12月21日 6
白き肌に朱、交われば。
雪女さん、真雪さんの頬が色づいていて、彼女にも血というものが通っている事を感じられる。
「……じゃあ」
「……はい」
「婚儀でもするかの?」
結婚式、ふたりだけで?
「わらわがふたりだけが良いと言うか、それに友人を招いても儀式が台無しになるのが見えておっての。
疾く契りたいというか」
もじもじ大明神。
可愛らしい。
「それで、どこでするんです?」
僕がそう訊ねると、真雪さんは目を瞑った後、一呼吸置いた。
次の瞬間、あたりが一面が水色の光に包まれた。
水色の光でも、光は眩しいもので、瞬きの間に場が一変した。
懐かしい香りと入れ替わるように、雪の清々しい香りが鼻孔へと流れ込んでくる。
氷の洞窟。
世界遺産の特集で見る氷河の地下のような、水色の洞窟。
青い洞窟を水色に染め上げている要因は目の前にあった。
巨大な氷。
畏敬の念を感じよ、と訴えかける本があったが、その中の例にあるような大自然の力。
この大きな氷を見るだけで、もう生涯これ以上の、知覚における広大さを感じることはないだろう。
もしこのまま彼女と、グランドキャニオンへ旅行に行ったとしても、僕は何も感動しないと、今わかってしまう。
「………………ここは?」
「わらわのお腹の中じゃ」
「胃なのか腸なのか」
「心臓じゃな」
「バーは?」
「胃」
「旧氷上家邸宅は?」
「蜂の巣かな」
「葉状もあったりします?」
「冗談じゃ。今、流行りの牛ビキニ、今度着てやってもいいのじゃぞ?」
「ちょっと時代遅れですね。今は金ビキニですよ。金ビキニ」
「時代の流れは速いのう」
彼女とならどこまでも脱線していける気がする。
「それでここで結婚式をするんですか?」
「うむ」
「僕は何でも良いんですけれど、昔から花嫁さんには着飾って貰いたいなと思っていて。今の真雪さんの着物姿も好きですが」
「ほんっっっっっと、氷上はかわいいのう」
真雪さんは、目の前で身をよじらせた後、指を鳴らした。
パッチンという音とも共に、真雪さんが8人なった。
八等分の花嫁。
8人の真雪さんは全員が、先程の着物を来ておらず、それぞれが花嫁に見える衣を纏っていた。
1人目、白無垢。彼女がラフに纏っていた着物よりも、純白で丈が長く、織り込まれた六花の柄が白い髪と肌と相乗して美しさを生み出している。
2人目、色打掛。先ほどの白無垢よりも華やかさを感じられる。銀色の羽織には紺色主体で花が描かれており、これもまた彼女に合っている。
3人目、引き振袖。定番の黒にアンチテーゼを叩きつけるがごとく、紺色の着物に青と銀の帯。比翼さえも青色で、この着物の制作者が気になってしまう程。雪女だからこそのモーマンタイ。流水ながれるがごとく。
4人目、Aライン。スタンダードなAライン。だがそれでいい。ホルターネックで強調される胸部。うん、だがそれでいい。
5人目、プリンセスライン。オフショルダーと組み合わせって、可愛さ倍増。女の子は生まれながらにしてお姫様というけれど、これはまさしくお姫様。
6人目、スレンダーライン。リーフの刺繍が、豊穣と慈愛を生んでいる。すべての大地に永劫の凍結を。
7人目、エンパイアライン。ハイネックの透け感が溢れて、上品過ぎる。どこかの帝国率いていた?
8人目、マーメイドライン。人魚のようなスカートが雪女の神秘さを加速させる。雪女より美しい人魚はいない。その辺の人魚何て全て氷漬けだ。
『わらわら、これからばとるろわいあるでもするの?』
「それで? どのわらわがいい?」
9人目。いつもの着物。後ろから、見慣れた着物の真雪さんが背中に飛び乗るように抱きついてきた。
「みんなちゅき」
僕は両手で顔を抑えて泣き崩れることしか出来なかった。
ビキニの部分は流してください。
もし月額制ファンサービスをしていたのならば、お手元の雪女さんのラフを載せていたのかもしれませんが。




