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君だけに恋を囁く  作者: 煙々茸
君恋 第四章
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 そして、いよいよ最終日を迎えた。

「片山さん。こっちも品切れなので撤去お願いします」

「分かりました」

「前川は向こうの棚を二段減らしてくれ」

「はい」

「日野は先に休憩に入ってくれ」

「分かりました。――小笠原くん、レジ頼める?」

「りょーかいっス」

 ランチタイムが過ぎて、カフェから人が居なくなったあと、俺達は総出で不要になった棚の縮小に取りかかった。

 綺麗に商品をまとめてしまった方が、売れ残りが減るからで、最後の大仕事とも言えた。

 ――ツキンッ。

「っ……」

「てんちょー?」

 俺は時折痛む頭に眉を寄せた。

 レジに入ろうとした小笠原が、怪訝そうに俺に声を掛けてきたが、それには手を翻して制した。

(もう少しだ。今日が終わればゆっくり休める)

 今も心配そうに視線を送ってくる小笠原から逃げるように、俺は二階の事務室へと足を向けた。

「……参ったな」

 ギシッ。

 椅子に腰かけてポツリと零す。

 こうして一人になると、張っていた気が緩んで体に力が入らなくなる。

(それだけ疲れてるってことは分かってんだけど、周りに負担かけるわけにはいかねぇしな)

 五分だけ、とそっと目を閉じかけた時、この部屋の扉が遠慮がちに開いた。

 顔を覗かせたのは片山さんだった。

「店長、少しいいですか?」

「? もちろん、どうぞ」

 瞬時に笑顔を向けると、ホッとした様子の片山さんが中に入って来た。

「二号店の榊店長から業務連絡が届いていたので」

「業務連絡?」

「来月の仕入れ内容らしいですよ。あと、これも来月にある社員旅行についてのようです」

 言いながら手渡してきた二枚分の用紙に目を通す。

(まだフェア期間中だってのに、次から次へと……)

 俺は大きく息を吸い、一気に吐き出しながら少しばかり大袈裟に肩を竦めた。

「今は脳みそを休ませたいんですけどね」

 俺の愚痴に、傍らに立つ片山さんが苦笑を零した。

「今丁度フル回転している時期ですからね。オーバーフローしないようにだけ、気を付けて下さい?」

「分かってますよ。でも、あと少しなんで、頑張ります」

「そうですか……」

 少し開いた間に、目を数度瞬かせる。

「何か……?」

「いえ、店長のことですから、何を言っても聞いてはもらえないだろうな……と」

「何なんですか? それ」

 俺が苦笑いを浮かべると、片山さんも小さく口元を綻ばせた。

「もう少し、ご自分のことを理解してあげて下さい。心配になりますから」

 そう言い残して片山さんは事務室を出て行った。

「――はぁ……。理解っつってもなあ」

 受け取った用紙を無造作に机に置く。

(まあ、心配かけてるのは分かっちゃいるけど。やらなきゃなんねーことが山のようにあるからな……)

 こういう時、榊さんはどうしているのだろうかとふと頭を過ぎった。

「ははは。俺ってあの人に指導受けてたくせに、何も見てなかったりして……?」

 自嘲を零してみたら、余計自分の非力さを痛感して悲しくなってきた。

「あー……痛ぇな……」

 額を押さえ、薬を呑もうかと思ったが、止めた。


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