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(3)

【業務連絡】

ペンネーム(なろうでの名義)変えました。

一応の理由は、プロフ欄に書いてありますので、これお読みいただいておられる奇特……じゃなかった、有難い常連さんは、一度お読みいただいたら幸いです。

やがて列車は駅へと到着する。


白地の木製の看板に、素っ気なく共通語(この世界におけるアルファベット・英語のようなものである)で


「ほうき星町」


と書かれている。単線のローカル線にふさわしいこじんまりとした駅であった。



 月読は列車から降りた。大きなリュックサックを肩にかけて。この重さにももう慣れたものだ。いろんなものが入っては出ていく。さながら人生のように。人生は旅だと言ったのは誰だったか。紀元前から言われているような気がする。何となく、月読はたびたびこう思うのであった。

 


そして、駅舎のガラス窓を背に、彼女は待ってくれていた。


 「久しぶり、セリゼ」月読は言う。


 「相変わらず変わらないね、月読は」セリゼはそう返す。「ま、変わりようがないんだけどさ」


 「お互い様だと思うけど」



 記憶の中にあるセリゼの姿と、今のセリゼの姿は、まるで変わっていない。顔立ちも、髪型も、服装さえも。


 深紅の瞳、青白い肌。吸血鬼のそれだ。頬は人形のように滑らかに彫刻され、鼻の形も、顎の形も、またそのように歪みひとつない。

意志の強さを感じさせる、ややつりあがった目付も変わらない。貴族然とした、高貴な美しさ。


 長い髪をなびかせている。上の方の二房だけを、黒いリボンで軽く縛っている。いわゆるツーサイドアップ。

前にその髪型の訳を聞いたら、少しくらいお洒落してもいいでしょ? とのことであった。たとえそれが血みどろの日々であっても。


 で、いつものように、男装の礼服である。上等の仕立ての、漆黒の上下に、マントを羽織っている。大きな白い台形の襟が付いた、黒いマント。前にその黒さの理由を聞いたら、魔女だし。貴族だし。とのことであった。


何しろ本物の由緒正しき貴族がそう言っているのだから言い返せない。そして、帯剣している。


 本当に、セリゼは変わっていなかった。月読が変わらないように。


 「今更変わるも何もないんだけど。姿形を確定してから何年経った?」セリゼが言う。「長生種にとって変わる必要性がないんだよ。形態変化? 偽姿の魔法? めんどいでしょ?」


 「まあそういうことなんだけどね」

月読もそう答える。不老不死の者として特に異議はない。だが……。

「でも、雰囲気変わった、よね」


 「今会ったばかりでしょうが。何ですか? 仙人様は魔女相手に心眼を働くのですか?」


 「手紙がさ。文が、というか書き方が柔らかくなった」


 「ああ、そのこと」

飄々とした感じで、思い至ったようにセリゼは返す。

「心境の変化ってやつ?」


 「数秒前に『今更変わるも何も』って言ったのはどこの誰?」


 「言動に矛盾のない者などこの世にあって?」


 少なくとも、こういう軽口がポンポン出てくるくらいには変わったよね。月読はそう思ったのであった。


 「ともかくも、迎えに来てくれてありがとう。手紙の宛先の住所を辿って行くつもりだったけど」月読は言う。


 「友人の出迎えは当然でしょう」


 「恥ずかしいことを言うね」


 「もうこの歳になると恥ずかしいも何もない。じゃ、行こうか」


 「それもそうかな。じゃ」


 小さな駅舎を抜けると、バスやタクシーのロータリーに出る。旧来の、車輪とガソリンエンジンを用いたものもあれば、魔法・電気機関を用いた浮遊艇もある。現代はその端境期といったところであろうか。


 とは言っても、ロータリーは閑散としている。慌ただしく車がひしめいていることはない。のどかである。静かである――静かすぎるほど。


 少なくとも、月読が乗ってきた蒸気機関車が出立した駅の町は、もっとがやがやとしていた。もちろんそこはここより田舎ではなかった、というのもある。


が、それだけではない。空気の感じからして、何か静けさを感じさせるのである。さながら――さながら? 月読は、自分が何を考えているのかよく分からなかった。


 セリゼは歩き出す。


 「飛んで行かないってことは、近いの?」セリゼや月読クラスの魔法使いだと、飛空魔法などお手の物である。


 「そうでもない」

しれっとセリゼは言う。

「ただ、町並みを眺めるのもいいんじゃない? って感じかな」


 「やっぱりセリゼ変わったよね」


 「どんだけ私は余裕のない人だと思われていたのか」


連想が働くなぁ、と月読は感心した。このあたりの回転の早さは変わっていない。


「変わった変わったっていうけどさ、月読、貴方はどうなの?」


 「それはこれからのお楽しみ」


 「……ははっ、何それ」


 自然な笑みがセリゼから出てくる。そんな彼女の姿を見ていると、悪くない。全然悪くない、と思うのであった。


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