第30話:警鐘の夜、最悪の『廃棄物』の到来。
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予選の祝杯も束の間、ついに最悪の事態「魔神災害」が発生します。
圧倒的な力を持つ魔神と魔人の軍勢を前に、ガドルやレオたち精鋭が立ち向かいますが……。
裏方であるはずのケンジが、ついに本格的な「大掃除」へと動く第30話です!
【異世界:勇者ギルド『アヴァロン』・大広間】
けたたましく鳴り響く警報鐘が、祝杯の空気を一瞬にして凍りつかせた。
俺たちはテラスから大広間へと駆け戻った。先ほどまでの喧騒は消え失せ、ギルド職員たちが血相を変えて走り回っている。
「静まれッ!!」
大広間の空気を震わせるような怒号。一番隊隊長、ガドルの声だった。
ざわめきがピタリと止む。歴戦の英雄であるガドルが、これほどまでに険しい表情を見せるのは異常事態だ。
「先ほど、観測班から最悪の報告が入った。東の防衛都市方面にて、魔神災害が発生した」
その言葉に、息を呑む音が各所から漏れる。
魔神災害――それは、魔神が配下の魔人を引き連れ、都市を一つ滅ぼす規模の厄災を指す。
「敵の戦力は、魔人が八体。そして、それらを統べる強力な魔神が一体だ。魔人一人を抑えるだけでも勇者十人がかりだと言われているが、それが八体も同時に現れたことになる」
絶望的な戦力差に、新人勇者たちの顔から血の気が引いていく。ルミも、マナトも、震える手で自身の武器を強く握りしめていた。
俺の胸の奥で、ドクンと嫌な鼓動が跳ねた。俺の中にある『魔神の核』が、同質の強大な力の接近を感知して共鳴しているのだ。
「これより、俺が直接指揮を執る」ガドルが重々しい声で宣言する。「サハク、レオ! お前たちは精鋭を率いて先行し、魔人どもを打ち倒せ! 新人どもは後方で市民の避難誘導と防衛線の構築にあたれ!」
「了解しました!」
サハクとレオが即座に応じ、エリートたちを引き連れて嵐のようにギルドを出撃していく。
俺は混乱する広間の隅で、隊服のポケットから『異世界技術研究所(NIIR)』製の特殊スマホを取り出した。
画面には、現代日本にいる氷室凛からの緊急メッセージが届いていた。ギルドの通信傍受を避けるため、彼女が送ってくるデータはいつも偽装されている。
今回添付されていたファイルの名前は「tenor_gif9012603526339412347.gif」だった。
一見するとただの画像ファイルだが、俺がパスコードを打ち込んで展開すると、それは東の都市周辺の『高密度魔力分布データ』へと姿を変えた。
(……冗談だろ。この魔力波長、ただの魔神じゃないぞ)
画面に表示された数値を見て、俺は顔をしかめた。
データが示す魔神の出力は、ガドル隊長やレオたち精鋭が束になっても、最悪全滅しかねないほどのバケモノだった。優雅に喋るような知性を持ちながら、その実は残忍極まりない最悪の魔神。それが、現代科学の分析によって克明に弾き出されている。
「ケンジさん……俺たち、どうすれば……」
マナトが青ざめた顔で俺を見る。ルミも、強気を装ってはいるが足の震えが止まっていない。
「お前たちは隊長の指示通り、後方支援と避難誘導に徹しろ」
俺はスマホをしまい、腰の魔導銃の安全装置を外した。
「ケンジ? あんた、まさか前線に行く気じゃないでしょうね!?」
ルミが俺の腕を掴む。「なに考えてんのよ! ただの新人勇者が行ったって、死ぬだけよ!」
「あー、まあ、なんだ。俺は勇者になったが清掃のプロでもある」
俺はルミの頭にポンと手を置き、努めて軽く笑ってみせた。
「あんなデカいゴミ(廃棄物)を放置したら、後片付けが面倒になる。……ここからは、俺の仕事だ。魔神は綺麗に掃除してやる」
ルミとマナトが呆然とする中、俺は背を向けた。
誰よりも世界を救うために、俺は『魔神』としての力を解放する覚悟を決め、一人闇夜へと駆け出した。
第30話をお読みいただきありがとうございました!
ついに物語が大きく動く魔神災害編に突入しました。凛からの通信データ(偽装ファイル)を通じて、いち早く敵のヤバさを察知したケンジ。
ルミとマナトを残し、彼がたった一人で前線へと向かう背中に、大人のカッコよさを感じていただければ幸いです!
次回、ガドルやレオたちの死闘、そしてケンジの合流を描きます!
複数作品を書いてますのでもしよろしければ、評価やブクマで応援いただけると、こちらの作品を優先して進める目安になるので推してくだされば幸いです!




