修羅場勃発 俺&妹VS元カノ
「ううっ…。燃え尽きたぜ…。」
「ううっ…。(ましろだけに)まっしろにね…。」
3秒の持久力とAカップー。
見栄を張って加工したNTRビデオレターを作ってしまった為に、生徒会、風紀委員全員の前に却ってそのコンプレックスを晒される事になった、寝取とましろは崩れ落ちて灰のようになっていた。
「「「会長、うまくいきましたね…!」」」
「お兄様、やりましたね!カッコよかったです!」
「ああ。ありがとう。」
黒崎、渥美兄妹、よしのと笑顔を見合わせると、頷き合い、再び前を向いて俺は宣言をする。
「寝取拓郎。虎田ましろ。二人の供述をもって、このNTRビデオレターは、AV動画に自分の顔と声を加工した紛い物である事が証明されました。
これにて訊問会は終了させて頂きます。」
訊問会を閉める言葉と共に視聴覚室は大きな拍手に包まれた。
「風紀委員の方々。今日は彼らの訊問会にご参加下さり、貴重な情報を開示して下さり、誠にありがとうございました!
公務の為とはいけ、不快なNTRビデオレターをお見せしてしまい、申し訳ありませんでした。セクハラと言われても、申し開きのできないところです…。」
風紀委員長上原及び副委員長の荒木を始め、他の風紀委員に頭を下げると、荒木と上原は笑顔で否定した。
「いえ、我々とて生徒を取り締まる立場の者。このような動画だと分かった上で、全員が同意して視聴をしているので、それは気にしないで。」
「そうだね。君も当事者で辛かったろうに、証拠の品を提出し、訊問会で真実を突き止めてくれた事、いたく感謝する。この後は、俺達に任せてくれ。」
「荒木さん…。ありがとう。そう言ってもらえると気が楽になるよ。上原…。後はよろしく頼む。」
荒木、上原に頭を下げると、微動だにしない寝取とましろに呼びかけた。
「おい。二人共、呆けてないで立ってくれ。これから、風紀委員長、副委員長同行のもと、先生に事の次第を報告しにいくからな。」
「ああ。生活指導の鬼谷先生にNTRビデオレターの存在と共に報告せねば。」
「「……!!ま、待って(くれよ)!」」
俺と上原の言葉に、現実に立ち戻った寝取とましろは、それぞれ上原と俺に縋りついて来た。
「ちょっとしたイタズラのつもりだったんだよ!だって、NTRビデオレターは偽装しただけだし、俺、虎田には一切手を出してないしさっ。不純異性交遊には当たらないだろっ?先生に報告するのだけはやめてくれよっ!なっ。」
「そ、そうなのっ。ただのイタズラ!「彼氏への不満があるなら、こんな方法で思い知らせてやればいいんじゃないか」って寝取に持ちかけられて、NTRビデオレターを偽装しただけで、こいつとは、一切関係を持っていないし、不純異性交遊には当たらないでしょっ?先生に報告するのだけはやめてちょうだいっ!ねっ。」
「「はぁ?」」
この期に及んで見苦しい言い訳をする寝取とましろに上原と俺は眉を顰めた。
「ただのイタズラですむか!寝取と虎田の不純異性交遊がなかったとしても、AV動画からわいせつなNTRビデオレターを作成し、虎田の恋人だった鷹宮に嫌がらせで送り付けるなど、極めて悪質な行為をしているからな。停学もしくは退学など、厳しい処分は免れないと思えよ?」
「ああ。AV動画を加工する事自体、法律に抵触する行為だろうし、先生方の判断によっては、警察のご厄介になる事もあり得るかもな…。」
「「た、退学…!警察…!」」
上原と俺の言葉に、寝取は蒼白になり、ましろは体をわななかせた。
「な、何よ…!昨日まで彼女だった私に、そこまでの仕打ちよくできるわね!!
義隆先輩が、そうやって、いつも公務優先で、彼女である私を大事にしてくれないから、放っておくとすぐ他の人に取られてしまうようないい女なんだって思い知らせてやりたくて、寝取のNTRビデオレター作成に協力したのに、「捨てないでくれ」と泣いて縋ってくるかと思えば、すぐに別れを言い渡して、風紀委員とグルになって訊問会開くとか…!
あんたは本当に血も涙もない男ね!
