茶番
「勘弁して下さいよ。あんな筋肉なのか生物なのか解らないようなのと拳を交えたくないんデスけど……。レディーファーストの意味、取り違えてマスよ……?」
眉間にシワをよせ、憔悴した乾燥ワカメの如く脱力する瞳子。黒目がちな瞳はいつもの鋭さを失いドンヨリと濁っている。一介の学生がテロリストの相手をするなど馬鹿げている、そんな不満げな表情だ。
だが天下に冠たる学園リュケイオンの優等生ともなれば、戦時体制化における特殊部隊も真っ青なほどの実力と知性を兼ね備えている。数多の戦闘技術に医療知識、歴史、法律、国際情勢にまで精通し、もちろん学園一流の魔法技術も体得している。現時点でもチート級のエリートである。当然、謙虚に気だるげな言葉を吐いていても、規格外の自信に満ち溢れた愉快な変態ばかりだ。別大陸に存在する学術
研究都市アカデメイアの高等教育機構で「生産」されるという神官候補生とあわせて、ゆくゆくは世界システムの基層にアクセスする権限さえ得ることができるであろう人材達。その中には一定割合でサイコパスやソシオパス、重度の精神病患者も含まれているが、特異な人格構造をその高い知能で苦もなく社会に順応させてみせる。
「私みたいなカ弱い文学少女に戦闘なんてそもそも無理なんデスから」
「謙遜すんなって。頼りにしてるよ。ファリックガール」
「ファリ……何?」
筋肉男がヒュウゥと息を搾り出すと、眼下の三人に無感情な顔を向けた。
「それでは処理してしまおう。正確に、迅速に、何ひとつ痕跡を残さずに」
男を覆う巨大な岩塊のような筋肉がゆっくりと収縮膨張したかと思うと、次の瞬間、周囲の空気を弾き飛ばしながら猛スピードで地表にいる三人に襲いかかった。
すでに戦闘モード全開の瞳子達の周囲にはそれぞれ巨大な魔方陣が展開している。流動する複雑怪奇な文字、紋様で構成された魔方陣は高速で回転しながら、把捉すべき敵性対象を待ち構える。
迫りくるテロリストの両腕に装着され埋め込まれた無数のアクセサリーが強い光を放ち、色の違うそれぞれの光点が星座のように線で結ばれ、腕全体を淡い光のベールが覆っている。
「何か光ってんぞ……。魔装具か?見たことないタイプだが」
「それっぽいデスけど、アクセサリー型なんて知りませんね。国家地域ごとに機能もデザインも星の数ほどありますから、一々把握しきれませんよ……」
「つうか何個付けてんだよ……欲張りすぎだろって……」
呆れたように愚痴るカイトに向かって、高速で急降下する男が両腕を振り下ろす。
「どぅゎっ!?」
重機のような腕から放たれた凄まじい風圧とエネルギーが地面をえぐり、寸前で回避したカイトの体を衝撃波が襲った。
「まずは俺狙いかよ!!」
男の一撃で抉り取られた地面が溶解し、ジュウジュウと派手な音を立てる。複雑に色彩を変化させる毒々しい光が、溶けた岩の表面から放たれている。
「……どう見ても威力が物理攻撃のそれじゃないデス」
「攻撃用の魔装具……エネルギー変換型か?」
「何にせよ能力の得体が知れない以上、不用意に攻撃を受けちゃ駄目ですよっ!」
いつの間にか遠く離れた場所から、マリネ先生がタメになるアドヴァイスを伝授してくれた。
「どうにかして下さいよ!先生!?っていうか遠いな!」
吹き飛ばされつつも崩れた体勢を空中で整えながら、素早く魔法式を構築するカイト。指で中空に円を描き、その内側に次々と古代文字を記していく。
『空延圧縮(モメンタム=コンプレス)!!』
