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そして、いよいよ最終日を迎えた。
「片山さん。こっちも品切れなので撤去お願いします」
「分かりました」
「前川は向こうの棚を二段減らしてくれ」
「はい」
「日野は先に休憩に入ってくれ」
「分かりました。――小笠原くん、レジ頼める?」
「りょーかいっス」
ランチタイムが過ぎて、カフェから人が居なくなったあと、俺達は総出で不要になった棚の縮小に取りかかった。
綺麗に商品をまとめてしまった方が、売れ残りが減るからで、最後の大仕事とも言えた。
――ツキンッ。
「っ……」
「てんちょー?」
俺は時折痛む頭に眉を寄せた。
レジに入ろうとした小笠原が、怪訝そうに俺に声を掛けてきたが、それには手を翻して制した。
(もう少しだ。今日が終わればゆっくり休める)
今も心配そうに視線を送ってくる小笠原から逃げるように、俺は二階の事務室へと足を向けた。
「……参ったな」
ギシッ。
椅子に腰かけてポツリと零す。
こうして一人になると、張っていた気が緩んで体に力が入らなくなる。
(それだけ疲れてるってことは分かってんだけど、周りに負担かけるわけにはいかねぇしな)
五分だけ、とそっと目を閉じかけた時、この部屋の扉が遠慮がちに開いた。
顔を覗かせたのは片山さんだった。
「店長、少しいいですか?」
「? もちろん、どうぞ」
瞬時に笑顔を向けると、ホッとした様子の片山さんが中に入って来た。
「二号店の榊店長から業務連絡が届いていたので」
「業務連絡?」
「来月の仕入れ内容らしいですよ。あと、これも来月にある社員旅行についてのようです」
言いながら手渡してきた二枚分の用紙に目を通す。
(まだフェア期間中だってのに、次から次へと……)
俺は大きく息を吸い、一気に吐き出しながら少しばかり大袈裟に肩を竦めた。
「今は脳みそを休ませたいんですけどね」
俺の愚痴に、傍らに立つ片山さんが苦笑を零した。
「今丁度フル回転している時期ですからね。オーバーフローしないようにだけ、気を付けて下さい?」
「分かってますよ。でも、あと少しなんで、頑張ります」
「そうですか……」
少し開いた間に、目を数度瞬かせる。
「何か……?」
「いえ、店長のことですから、何を言っても聞いてはもらえないだろうな……と」
「何なんですか? それ」
俺が苦笑いを浮かべると、片山さんも小さく口元を綻ばせた。
「もう少し、ご自分のことを理解してあげて下さい。心配になりますから」
そう言い残して片山さんは事務室を出て行った。
「――はぁ……。理解っつってもなあ」
受け取った用紙を無造作に机に置く。
(まあ、心配かけてるのは分かっちゃいるけど。やらなきゃなんねーことが山のようにあるからな……)
こういう時、榊さんはどうしているのだろうかとふと頭を過ぎった。
「ははは。俺ってあの人に指導受けてたくせに、何も見てなかったりして……?」
自嘲を零してみたら、余計自分の非力さを痛感して悲しくなってきた。
「あー……痛ぇな……」
額を押さえ、薬を呑もうかと思ったが、止めた。