鬼っ!悪魔っ!伊藤◯っっ!!」
涙目になって、言いたい放題罵詈雑言をぶちまけてくるましろに、俺は全部を打ち返してやる事にした。
「だったらお前は何だよ…!昨日まで彼氏だった俺に、NTRビデオレターを送り付けてくるとか、そこまでの仕打ちよくできるな。
ましろが、そうやって、TPOも彼氏の都合もわきまえず、自分のワガママを通そうとする奴だから、自分がどれだけ、愚かで常識を外れた事をしているか思い知らせてやりたくて、訊問会を開いたというのに、「悪かった」と泣いて謝ってくるかと思えば、ただのイタズラだとか信じられない言い訳をして来るは、挙句の果ては逆ギレして俺を責めてくるは…!
お前は徹頭徹尾自分の事しか考えてない女だな!
鬼っ!悪魔っ!西園寺◯界っっ!!」
「ひ、ひどっ…!!」
「お前と同じだけ言い返しただけだろう! いい女なんだって思い知らせてやりたくて、寝取のNTRビデオレター作成に協力しただぁ?
アホか! 他の男に靡いた上、わざわざNTRビデオレターを送り付けてくる女のどこがいい女だ!もはや、産業廃棄物と言われても文句は言えないだろう!」
「か、かはっ…! さ、産廃っ…!」
ショックを受けて打ちのめされているましろに、俺は大きく頷いてやった。
「ああ、そうだ。まぁ、実際の区分としては生ゴミになるか。確か今日、火曜日は燃えるゴミの収集日だから、何なら今から回収されて来い!」
「ううっ!いくらなんでもひど過ぎるわっ。」
号泣するましろの前に妹のよしのが庇い立った。
「いけません!お兄様…!」
「よ、よしの…!」
「た、鷹宮さん…!」
ましろとの口論がつい白熱して、妹の前で、毒舌を振るってしまい、兄のよくない姿を見せてしまったかと反省しかけていると…。
「収集日が今日なのは、家の地区です。ここの地区は、生ゴミの収集日が明日(水曜日)ですから、今から回収されに言ったら、ましろさんが待ちぼうけしてしまいます。行くなら、明日にしませんと!」
「!???¥※§」
「そ、そうか。よしの…。すまなかったな。」
「ふふっ。いーえ?」
どうやら、天然な妹は、兄を責めているのではなく、間違った情報を訂正したかっただけらしい。
「優しいと見せかけて、人の傷口広げてくるこんの天然妹がぁっ…!」
「キャッ!」
「やめろ!俺の妹をいじめるな!」
激昂して詰め寄ってくるましろからよしのを庇うと、ましろは鬼の形相でこちらを睨んで来た。
「ホラ!すぐそうやって、私より妹を庇うし、優先する!
妹が体調崩したからって私とのデートもキャンセルするし…!」
「なっ。それは、仕方ない事だし、一回だけの事だろうが!」
「うぐっ…。そ、それは、ご迷惑をおかけして申し訳なかったと思っています…。」
「それだけじゃないわ!試験前の放課後は、妹の勉強をみてやらなけれればとか言って、なかなか私との時間を作ってくれないし…!」
「なっ。それも、仕方ない事だろう。よしのは、進級ギリギリの成績なんだ!」
「うぐぐっ…。そ、それも、私の頭が悪いばっかりにご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした…。」
「ましろ、いい加減に…」
「お兄様…!」
俺を責めながらよしのにも打撃を与えてくるましろを一喝しようとしたところ、よしのに袖を引かれた。
「ここは、私に話させて下さい。」
「よしの…?」
いつも大人しい妹に凛とした表情で主張され、俺が戸惑っていると、彼女はましろに真正面から向き合った。
「ましろさん。今までお兄様に甘え過ぎて、二人の時間を減らしてしまった事はごめんなさい。
私もましろさんという彼女が出来た以上は、お兄様との距離感を変えなければいけないと思っていました…。」
「な、何よ。頭悪い割に状況は分かっているじゃない。」
「でも、その矢先にこんな事になってしまって残念です。私は確かに頭が悪いですが、今のましろさんはそれよりも遥かに愚かだと思います。」
「な、何ですって!?」
「ましろさんは、NTRビデオレターを送る事で、今まで積み上げて来たお兄様との信頼も愛情も全てぶち壊してしまいました。
あの動画を見た時のお兄様のショックを受けた顔、私は忘れられません…!」
「っ……!」
「よしの…!」
「お兄様は冷血漢ではありません。ただ、立場上感情を抑えているだけで、本当は誰よりも愛情深い人です。
そんなお兄様を裏切って、よりによって、寝取先輩に……!」
よしのは厳しい表情で寝取を見遣った。
「その方は、ましろさんに協力をする風を装って、本当の目的は、ましろさんを本当に奪って、生徒会選挙でお兄様に負けた腹いせをしようとしていたんだと思いますよっ。」
「「「「「ええっ!?」」」」」
よしのの言葉には、ましろだけでなく、俺も黒崎も空、海も他の生徒会メンバー全員が驚いた。
「あんた、そんな事を考えていたのっ?!」
「ぐうっ…!」
ましろが寝取を追及すると、奴はしまったという表情でぐうの音しか出なくなっている。
マジか……!!