詠唱が完了すると同時に、緑色の光がカイトを包み込む。陽炎のように揺れるソレは、物理法則の隙間をジワジワと侵食するかの如く不気味に輝いている。
その直後、間合いを詰めた男が矢継ぎ早に繰り出した拳がカイトの体に打ち込まれる。が、攻撃は対象を破壊することなく伸縮する緑の光に軌道を歪められ、行き場を失ったエネルギーが背後の岩壁に直撃しドロドロと融解させた。
「何……?」
硬直した男の顔面に疑問符が刻まれる。
「よっしゃ、いくらでも来いよゴリラ!」
威勢のよい台詞を吐きつつ、フェイントを織り交ぜながら素早く後方へ飛び退くカイト。
「逃げてるだけじゃないデスか……」
「ゴリラと遭遇した時は目を合わせたまま距離を取る、だろ?」
「熊デスね、それは……」
間髪入れずにカイトとの距離を詰めるべくテロリストが猛進してきた。
人間離れした速度で、大地をメキメキ踏み抜き粉砕しながらカイトを追撃する。
見るもの全てを圧殺しかねない恐るべき形相を浮かべたゴリラ。見開かれた瞳は血走り、憎悪に塗れた眼窩の中でクーデターを起こしそうな勢いだ。
「怖っ!無理無理ー!?」
大都市出身の現代っ子であるカイトにとって、野生動物の迫力はちょっと刺激的すぎる。
「風の噂(windpedia)によれば握力はゆうに500kgを超える!!」
緊張した声でそう叫んだ。
「誰がゴリラだ!!」
咆哮する大型類人猿。顔面は硬く強張っている。
「え?なんだって?」
え、なんだってー!?という表情を隠し切れず動揺しつつも距離を取ろうとするカイト、だが動物的な勘とセンスで追い縋る"野生"のゴリラからは逃げ切れない。すぐさま射程に捉われてしまう。
カイトの顔面に向けて超重量の拳を叩き込む。
「アイヒマンだっッ!!!!」
張り裂けるような怒声とともに豪速の拳がカイトに接触した瞬間、またもや攻撃は対象を破壊することなく、スルリとあらぬ方向へ抜けていく。
「んヌぅっ……!?」
困惑の感情を憤怒で押し潰しながらも呻くような声を上げる男。
カイトの体の周りは依然として淡い緑色の光に包まれていた。
「アイヒ……え?……何が?名前??」
大いに戸惑いながらも、慌てて上空に浮かぶノエシスに視線を移す。筋肉男の名前は"ゴリラ"でFAではなかったのか?今更何をそんな。
困惑と非難の成分をたっぷりと滲ませながらノエシスを凝視するカイト。
「アイヒマン……?」
二人の視線が交錯する。ノエシスは興味深げな目つきでカイトを見つめていた。小さく何かのメロディーを口ずさんでいるようだ。フンフン、フンと頭を小刻みに揺らしながら、純白のドレスを飾るレース模様を指で弄びながら、背景にはBGMとしてラヴェル作曲のボレロが鳴っているのかもしれない。その体の各部位はそれぞれ独立した生き物のように神経症チックな動作を繰り返している。そしてカイトとアイヒマンを交互に見比べたノエシスは、おもむろに瞳を瞬かせると、ハッとした表情を浮かべて深く丁寧にお辞儀をしたのだった。
「駄目だこの女……。白痴すぎる。真っ白けっけだ……」
カイトの言葉を聴いているのかいないのか、ノエシスは満足したような笑みを浮かべたかと思うと、両腕を指揮者のごとく大きく振り上げ、そっと瞳を閉じると腕を振り下ろす。それと同時にゴリラもといアイヒマンが再びカイトに襲いかかった。
「うぉぁ……」
肉弾の嵐さながらの猛攻を受けながらもカイトは寸前で回避し続ける。放たれた鋭い裏拳がカイトの脇腹を穿とうとするが、緑色の光に阻まれ攻撃はキャンセルされる。
「あの光、厄介ですね。当たらない、攻撃が。攻撃が回避されますね?」
