第25話:解体のプロトコル、あるいは泥沼の生存競争。
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崩落する地下迷宮で繰り広げられる、魔物との死闘。
レオの圧倒的な攻撃さえも通用しない再生能力に、一番隊は絶体絶命の危機!
しかし、ケンジだけは迷宮の「構造」を見抜いていた。
清掃員としての知識が、勇者たちの常識を塗り替える第25話!
【異世界:地下迷宮『静寂の揺り籠』内部】
崩落した通路の向こう側から、無数の殺気が漏れ出している。
カイルの無知が招いた「擬態型魔物」の目覚めは、迷宮全体を連鎖的に活性化させていた。壁の亀裂から、次々と『魔神の残滓』が染み出したような黒い泥が湧き出し、魔物を形作っていく。
「おい、冗談だろ……! たかがミミック一体で、なんでここまで!」
レオが聖剣を抜き放ち、押し寄せる魔物の群れを切り裂く。だが、倒しても倒しても、魔物は黒い泥から再生し続ける。
「物理的な攻撃じゃ意味ねぇ! こいつらは迷宮の『魔力供給路』と直結してる。核を砕くか、供給を遮断しない限り終わりはしねぇぞ!」
俺は叫びながら、ホルスターから凛が開発した高圧洗浄機型・魔導銃を抜き放った。
普通の勇者には見えない。だが、清掃員として何千体もの「汚物」を処理してきた俺の目には、この迷宮の「排管」が丸見えだ。
「……ここか」
俺は魔力を最小限に絞り、銃口を通路の隅――一見すると何もない壁へと向けた。
トリガーを引く。放たれたのは破壊のエネルギーではない。「特殊中和剤」を込めた超高圧の魔力流だ。
シュィィィィィィッ!
乾いた音と共に、壁の一部が根こそぎ剥がれ落ちる。その奥には、迷宮の魔力を循環させていた脈動する血管のようなパイプが露出していた。
「ルミ、そこだ! パイプの継ぎ目を一点集中で叩け!」
「えっ、でもそこには何も……っ、分かった!」
ルミは迷わず俺の指示に従った。彼女の放った雷撃が、俺が剥がした壁の奥の供給源を直撃する。
迷宮全体が悲鳴を上げるような地鳴りを立て、再生していた魔物たちが泥となって崩れ落ちた。
「嘘だろ……あんな一点を狙うなんて……」
レオが呆然とこちらを見る。だが、喜んでいる暇はない。
迷宮の深層部から、さらに上位の存在を呼ぶ「呼び鈴」のような魔力波が放たれた。
「来るぞ。もっとデカいのが来る。……全員、防護姿勢を取れ!」
俺はマナトとルミを背後に隠すように立ち、魔導銃の出力を上げる。
現れたのは、獄炎を纏った巨大なゴーレム。かつて俺が魔神の力で処理した個体とは比較にならない、迷宮に飼い慣らされた『守護者』だ。
「ケンジ、あれは……倒せるの?」
ルミの震える声に、俺は努めて飄々と笑ってみせた。
「ああ、まあ、なんだ。魔物は所詮、魔物だ。魔物掃除は俺の仕事だ。」
レオが「退け、俺がやる!」と前に出ようとするのを、俺は手で制した。
「レオ、お前はあっちの群れを頼む。ここは……俺の清掃器具の方が相性がいいんだ」
俺は魔導銃のグリップを握り直す。
魔神の力――その深淵の片鱗を、この迷宮の奥底で、ごく自然に、ただの「掃除」として解放する準備を始めた。
第25話をお読みいただきありがとうございました!
ケンジが「戦い」ではなく「掃除」というプロの視点で戦場をコントロールする様子を描きました。
レオのプライドを傷つけないようにしつつ、実力差を見せつけるケンジの大人な対応と、徐々にケンジの頼もしさに気づき始める周囲の反応を楽しんでいただければ幸いです。
次回、巨大ゴーレムとの対決!ケンジは魔神の力をどれだけ隠しながら「掃除」できるのか!?
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