ジョーク混じりの決死の闘い(1)
いつもの通り、ほうき星町シリーズの断片的ストーリーです。
今回はキギフィとせりぜのバトル回です。
「よーしセリゼ、運動しよう!」
「性的な意味で?」
「何言ってるのこの人……」
「自分だって大概人を弄ってる癖に」
散々だった朝食のあと、穏やかな昼下がりにキギフィがセリゼに申し込んだ。
「運動って何です? サッカーでもテニスでもするんですか?」月読は当然すぎる質問をフレアにする。
「いえ、決闘です」
「決闘?」その言葉の剣呑さにびっくりする月読であった。
「たまには身体動かさないとなまっちゃうからねー」そんな月読にさらりと受け答えするキギフィ。
「失礼ですが……セリゼと決闘ですか?」その言葉の意味をよくよく承知しているだけに怪訝な顔をして月読は問う。「正気……ですか?」
「あはは、マジバトルじゃないよ」キギフィはあっけらかんとして笑って言う。「私がセリゼを倒せっこないじゃん。そこまで私も馬鹿じゃないよ」
「それはわかってますよ。でも相手が相手ですし……」
「大丈夫大丈夫、そこんとこ分かってのバトル『遊び』なんだから、これは。要するに、スポーツってことだね」
「スポーツにしては、ずいぶん剣呑なものですが」
「そりゃね、私も全力でやらないと怪我するし」キギフィは言う。「それに、ハンデつけてくれるしね、セリゼは」
「ハンデ?」
「私は殺しにかかりはしないし、全力出したりもしない、ってこと。要はアレだね、気持ちよくキギフィが負けてくるって話」淡々とセリゼは言う。
「それだけ聞くとすごく嫌な感じだなぁ」キギフィがこぼす。「それじゃ準備しますかね。何と言っても相手は『神討ち』だ、超化物だ」
「……の割には緊張度が少ないというか」
「だってはじめから負けるって分かってる勝負だしねー」キギフィがさらりと言う。「その中で、如何に自分を効率よく燃焼させることが出来るか、如何にベストを尽くすことが出来るか。私の問題はそこにあるわけ。だから、運動、っていうこと」
「性的な意味でね」セリゼがボソッと言う。
「ネタの使い回しは止めなさい。さて、と……」
言いながら、自室へと戻って行くキギフィ。セリゼはその後姿を見ながら紅茶をすする。
穏やかな昼のことである。風は凪ぎ、イーシィ湖の水面はたゆたう。
「それじゃ、お弁当でも用意しましょうか」フレアが言いだす。
「あ、いいねぇ」セリゼが答える。
「ホント緊張感がないですね。ピクニック気分じゃないですか」
「だから言ったでしょ? 運動だって」
「う~ん……それにしても、セリゼとバトル、ねえ。やけっぱち根性というか、余程自分の腕に自信があるのか」
「ご覧になってはいかがです? 百聞は一見にしかず、です」
「そもそもキギフィさんって何やってた人なんですか?」
「……バトルスタイルを見ればある程度は察しが付くと思いますよ」
「なるほど」
そう言われて納得出来るくらいには、月読も修羅場をくぐってきた。それだけに、彼女の力量というものがどれほどのものであるか、純粋に興味がある。
フレアはランチボックスを用意しはじめた。月読は、何か手伝おうかな、と思った。




