第6話:地下倉庫の魔神残滓、効率的な掃除術。
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研究所を襲った謎の次元事故。ケンジは魔神の力を隠しつつ、現場で培った解体技術で空間の綻びを「掃除」します。
しかし、その鮮やかな手際に、凛の疑惑は深まるばかり……。
勘違いと鈍感さが交錯する、緊迫の展開です!
【日本:国立異世界資源研究所(NIIR)・地下第4倉庫】
研究所の地下に鳴り響く警報音は、ただのトラブルを告げる音じゃなかった。
扉を蹴り破って飛び込んだ俺の視界に飛び込んできたのは、床にひび割れが走り、そこから禍々しい紫色の霧が噴き出している光景だった。
「……ッ! なんて量だ。これ、次元の裂け目が完全に安定しちまってる!」
霧の中心部では、異世界の呪物が、まるで心臓のようにドクン、ドクンと律動を繰り返している。このまま放置すれば、研究所ごと次元の歪みに飲み込まれるのは時間の問題だ。
「ケンジ! ダメよ、そこに入っちゃ!」
後ろから凛が駆け寄ってくるのが聞こえる。彼女はモニターの解析を終え、ここがただの異常ではないと確信したようだ。
「凛、下がってろ! これ以上霧が漏れ出せば、防護壁も焼き切れるぞ!」
俺は背負っていた高圧洗浄機型魔導銃を構えた。
(今の俺の力を使えば、この程度の裂け目、一瞬で『中和』できる……。だが、凛に見られるわけにはいかない。せっかく隠し通せているんだ、このまま気づかれないように片付けるぞ)
俺は魔神の力をギリギリまで抑制し、あくまで「凛のガジェットの性能」の範囲内に見えるよう必死に調整しながら、霧の奥底で光る「空間固定の術式核」を狙った。
現場で何千回と繰り返してきた死体処理と同じ要領だ。あの核さえ壊せば、霧は霧散する。
「そこかッ!」
引き金を引く。
放たれた高圧水流が、霧の内部を突き抜けた。ただの洗浄用に見えて、その実、空間の結合を解くための精密な外科手術のような射撃。
パァンッ、とガラスが割れるような乾いた音が響く。
次の瞬間、うねっていた紫色の霧が、魔法が解けるようにスゥッと消えていった。
「…………嘘」
背後で、凛が息を呑むのが聞こえた。
霧が晴れた後には、何事もなかったかのように元の床が残されている。次元の裂け目は消滅していた。
俺はホッとして、持っていた魔導銃を背中に戻す。
(よし、バレてないな。凛の作ったガジェット、相変わらず性能がエグいぜ。俺の少しの操作でこれほど綺麗に掃除できるとは……やっぱりこいつは天才だな)
俺は凛の方を向き、いつものぶっきらぼうな口調で肩をすくめた。
「悪い、少し掃除が派手になっちまったな。……おい、凛? どうした? 怪我はねぇか?」
凛は、消滅した裂け目と、俺の背中の魔導銃を交互に見つめていた。
その瞳には、科学者としての純粋な探究心と、何か得体の知れないものに対する深い警戒心が入り混じっている。
だが、俺はそんな凛の複雑な表情に気づくはずもない。ただ「ガジェットの性能に驚いているんだろう」くらいにしか思っていなかった。
「……いえ。単に、私の開発したガジェットの出力が、想定より高かっただけよ。危ないところだったわ」
凛は努めて冷静にそう言った。
見つめるその眼差しに、何かを分析するような、冷徹で鋭い光が宿っていることには、鈍感な俺は全く気づいていない。
(相変わらず仕事には厳しいな。ま、凛が作ってくれたガジェットのおかげで、正体もバレずに平和に掃除ができる。このままこの秘密を抱えて、地道に勇者を目指していこう)
俺は、凛が自分を疑うどころか、自分の体の異変を「研究対象」として冷酷なまでに観察し続けていることなど露知らず、ようやくトラブルが去ったことに安堵の溜め息を吐くのだった。
第6話をお読みいただきありがとうございました!
今回はケンジの鈍感さを強調し、凛の「知らないふり」による静かな観察を描きました。
すべてを知りつつ追求しない凛と、バレていないと思い込んで安堵するケンジ。
次回、第7話は「ギルド調査編」! ケンジの身辺を洗うために、ギルドから調査官が派遣されてきます。凛の偽装工作は通用するのか!?
複数作品を書いてますのでもしよろしければ、評価やブクマで応援いただけると、こちらの作品を優先して進める目安になるので推してくだされば幸いです!