上半身をフヨフヨさせながらノエシスがノエマに向かって語りかける。双子の片割れの反応は相変わらずの皆無だ。
「極北大陸の魔装具を使用した攻撃をあのように簡単に受け流しているからには、LV5以上の魔法に違いありませんが。ならば学園のシステムへの接続が必要なことは確実……」
「……」
キリキリと瞳を見開きながら、見つめあう白い双子。合わせ鏡のように空間が歪んでいくような錯覚を起こさせる。ノエマの瞳には何も映っていない。別の空間を見ているようだ。
そしてノエマの虚ろな視線がゆっくりとカイトに向けられる。
「当たらないさ」
アイヒマンの苛烈なコンボを受け流しながら、素早く距離を取り続けるカイト。その体に外傷は一つもない。
「体表の空間・時間をランダムに圧縮する。その法則は世界自身さえ認知し得ない」
鍵盤を叩くように、不規則に飛び跳ねながら、彼我の間合いを引き離していく。
「空延圧縮。そういう魔法なのさ。カラクリの詳細な説明は無しだ。言うまでもなく疑いようもなく世界はブラックボックスに溢れている……」
暫し黙考するようにアイヒマンは足を止めた。全身の筋肉がシュウシュウと音を立てている。
「だから当たらない。ゴリラさん。いや、アイヒマンさん?」
「グルド・アイヒマンだ……」
「そう。グルド・アイヒマンさん。ゴリラだなんてとんでもない。人間である以上、いつだって名前は必要ですよ。ランダムな事象を確定させること。世界の全てを事細かに分類していくこと。
それが人間社会を生きるってことだ。あちらのホワイトお姉さんは気に入らないようだけどね……」
カイトの体は緑色のスペクトラムに包まれ、不確定に揺らいでいる。
「……」
再びカイトは上空のノエシスを見上げた。今度こそ何か実のある答えが返ってくるのではないか。そんな叙情的で望み薄な気持ちに浸りながら。
「興味の持てない至極退屈な見解ですね。学生さんらしい詭弁です。今、世界は増殖し続ける「固有名詞」で溺死寸前。意味の無い陳腐な言葉の群れが空疎なイデオロギーを造り上げ、世界に不協和音を齎しています。汚染された社会は"世界"から駆逐しなければならない。その構成員たる貴方たち、穢らわしい内臓脂肪もどきは死に絶えなければいけません。」
とろんとした殺意に漲った瞳をしばたかせながらノエマの肩に手を置くノエシス。
「魔法はいつだってブラックボックスなものです。ならば箱ごと潰してしまいましょう……」
ノエシスの言葉とともに、傍らに浮遊するノエマの口がゆっくりと円形に大きく開かれた。
「さぁ、ノエマ。お歌を聴かせてね。ゾクゾクするような穢れたメロディーを」
「--------------!!」
声とも電気的なノイズとも判明しない不快な音の波が、ノエマを中心として周囲へ放射されていく。
甲高い音波があらゆる物質に共振しながら空間を汚染していく。
『心象封形』
浮遊する音響装置と化したノエマ、その瞳が電源ランプのように紅く光っている。
「何だ……?」
響き続ける奇怪な音声に顔をしかめるカイト。
「とんだ声量だな。何の儀式なんだか……」
その不気味なサウンドにタイミングを合わせるようにアイヒマンが攻撃を再開する。相変わらず直線的な動きだが、速度がどんどん増してきている。巨木のような腕が、魔装具の光に包まれ独自の命を持って動いているかのように見える。やばそうな威力だ。
反射的に回避行動を取ろうとしたカイトが致命的な違和感に気づく。絶対防御たる「空延圧縮」の光が消えている。魔法式が初期化されている?それはつまり紙装甲ナウ、ということだ。
