第5話:不合格の向こう側、最悪の「合格通知」。
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勇者試験の結果がついに判明!……しかし、合格したのは「調査」という名の監視付きでした。
ケンジの秘密を疑いつつも「知らないふり」でサポートを続ける凛。そんな中、研究所を襲う新たなトラブル。第5話、緊迫の展開です!
【異世界:勇者ギルド第一試験場・メインホール】
試験会場の空気が、これ以上ないほど張り詰めていた。
模擬戦闘が終わり、ついに勇者試験の合格者発表の時が来たのだ。
「……以上で、本年度の合格発表を終了する」
試験官が淡々と読み上げる合格者リストには、ルミを含めた若きエリートたちの名前が並んでいる。俺の名前は呼ばれなかった。当然だ。壁を切り裂き、挙句の果てに「掃除の職業病」などと寝言を抜かした男が、勇者として認められるはずもない。
「はぁ、やっぱり無理だったか……」
俺が小さく溜め息をついて踵を返そうとした、その時だった。
「――ただし、特例枠として一名、追加合格を言い渡す」
試験官の声が、メインホールに響き渡った。
「佐藤ケンジ。……お前の『解体』の精度、及びその摩訶不思議な戦術に対し、特別調査委員会より『調査を兼ねた仮採用』の通知が下った」
「えっ……調査って、まさか」
「あくまで仮だ。だが、お前には我々ギルドが抱える『厄介な現場』を処理する掃除屋としての適性がある、と判断された」
会場のあちこちから、「あの落第おじさんが合格?」「調査って、犯罪者扱いじゃないのか?」というヒソヒソ話が聞こえてくる。
「……やりましたね、ケンジさん!」
マナトが俺の背中を叩いて喜んでいるが、俺の胃は冷や汗でキリキリと痛んでいた。ギルドの調査が入るということは、俺の正体や、近頃体内で起きている「得体の知れない現象」を徹底的に調べ上げられるということだ。隠し通せる自信はない。
◆
【日本:国立異世界資源研究所(NIIR)・凛のオフィス】
その夜。俺は日本へと帰還していた。
凛のオフィスで、今回の試験報告と「ギルドの調査」について相談するためだ。
「……なるほど。仮採用、ね。ギルドの連中もなかなか良い嗅覚してるわ」
凛はパソコンの画面から目を離さず、淡々とキーボードを叩いている。彼女のモニターには、俺の身体能力や魔力推移のデータが淡々と記録されている。
「凛、いや、うーん。…調査が入れば、俺の体のこと…、…もう辞退した方がいいかな……」
「バカ言わないで。今辞退したら逆に怪しまれるわ」
凛は視線をモニターに向けたまま、冷徹に言い放つ。彼女はケンジの体の異変には気づいているはずだが、あえて深くは追求してこない。まるで、何かを隠していることを「あえて泳がせている」かのようだった。
「私がギルドへ送る調査報告書を細工するわ。あなたの力を『NIIRが開発した特殊ガジェットによる、極めて高度な特殊清掃スキル』として定義し直すの。ギルド側には、ケンジの力は魔道具によるものだと誤認させ続ける。……それが、研究所の素材であるあなたを失わないための、私のやり方よ」
「凛、お前……」
その時、凛のデスクに置かれた赤いアラートライトが激しく点滅を始めた。
『緊急警告。異世界側からの未登録の魔力転送を感知。座標、我が研究所の地下第4倉庫……!』
「……! 何よこれ、今この時間に!?」
凛が即座にモニターを切り替える。映し出されたのは、つい先ほどまで俺たちが試験を受けていた場所ではなく、研究所の地下深くで発生している禍々しい紫色の霧の映像だった。
「おい、凛。これって……」
「最悪……! これは『次元の裂け目』。しかも、ただの自然発生じゃない。誰かが意図的に、私たちの研究所をターゲットにして異世界の呪物を召喚しているわ」
凛の顔から余裕が消えた。
ケンジという「何か」を抱える自分たちに対し、今度は研究所そのものが、何者かの攻撃に晒されようとしていた。
第5話をお読みいただきありがとうございました!
「調査」という名の合格に胃を痛めるケンジと、彼を管理下に置こうとする凛の微妙な駆け引きを描きました。
研究所を襲う「謎の召喚」。果たしてケンジは、凛に正体を知られることなく、この危機を掃除しきれるのでしょうか?
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