「そう言えば、確かに、寝取も生徒会選挙に出てはいたが、『俺様のハーレムを作りたい』って公約を掲げていたよな??」
「目立ちたいが為にネタで立候補しただけだと思ってました。本気で生徒会長になれると思っていたんですか?!」
俺と黒崎は愕然と叫んだ。
「うるさい、うるさいっ!! お前なんか、優秀な人材に囲まれているだけのお飾り会長のくせにっ…!!
鷹宮がいなければ、そこの優秀な人材と共に俺は生徒会長になれていた筈なんだっ! だから、彼女のましろを奪って吠え面をかかせてやろうと……!」
「いや、会長がいなくても、選挙で僕2位でしたし、寝取先輩、得票数5(ほぼ柔道部員の票のみ)で最下位だし……。どう考えても、会長になれないでしょ?」
「「僕(私)達、会長が鷹宮くんだから生徒会入りしたんであって、寝取先輩が会長だったら、協力できないよ…。」」
「私があんたと本当に付き合うなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないんだけどっ…。」
「かひゅっ……!そ、そんな、バカな……!!」
ガクッ!
黒崎、空&海、ましろに次々比定され、寝取は頭を抱え、ケツを突き出して再びその場に倒れ込んだ。
「そこでお尻を突き出して倒れている方の邪な気持ちに気付かず、誑かされてしまうなんて、ましろさんは、本当に、本当にお馬鹿さんですぅっっ!!」
「…!!」
「よしの…!」
泣きながら拳を震わせるよしのの肩を俺はポンと叩いた。
「よしの。俺の為にそこまで言ってくれてありがとう。でも、もういいんだ。俺とましろは結局合わなかったんだ。」
「お兄様…。」
「…!! 何よ、何よっ!! そうやって、人をさっさと切り捨てて、貶めてイチャイチャして、ブラコン、シスコンの変態兄妹!!
結局あんたらは、お互いがいればそれでいいんじゃない!!
その頭悪い妹が私と同じような事して訊問会をされたら、俺の顔に免じてなかった事にしてやってくれ。一度だけ許してやってくれって皆に泣いて頭下げるんでしょうがっ!」
「なっ。妹がそんな事するかっ…!」
「お兄様はそんな事しません…!」
俺とよしのが同時には否定すると、ましろは悔しそうに顔を歪めた。
「〜〜〜!! 兄妹の絆を見せ付けられるのはもうたくさん!義隆先輩みたいなシスコン男と付き合ったせいで、私の人生台なしよ!
明日から、3秒で果てる間男と偽のNTRビデオレター作った虚乳浮気女として、皆の笑いものになるんだわ!
それどころか、退学の上、警察に捕まるかもしれない!
こうなったら、もう、屋上から飛び降りて死んでやる〜っっ!!」
ダッ!!
「あっ。ましろ!」
「虎田さんっ…!」
「「「「「「「「「「…!!」」」」」」」」」」
一瞬の隙をついて、ましろは、チーターを思わせる全力ダッシュをして、後ろの戸口から出て行った。
ましろの近くにいた、俺とよしのも、俺達のやり取りを呆気にとられて見守っていた他の生徒会メンバー、風紀委員も、突然の行動に意表を突かれ、誰も彼女を止められなかった…。
✽あとがき✽
読んで頂きましてありがとうございます!
これから、ざまぁ→入れ替わり と話が展開
していきますが引き続き見守って下さると大変嬉しいです。
今後ともどうかよろしくお願いしますm(_ _)m