「なっっ……!?これか……!」
明晰な頭脳で瞬時に状況を把握すると、襲いかかる致死的な一撃を回避するべく、体内の魔力を爆発させ身体能力をブーストさせる。得体の知れない光彩を纏ったテロリストの豪腕が空を切り、微かに接触したカイトの服の一部が燃え上がった。拳の軌跡が空間を焦げ付かせる。
「熱っツ!!」
大急ぎで再度、守護の女神を呼び戻すべく魔法式を組み上げるが起動しない。
「あ?」
小脳に刻まれたほどにオハコの魔法式が起動しない。何故か。それは恐らくあのノエマとかいう個性的な変態が発している音波のせいだろう。先ほどマーちゃん先生の転送魔法が起動しなかったのもアレのせいか?電気的速度でそのような思考がカイトの脳を巡ると同時に、厄介な破壊力が次々と襲来する。家畜化した脆弱な現代人の肉体を破壊するには十分な威力が、最後通告のようにカイトへと降り注ぐ。避けきれるか?このまま。避けきれない?だとすると?いや、手はいくらでもある。魔法式が起動しないのは学園システムとのリンクを阻害されているからに違いない。スタンドアローンで実行できる魔法セットは幾らでも保持している。
だが正直面倒臭い、ドウセ……、そのような思考が唐突に脳をよぎる。いつもそうだ。危機に対する意識が希薄なのだ。生々しい現実の重さが、繊細に張り巡らされた感覚の網からこぼれ落ちていく。
そしてアイヒマンの繰り出す致命的な一撃が、致命的な角度から、致命的なタイミングでカイトに襲いかかる一瞬。
「ッって避けなさいよ!!らぁァ!!」
『炎神爆発!』
メギィィ、という硬質の破砕音が響く。
次の瞬間、ゴリラの顔が盛大にひしゃげ弾け飛んだ。筋肉塊がきりもみ回転しながら斜めに墜落していく。いつの間にやら接近した瞳子が放った灼熱の鉄拳が、殺人的なスピードでその威力を誇示したのだ。
「暴力系腐女子なめんなゴルァ!!ってか避けろよアンタはぁァ!?さっきの雷撃避けてたワープとか色々あんでしょが!!鬱か!!破滅願望とかいつの中世!!?薬飲みマスか!?」
言いつつ全身の筋肉に魔力と特異な回転運動を付与しながら、墜落したテロリストに追撃を加えるべく滑空する。
「そうなんだけどね……。まぁあれは使用後の疲労感とか色々な。ってかフジョシって何」
「知りマスかボケ!!というかこんな戦闘ウンザリなんデスよ!!何の発展もナい!茶番はサッサと終わらせマス!それがいい。それがいい!そうしよう!!?」
何故か興奮気味に言葉を発しながら、鋭く重い一撃を敵に叩き込む。甲高い破壊音が周囲に響き渡り盛大に爆炎が上がった。瞳子の口が悪魔的な笑みに歪む。
「うわぁ……」
赤銅色に煙る空間が徐々に晴れ、アイヒマンの黒い影が現れる。攻撃を受けきったのか、多少疲弊した色はあるが致命的な障害を負ったわけではないようだ。
その様子を上空から優雅に眺めていたノエシスの表情が不愉快に歪む。
「必要以上に優秀すぎるようですね、昨今の学園生どもは。あぁ疎ましい…あぁ」
自らの肩を抱きながら体を揺するようにクネっている。
「それはそうですよ。あの二人は特に優秀で生意気な期待の星ですからね!」
ノエシスの直上から響く声とともに、彼女の頭蓋に向けて鋭い一撃が打ち込まれる。
「シィッっ!!」
高速回転するカミソリのようなマリネ先生の身体が、回避の遅れたノエシスの腕を切り裂いた。
その白く細い腕を鮮やかな真紅の血液がドロリと伝う。
「これは、痛いですね……」
そう呟くノエシスの表情がグニャリと軋む。声色から感情の最後の一滴まで蒸発したかのようだ。
