11話.買い物
「じゃあ、買い物頼んだよ」
「…へい」
寮を管理している盛田のおばちゃんからお金をもらった。
決して好きに使えるお金ではない。これから日用品の買い物に行かなくてはいけないのだ。
ティッシュ、トイレットペーパー、歯磨き粉などなど
…ドラッグストアに行くか?いや、お菓子も買ってきてくれって頼まれたな。スーパーにするか。
「スグル、どこ行くの?」
玄関で靴に履き替えていたら、目黒ヒョイっと現れた。
こいつ神出鬼没すぎるな…。
「どこって、日用品の買い物に行くんだ」
「そうなんだ」
「お前はなんか買ってきて欲しいものとかあるか?」
「買いたいもの…」
目黒は上の方を向いていた。おそらく、彼女なりに考えているときのポーズだろう。
10秒…20秒。いや、長いな。普通、スッと思いつくだろ。
「わかんない」
「そんだけ悩んでわからないのかよ」
すると、何を思ったのか目黒までも靴に履き替えようとしていた。
「わかんないから、スグルについて行く」
「え」
「早く行こ」
「乗り気すぎる…」
仕方なく、目黒と一緒に買い物に行くことになった。
女子と一緒に買い物か…。今までそんな経験したことなかったから、無駄に緊張してくるな。
しかも、相手が美少女様だし。隣に俺がいるのが不釣り合いなレベル。
「スグル」
「……」
「スグル?」
「えっ、あ、ああ。なんだ?」
「ボーッとしているから、呼んだだけ」
「何だよそれ…」
そんなこんなして目黒と歩いているうちに、目的地に着いた。
でかいスーパーだ…。1階が日用品など売っていて、2階が服、3階が家電を売っている。
大型ショッピングモールには敵わないが、スーパーとしてはかなり大きな規模だ。
店内に入るなり、目黒がテキパキ動いている。
「スグル、カート」
「え、ああ」
「あと、買い物カゴ」
「俺がカートを押すんですね…」
ショッピングカートを押す俺と、その隣りにいる目黒。
なんだこれ…。周りの人にどう思われているんだろうか。
まさかカップルみたいに…それはないか。
「何買うの?」
横にいる目黒が質問してくる。
「トイレットペーパーやティッシュや歯磨き粉、洗剤とかか。あと、冨田先輩と秋元にジュースとお菓子頼まれたな…」
「お菓子…」
「目黒も好きなお菓子買ってもいいぞ」
女子は甘いものが好きだと勝手に思っているので、目黒が選ぶのはチョコレートやクッキーとかそういう系だと思っていた。
「じゃあ、おはぎ」
予想の斜め上をいったぜ…。
「おはぎってお前…渋すぎるだろ」
目黒は意外にも和菓子が好みだったらしい。
俺が「どら焼きも買うか?」と聞いたら、目黒は大きく頷いていた。
なんだよ、その反応は可愛すぎるだろ。
一通り買いたいものを買い物カゴに入れたのでレジに行こうとしたら、すっかり忘れ物があったことに気が付いた。
「あっ、芳香剤と消臭スプレーも買うんだった」
「そんなに必要なの?」
「冨田先輩とか匂いに敏感だから、トイレとかリビングに置いてないとまずい」
冨田先輩は女子力が高い。
だから冨田先輩に近づくといつもいい匂いがする。
つまり、その分匂いとかのエチケットは気にする人なんだろうな…。
俺自身は臭くないだろうか…。臭いって言われたら死ねる。
「そうなんだ」
「目黒だって女子なんだから、男臭いのは嫌だろ」
ん?ついさっきまで俺の横にいた目黒の姿がない。
その時だった。背中になにか柔らかいものを感じた。
えっ、なに、こんなところで密着!?まずいだろ、他のお客さんが見ているだろ!?
目黒(目黒)は俺の背後にピタッとくっついてきた。
何が起きているんだ…。
クンクン?ん?もしかして、俺の匂いを嗅いでる!?
「……」
目黒は背伸びをしながら、俺の首筋の匂いを嗅いでいた。
「えっ、ちょっ、な、何を…」
「私も匂いに敏感らしいから嗅いでみた」
だからっていきなり嗅ぐとは…。俺は顔が熱くなっていただろう。
今度は目黒は俺の真横に来た。
また俺の匂いを嗅いでくるのでは…となって、思わず身構えてしまう。
「いきなりすぎてビックリするだろ…。どうだったんだよ」
「うん…スグルの匂いがした」
俺の匂いって…。
目黒に言われて、急に心臓がドキドキしてきた。
こいつ、なんで俺の匂いなんか知ってるんだよ…。
「恥ずかしいからやめてくれ…」
「大丈夫。不快じゃなかったから」
「そのフォローもやめてくれ」
店内を出た後も、俺の心臓はうるさかっただろう。
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