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君だけに恋を囁く  作者: 煙々茸
君恋 第二章
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 ――翌日。

「はい。英です」

『おはようございます。神条です』

 端末に掛かって来た電話に出ると、明るい声が届いた。

 こっちは昼の三時。

 フランスは朝の七時頃だろうか。

「おはようございます。どうしたんですか?」

『それはこっちのセリフですよー?』

「はい?」

『昨日在庫のリスト送ってって言ったのに、まだ届いていないんですが、どういうことですかー?』

「……あ!」

『やっぱり忘れてたんだ? 優一らしくないねぇ。どうしたの?』

 昼休憩の時に送ろうと思ったが小笠原に捉まってすっかり忘れ、今度こそと最後の事務処理後に送ろうと思っていたらまた忘れてしまっていた。

 というか、それどころではなかった。

(って言い訳しても仕方ねーんだけどさ……)

「すみません。棚卸しが終わったら送ろうと思っていて、すっかり忘れてしまっていました」

『……何かあった?』

「別に、何もないですよ……」

(嘘だけど。話せることでもないし、とぼけるしかないよな)

『ならいいんだけど。相談なら遠慮なくしてね? 優一は案外溜め込んじゃうタイプなんだから』

 根本的な原因はあなたにあるんですよ。――などと口が裂けても言えない。

 神条さんが悪いわけではないし、今は俺だけの問題だからだ。

(片山さんとのこともあるし。榊さんも……、あの人何してくるか分からねーんだよな。克服させるって、俺を?)

 出来ればお断りしたい。

 あの人を克服する自分が全く想像できないからだ。

(っつか、克服したら俺があんたを好きになるとでも思ってんのか?)

 昨日の榊さんにはドキッとさせられた部分もあったが、

(あれは誰だってそうなるだろ。別に俺だけじゃねえ……はずだ……)

『――ちょっとー? 聞いてる?』

「あ、はい、何ですか?」

『もー、しっかりしてよ』

「すみません。……ちょっと寝不足で……」

 またこれを言いわけに使う日がこんなに早く来ようとは……。

『大丈夫? 在庫リスト今すぐ送ってね!』

「わかりましたっ」

 返事をして俺は通話を切った。

 結局、昨日いろいろ考え過ぎてまた眠れなかった。

 いや、疲れがあってそれほど遅くまで起きていたわけではないから、酷い寝不足ではないけれど。

(何で俺がこんなにグルグルしなきゃなんねえんだ……!)

 事務室のパソコンからリストを送りながら、俺は昨日の出来事に頭を抱えた。

 暑い夏は、始まったばかりだ――。



【第二章/終】


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