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持久力のない間男

「うわぁぁっっ…!!()()()A()()()()()()()()()、こんな辱め、ひど過ぎるわっっ!ほんのちょっと見栄を張りたかっただけじゃない。あああっ!!」


「うわぁ…。()()()()()()()()()()()()()()()()…。||||」


 NTRビデオレターに映っていた自分の胸は巨乳に加工もしくは別人のものだったと生徒会役員、風紀委員会全員の前で証明され、ショックを受けたましろが、全員の優しさでオブラートに包んでいた正確なバストサイズまで自ら暴露してしまった後、間男であった筈の寝取拓郎は更に聞き逃がせない発言をした。


「おい、寝取。何をそんなに驚いているんだ?ましろと関係を持っていたなら、バストサイズを知らないって事はないだろう。」


「ハッ。いや、それは、その…。」

「…!||||」


 俺が問い糾すと、寝取は言い淀み、ましろはしまったという表情を浮かべた。


 そんな二人を見遣り、黒崎はメガネを怪しく光らせて、ニヤリと笑った。


「おやおや。どうやら、色々ボロが出て来たようですね。


 会長。寝取拓郎さんについても動画についておかしな点がありますので、解説を続けていいですか?」


「ああ。よろしく頼む。」


 俺が頷くと、黒崎は再びNTRビデオレターの映し出された画面を皆に指し示した。


「はい。では、続いて寝取拓郎さんについて感じた違和感について解説していきますので、再び画面にご注目下さい。ちょっと長いですので、最後まで早送りしていきますね?」


 そう言うと、黒崎はリモコンでNTRビデオレターの映像を早送りし始めた。


『あんっ。あんっ。→あんあんあんっ。→あああああっ。』

『はぁっ。ふんぬっ。→ふぬふぬふぬっ。→ふぬぬぬぬっ。』


「えっ…。長っ…。」

「途中で体位変えているとはいえ、流石にヤバくない?」


 風紀委員がざわつく中、黒崎が解説を入れる。


「えー、今現在動画内では、虎田さんと寝取さんが時間にして、約2時間休み無しで続けているわけなんですが、女性も男性もすごい体力ですよね。あ。もうすぐ終わりそうかな?」


 黒崎がリモコンを操作し、早送りを解除すると、男女の体が大きく跳ねたところで、嗄れた寝取とましろの声が響いた。


『ふんぬーっ。(やっと終わりか。)』

『ああーっ。イクー!(やっと終わったわ。)』



「あははっ。2時間ぶっ通しで疲れているのか、二人共ガラガラ声ですね。本当にお疲れ様です。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()大変ですよね。」


「「っ…。」」


 黒崎に鋭い目を向けられ、寝取とましろは目を逸らした。


 NTRビデオレターはここで終わっており、黒崎は動画を止め、語り出した。


「激しい行為を休まず2時間も続ける事ができる男性の持久力については、すごいとしか言いようがありませんが…。最後の方、特に動作と声のギャップが激しくなっていたのも気になったのと、あんなAV男優並みの持久力を一介の高校生である寝取さんが持ち得るんだろうかと疑問に思ったんですよね…。」


「「「「「「「…………。」」」」」」」


「な、何だよ!お前ら、その目は?」


 黒崎が、そう言って疑わしげな視線を向けると、それを追うように全員の視線が今度は寝取に集中して、奴はキョドキョドと左右に目を遣り、焦っていた。


「うん。黒崎の疑問は尤もだ。実際のところ、寝取について持久力はどうなのか?調査をさせてもらった。」


 俺の言葉に寝取は目を剥く。


「はあ?!ど、どうやってだよ!?」


「まぁ、それについては、焦らずゆっくり聞いてくれ。

 まずは、風紀委員の方々。寝取拓郎についての情報をお願いします。」

「「はい!」」


 寝取が動揺する中、副委員長と、もう一人の風紀委員女子が、教壇の前に進み出た。


「副委員長の荒木梨鈴です。まずは彼の情報から公表させて頂きます。


『2年3組 出席番号30番 寝取拓郎(17)要注意人物度 Aランク


 血液型O型 誕生日2月3日 身長は175cm体重は✽✽kg(BMIは25) 容姿清潔感はないが、ややイケメン、成績(定期テスト最下位)柔道部員(県大会予選敗退) やや(横に)大柄の体と下卑た笑みが特徴。入学当初は