「時代遅れな原理主義者が、この学園の地に足を踏み入れるなんてもっての他です!」
漆黒のレースを自慢げにヒラヒラさせながら、デフォルメされた拳法チックな動きで敵を威嚇するマリネ先生。表情は割りと真剣だが、コンパクトな四肢からどうしようもなくアニメ染みた雰囲気を醸し出してしまっている。瞳には青く揺れる炎の十字架が宿り、怪しげな東洋の獣的な幻影が体を覆い始める。一応チート級のキャラなんです、という自負がその表情に漲っているようだ。
「さっき私のテレポートを邪魔したのも、あの変な声のせいですね!拡張系魔法の起動を阻害する方法論は学園内にも幾つかありますけど。舐めたマネを、です。ちなみに学園エリア外の有象無象など体術だけで軽くお掃除できちゃいますから!」
かかされた恥は千年経っても忘れないといった雰囲気で、シュッシュッと空に向けて拳を繰り出す。
「あぁ……煩わしい……。現代魔法文明に毒されたクズどもが……」
長い白髪を掻き毟りながらノエシスが呻く。視点の定まらない瞳がグルグル周囲の様子を一通りうかがい、斜め上で停止する。恨めしそうな顔で親指の爪をガジガジ貪っている。
「ゴリラ!さっさとその小賢しい坊やを肉片にして下さい」
苛立たしげなノエシスの言葉を受け、標的に向けて爆進するアイヒマン。
「あ……ちょ!アンタは私が潰す!……って!」
やる気なく佇むカイトを襲う、筋肉カミカゼを慌てて追尾する瞳子。
『電力狂級』
弓なりに捻じ曲がった姿勢で天を仰ぎながら詠唱するノエシス。暗紫色に発光する魔方陣とともに、大気から放射された白く巨大な雷撃の一群が、ふたたびカイト達三人を殲滅すべく降り注いだ。
素早く反応し回避行動を取る瞳子、マリネ。虚脱したカイトを圧殺しようと迫る、全てをひき潰す万力のような腕。何もかもが終着に向かう、その時。
轟音と目も眩む閃光が一帯を満たした、その刹那。
「ヴゥ――――ゥ---ン」
間の抜けた機械音が空間に響き渡る。極々最近どこかで聞いた音色。
それと同時に、猛威を振るう雷撃の白い嵐は一瞬で消滅した。
その場で進行していた状況の全てを削除するかの如く瞬間的な静寂が支配する。
コンマ数秒遅れて、到来した予測外の状況にその場の全員が困惑を示した。
「……!?」
怪物級の思考力、情報分析力を保持した一級のテロリスト、学園のエリート達が、雷撃の消滅とともに次の瞬間、把握した状況の変化は明白だ。
「……ぁあ?」
カイトを粉砕するべく繰り出されたアイヒマンの両拳が、細く繊細な四本の指の中で静止している。
慣性の法則虚しく全ての物理法則がピタリとその機能を停止している。つい数秒前までは存在していなかった人影が二つ。カイトとアイヒマンの間に割り込んだ黒髪痩身の青年が一人。ノエシス、ノエマの隣で無警戒に浮遊している黒髪の美少年が一人だ。つい先ほど、ここから数キロ離れた場所でテロリストの一人を軽やかに抹殺した者たち。
「こんにちは。いや……ハロー?か」
突然の闖入者のフザケタ挨拶を黙殺するように、ありったけの魔力をこめた拳をその顔面にぶち込むアイヒマン。ドゴォォ!!と炸裂する音響と熱量は、しかし遮断された空間に阻まれるようにその対象に届いていない。
「始めまして。俺の名前は唯色オルタ、そちらの彼はレインといいます」
微笑がその顔に宿る瞬間、アイヒマンの巨木のような腕がボゴボゴと沸騰し燃え上がる。
「ガアアアアアアアアア!!!」
響く絶叫を興味深げに観察しながら、レインは昂ったようにペロリと上唇を舐めた。