21 オーガキング
俺の和訳が間違えていなければ、大賢者チャールズ・ベケットは、自らの職業スキル【WORLD RECORD】を、”モンスターに関する、世界中の全てを知る能力”と説明している。
ただのはったりかと思ったが……
「SSSrank、Bahamut The Colossal Dragon…………」
【鑑定】という、スキルがある。
ファンタジーの定番だが、相手や物の情報を見るスキルだ。
だが……
《ランクは鑑定や解析のスキルで表示されるものではありません》
そうだ。
なのになぜ、ランクを?
考えたって答えは出てこないので、続きを読もう。
「魔法……粒子が、モンスターとダンジョンを作る。作られたモンスターは……それが生きている間、粒子を放出し続ける?」
magic particle。
魔素の事だろう。
モンスターは魔素を放出するのか?
《肯定》
じゃあ、言えよ…………
俺が聞かなかったのが悪いんだけど、そんな質問思いつかないだろ。
「もし私達が、対処をしなければ……モンスターはエクスペンシャリィ?increase、1年後に、100倍……?特別な強い敵の情報と位置を手に入れた……?」
一体なんの冗談だ……?
確かに現実味はある。
魔素を知っている事、ランクを知っている事。
今もイギリスにいるというのにニューヨークのバハムートを鑑定(?)した事。
「まさか…………な」
”特別な敵”の居場所を示した地図、と説明されたURLに飛んで見ると、世界中に50本程の赤いピンが。
そのうち2つが日本を指し、拡大してみると、1本は明らかに兵庫県南部に刺さっていた。
赤いピンをタップする。
汚染種
オーガキング
Sランク
あまりにもタチが悪いが、唯の出任せかもしれない。
信じたくはないが、本当のことかもしれない。
オーガは確かにこの辺りでよく湧くモンスターだ。
具体的にはじいさん達が行ってる摩耶山周辺の山々なんだが……
つまりは目と鼻の先だ。
あまりにも突拍子がない。
1年後に今の100倍のモンスター?
人類滅亡の危機じゃないか。
だが。
『ダンジョンをクリアし、新たな職業を手に入れた』
それは、俺が”魔王”を獲得した時と同じだった。
▽
「俺だ。摩耶山攻略は中止する。全員速やかに戻れ」
電話が繋がって、ほっとした。
最近は、電気や水道が使えなくなった地域も多いらしい。
連絡が取れなくなったところも多い。
壊滅したか携帯電話基地局に異常が発生したかだろうな…………
了解です、という言葉を聞いて30分ほどすると、【探知】の範囲内に彼等が入った。
「黒木様、何かありましたか?」
「ああ、どうだった?オーガは」
「この十日間、市街地で1000ほどと遭遇、全て討ち取っておりまする」
「上位種は1段階上のもの7体と遭遇しましたが、うち一体取り逃しました。それから、2段階上と思われる姿を確認しましたが、危険と判断し近づきませんでした」
オーガでこれなら、ゴブリンやオークの上位種はもっと出てきたはずだ。
奴らの拠点が山の中なのか、それとももっと向こうなのかは分からない。
しかし、2つ上……Bランクが遠くまで来ている時点でAは確定。
問題はここにSランクのオーガキングがいるかどうかだが……
「4つ上は居ると思うか?」
オーガはDランク上位~Cランク下位。
1つ上というのが、おそらくハイオーガとかの事で、Bランク。
2つ上がオーガナイト等の職業種族、Bランク上位~Aランク。
3つがオーガジェネラルやらの上級職を冠するもの。Aランク上位。
そして4つが、オーガキング。
大賢者の予言の魔物。
総合ではSランク中位、筋力と防御に関してはSSランクに片足を突っ込むくらいの化け物だ。
「分かりません。我々は敵の本拠地の場所も把握出来ておりませんので…………」
「構わん。1度拠点へ戻るぞ。もし、オーガキングがいるとなれば……」
それは、非常にまずいことだ。
オーガキングがSランク。
取り巻きが……少なくともAが10体、Bが100体はいるだろう。
もっとかもしれない。
オーガ以外もいるかもしれない。
今の俺の戦力は、Aが5にBが20程度。
俺はAランク。
戦闘直前に諸々のバフをかけるとして……
うーん、少し心もとない。
戦力が整うまで待ってくれればいいんだけど…………
【テイム】を借りて小鳥を飛ばす。
その視界を共有し、偵察を行う。
見えたのは…………山頂付近の不自然に赤茶けた一帯に大きく口を開ける巨大な洞窟から、ゴブリンやオーク、オーガが続々と出てくるところだった。
(洞穴は多分……ダンジョンだ。なら、内部にどれだけいるかなんて見当もつかない)
「場合によっては一時増税も考えるか」
「無理やり徴収してもいいんじゃないですか?」
「それは最終手段にしておこう。何かあったらすぐ献金を強制する、と思われたくないしな」
ダンジョン内は俺の完全独裁国家だが、悪い方には持っていかないようにしたいのだ。
人間って、精神状態でパフォーマンスが変わるからな。
笑って過ごしてDPを稼ぎまくって使いまくってくれたらこっちも笑って福祉政策とかやるから。
「……んっ!?」
突然、テイムした小鳥が落下した。
最後に見たのは、他のオーガより2回りも3回りも大きい巨鬼が、こちらを向いて口の端を釣り上げる姿だった。
「オーガキング…………ッ!」
読んで下さってありがとうございます!
次回くらいから戦いかな。
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