 真面目な生徒だったが、二学期あたりから、他の生徒に尊大な態度を取るようになり、女子からも男子からも人気が低い。』


「ちょ、ちょっと待てよ!それは流石に

 偏見が過ぎるってもんだぜ!俺、クラスでは結構人気者のほうだから!女子にもモテモテだしぃ?」


 必死に主張する寝取に、もう一人の風紀委員女子が氷の視線を向けた。


「いえ。それはあなたの勘違いです。寝取くんと同じクラスの三浦悦子みうらえつこですが、私から見たらクラスの皆は、自称人気者でモテ男の寝取くんの強引な物言いやら女子の体の特徴をあげつらったセクハラ発言を、苦笑いでやり過ごしているだけで、実際は冷ややかな目で見ていますよ?」


「えっ。あんた、そんな奴だったのっ…

 !?」


 ドン引きしているましろに、寝取は慌てて否定した。


「ち、ちげーよ!こいつは、俺の事を嫌ってるから、そんな風に言ってるだけで…!俺は本当にクラスの人気者で、経験豊富なモテ男だぜ?」


 本当に何度も自称しているぜ…!

「人気者」とか「モテ男」とかいうのは他者から評価されての言葉だと思っていたよ。


 俺は寝取の発言に呆れつつも、奴の自信の根拠であろう部分に触れる事にした。


「まぁ、過去、経験があったのは確かみたいだな。それについては、うちの会計の渥美空、会計補佐の渥美海が寝取と()()()()()()()について、聞き取り調査をしてもらっているので、報告をお願いしようか。」


()()()()()()()ってまさか…。」


「「はい!会計(補佐)の渥美空(海)です。」」


 寝取が瞠目する中、双子の男女が名乗り、最初に小柄な可愛らしい容姿をした渥美空(♂)が話を始めた。


「同学年男子への聞き取り調査を行ったところ、寝取くんは、1年2学期から当時3年生で魔性の女と名高い天野麻美あまのまみ先輩と交際していたようですね。


 天野先輩と付き合い出した頃から、女性関係について寝取くんがマウントを取るような自慢話をするようになったと同学年の男子の間では噂になっていました。


 天野先輩の卒業と同時に、彼女についての話をしなくなったらしいので、おそらく大学進学と同時に振られたのだろうと推測されます。」


「ち、違う!振られたんじゃない!麻美さんは、俺より年上という事を気にして、俺達は涙ながらにお別れを…」


 空の推測を寝取はムキになって反論しようとしたが、空にそっくりの容姿の渥美海(♀)が気まずそうに笑った。


「残念ながら、それが彼女の本心かどうか…。

 卒業間際、天野さんが、寝取くんについて『柔道部員部員だから期待したのに、持久力のなさにがっかり!運動部でワーストだったよ。』とか、『ちょうど卒業だし、縁が切れてよかった!』とか語っていたらしいと女子の間で噂になっていましたので…。」


「う、嘘だろっ!?俺には、愛があれば持続時間なんか関係ないよ。とか、君の将来の為にも別れよう?とか言ってくれていたのに…!」


 残酷な事実を告げられ、愕然とする寝取に、海は首を振った。


「これは天野先輩と仲のよかった後輩女子からの情報なので、かなり信憑性があるかと…。その場で、天野先輩に電話で確認してあげると言われまして…。本人達に許可を得ていますので、昨日の会話の内容を録音したものを公開させて頂きますね。以下は天野麻美先輩本人による証言になります。」


『え〜、寝取くん?あの早かった彼が寝取りを?2時間持続のNTRビデオレター??!いや、3秒で果てるのに、無理ゲーでしょ!』


「かっはぁっ…!!」

 ガクッ。


 寝取は元カノだった天野先輩の音声を聞く内にあまりの衝撃に膝をつき…。


『私に数回食われたぐらいで、そんなに調子こいた奴になっちゃったか。

 本当に別れてよかった!え?今?もちろん持久力無尽蔵の逞しい彼氏見つけて幸せだよ〜?』


「くっひゅう…!!」

 バタッ!


 度重なる言葉の刃に、更には白目を剥いてその場に倒れ伏した。


「寝取の持久力(3秒)を鑑みて、このNTRビデオレターの男性は、別人であると思われる方は、彼に十字を切って頂けますか?」


「う、うぅん……。」

「「「「「「「「「………。✝」」」」」」」」」


 俺が神妙な顔でそう言うと、倒れてうめき声を上げている寝取に皆が憐れみの視線を送り、十字を切るというカオスな状況に陥った。


「じ、持久力3秒………。|||| もー、なんなのよ。これぇ…。」


 隣にいるましろは、途方に暮れ、半泣きになっていた。


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