばらく痛みでうずくまる。
「大丈夫かい?」
突然声がかかったのでバッと立ち上がり、声の主を確認した。
金髪にサングラス、ラフな迷彩の上着。砂漠を背景に、なかなかきまっていた。
「俺の事はヒロシと呼んでくれ。」
ヒロシ。定子がいっていた気がする。
「ここは・・・?」辺りを見回しながら僕は訪ねた。
「ああ、アメリカのテキサス州のビッグベンド国立公園だよ。」
すごく流暢な日本語だ。だがそれさえ不思議に思えない。何故ならここには変な雰囲気が漂っている。アメリカだからじゃない。砂漠だからじゃない。
「なんだ・・・?」
僕がひとりでキョロキョロしはじめたのを見てヒロシは口を開いた。
「お、気づいたね。流石だね。」
なにが流石なのかは良く理解できない。だがそんな事はどうでもいい。
その時後ろでドサっと音がしたので後ろを向くと、藍が砂だらけの顔面を抑えながら立ち上がろうとしていた。
「よし、二人とも来たね。」
ヒロシはひとりでにっこりしたかと思うと僕と藍の手を取る。
「目を瞑って。」
ヒロシが指示する。反抗する勇気も意味もないと思ったので素直に従った。
「ルールに従いし我らに路を開きたまえ。」
ヒロシが変な言葉を呟いた。
「目を開けて。」
言われるままに目を開けて、真っ先に目に飛び込んだのは
「・・・ビッグ・・・ベン・・・!?」
藍も相当驚いている。
それを見てヒロシは満足そうにこう言った。
「『アメリカのロンドン』、霧の都へようこそ。」




