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おはようのキスは昨日もしたが、こうも気持ちのあり方が違うとまったく別物に感じるのは不思議だ。
(ま、昨日までのは一方的にされたに過ぎないんだけどな……)
唇が離れると、どう反応したらいいのか……困る。
「今日は嫌がらないんだな」
「! ……そうやってからかうなら全力で拒否ってやってもいいんですけどねッ」
「俺はお前の為に昨日は我慢してやったんだ。素直にありがとうくらい言えないのか」
「あんたの事情なんか知らないし、恩着せがましい言い方しないで下さいよっ」
今まで通り、俺を弄る事は止めてくれないらしい。
それでも、前とは少し違った、嬉しそうな表情が混じっていると、俺の方が先に折れてしまうのが少し悔しい。
(これが、惚れた弱みってやつか……。厄介だな)
視線を落とすと、大きな手が俺の頬を撫でた。
「優一、どうかしたか?」
「……いえっ。それより急がないと、また小笠原に文句を言われ兼ねない」
頬の火照りを誤魔化すように、言い訳をして支度を始めた。
(二人でいると間が持たねぇ……)
……――。
(いや、二人だけじゃなくても同じだな)
場所は大広間。
朝食時……。
早速俺は溜息を零した。
(忘れてたわけじゃねえんだけど……な……)
目の前にはニコニコと心底楽しげな顔で、俺と榊さんを交互に見つめる神条さんがいた。
俺は隣に座る榊さんに声を顰めた。
「ちょっとあの人、どうにかならないんですかっ? 凄く居たたまれないんですけど……」
「そのうち飽きるだろ。帰るまでの辛抱だ」
「はぁ……」
帰るまでの辛抱。
確かにそうだが……。
この先、神条さんのように知ってもらわなければならない人間がいると思うと、不安に思わずにはいられなかった。
【第七章/終】




