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二人は空中から、町の中心部を見下ろす。
その光景を見ながら、思い出話をする。百年、二百年と歳を重ねていないことには出来ない話を。
「この百年で、人間たちの生活もずいぶん変わったよね」セリゼが言う。
「『第二次産業革命』ね……僕たち魔術師のあり方も変わったよ」
「私たちが、『第二次』の波をはじめからモロに受けた最初の世代だよね……ああ、何でこんな思い出話してるんだろ」
「そりゃしょうがないんじゃない? いくらこの町が変わってるってったって、セリゼと百年単位で付き合ってる人なんていないんだし」
「それもそうか。……でもまあ、『第二次』の革命は凄かったかな。長年相互不可侵だった『魔法』と『科学』という二つの体系が合わさった。それによって、魔術師も、科学者も、各々の立ち位置を認識し直す必要が出てきたわけで」
「何せ、秘伝・秘儀だった魔法を『科学的視点』で解釈し、科学の内に潜む不確定な部分を魔法によって解決するんだからね」
いわばクロスオーバーのハイブリッド。
「第二次産業革命」は既存の文化全てを洗い出した。
あらゆる分野で、垣根を越えて魔法と科学は融合した。
そのひとつの象徴のようなものが、今、眼下の道路を行く浮遊艇だろうか。スクーターと小舟を組み合わせたような形をしていて、電力を基に、浮遊魔術機構を取り扱いのしやすい形として作られている。
要するに、「誰でも魔法が使える」かのような状況を作り出したこと。
もはや魔法は秘儀ではない。
そのような世界の移り変わりを目にして、旧世代の魔術師であるセリゼと月読は、いささか思うところがないわけでもない。
「フレアたちのようなはじめとする魔法科学の天才は、人類の進歩を進めたよ」セリゼは言う。
現在魔法科学は、ほぼ完璧なレベルにまで達しようとしている。
西洋魔術を基本とした基礎理論が確立し、今はそこにオルタナティヴな魔法であった東洋魔術を組み込もうとしている。
また、それ以外の辺境の地域の魔術も積極的に。
「大家さんと議論をしたのも懐かしいね。あれが東洋魔術を工学に組み込もうとしたさきがけだったのかな」
「ああ、そういう意味合いの繋がりなわけ?」
「その後のロボット工学の発達……とりわけあの義体が証明してるでしょう。……っと」
月読は言葉を切った。眼下に剣呑な情景があったからだ。




