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ブラックヒスト  作者: dondon
ヘスタリア王国編
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1/4

はじまり はじまり

人(わたし)はでられない   

世界(あなた)の引いた常識(線)の外へ

本を読むことはひとつの世界に入ること

周りの音が消え手の中にある扉に手をかける


ひとは大きなものを小さくする

より自分のなかに収まるように

そうしないといけないなにかがあるように




俺は祖父母の家で生きてきた

祖父曰く、父と母は俺が小さい時に

亡くなったらしい。そんな祖父も

俺が10歳の時に亡くなった。

周りとは違うけれど俺の父と母だ

祖父は昔からものづくりが得意だった

本やら家具やらおもちゃなどいろいろと

欲しいものをつくってくれるのが嬉しかった

そんな親がとても誇らしかった

自分もなれると思っていた



クローバー書店

あなたと本の出会いに奇跡があらんことを

なんてだいそれたことを祖父は

自信満々に語っていたが

家の名前からとったのをなんとか、

かっこよくこじつけようとしたのだろう

いまじゃつかわなくなったフレーズだ。


奇跡か。そんなものどこにあるのだろうか

愚痴りたくなるが、そっと言葉を飲み込み

手を動かす。止まっていたくても針は動く

書店の業務を進めなくてはいけない


「シメイ君ー!お料理のレシピ本ってどこにあったかしら?」


「はいはーいただいまお持ちしますよー」


「シメイお兄ちゃん読み聞かせしてー」 「こっちの本もよんでー」


「こらこら読み聞かせは今日じゃなくって明後日って言っただろう」


「ばあちゃーん、ばあちゃんに電話来てるよー」

午後からいつも人が増える。

朝起きて、特に決めた髪型ではないけど

くしでといていつものシャツに着替える

店のエプロンは体の一部になった 

全て借り物に感じる 自分のものは

どこにあるのだろうか


閉店時間になり店を閉め

ぼーっと考えていた

理想と努力

問いはみえていても自分が

どう動けばいいかわからない 


考えが煮詰まって

最初に立ち戻る。を繰り返し

なにもない自分だけが残る

また考えることを放棄する


放棄する理由を探すように

本棚から1つの本をとった

家は本の販売と貸出をしている

生まれた時から本が

生活の一部になっていた

貸し出されている

ほとんどの本は読んできた


ヘスタリア王国

良い水と木材の取れる土地にあり

名産品として食料品と

良い紙からつくられる本がある

そのため製本関連の工房や書店が多い。


書物と共に進んだ国であるため

教育も近隣国家より浸透していた

5代目国王キトーテの政策により

全国民は5歳から5年間の

小学教育が義務づけられる


国民の平均的語学力、知識、記憶力が上がった

しかし身分制度は強く農家の子が

農家にしかなれないように

書店から俺はでられない


「お客さんがいないからって溜息ついていいものじゃないよ

 そんなにたいくつなら明日の小学校の読み聞かせにいってもらうよ」


びっくりした。声に出ていたらしい


「わかったよ。ばあちゃんも年だし

そういう仕事は全部こっちでやっておくから」


御年78歳 カルメ・クローバー 先読み小言ババア

もうずっと前に背を越してもう頭が腰くらいの高さになった

髪は真っ白になって腰も少し曲がっている

じいちゃんを失う前からいままで何も変わらない

怖くて強い店主である


「いまみたいにやる気も感じないような

だらしない顔で子供たちの前に行くんじゃないよ。」


「みんなに楽しい話を魅せるのが本の話し手だ。

     お前の言葉や態度がそのまま世界になる」


そこから30分ほど

読み聞かせについて熱く語られた。

今や本屋の経営については自分がしている。

そのため、ばあちゃんの仕事と呼べるものは

学校での読み聞かせくらいになっている。

だからだろう

今の自分を構成するものが減っていくことから

目をそらすかのように

明日の仕事についてレクチャーしてくれた。


「行ってもらう場所はわかっているのかい!!!」


「あるいて15分のところにあるあの学校でしょ?」


「そこは先週行っている。次行くのは来月。」


「え。じゃ、じゃあどこに行くと?」


「隣町の学校と保育所を2軒周る予定になっているよ。

 最近、隣町で通り魔の物騒な話をきくもんだから気を付けてまわってきな。」


えぇぇマジかぁ。思っていた以上にいろんな場所に向かうのかよ。

70後半がやる運動量じゃないでしょ。普通

体力というか元気ありすぎだろ

家の周りしか動いてない

自分からしたら疲れるのだが。

まぁひとりだとなにかと気楽だしな。


「夕方には終わると思うから粗相のないようにね」


「わかったよ。じゃあ晩飯の方はよろしく頼みますよー。」


「はいはい。うまいもの作って待っているよ。」


晩飯を食べ明日の準備を始めた

読み聞かせの為の本を

選ばなくてはいけない





朝。出発の時間が来た。

できるのならまだ寝ていたいが

何気に遠いので開店前の出発になる


「シメイ。ちょっと待ちな、これを持っていきな。」


なんともなつかしい絵本と針のない腕時計を渡された

本を手に取る


じいちゃんの作ってくれた絵本。

少年が仲間とともに悪役と戦い

そして敵も仲間にして世界を救うお話

勇敢に戦い自分が大変でも手を差し伸べる。

子供の抱く正義の味方のお話

敵を倒して終わらないことを

不思議に思い聞いたことがあった

じいちゃんは笑って答えた。

”それはな”


「いや、本は選んだしあとこれなに壊れた時計?」


「その本持ってかなくてどうすんだい。もうひとつのソレは

 まぁでかめのお守りだと思いな、必要にならないにこしたことはない。」


「よくわからないけど、いってきます。」      


太陽の光と伝わってくる熱が体を重くさせる

歩きはじめて20分たったくらいで

大きな影が見えてくる

少し上を見上げると白く大きな城壁


隣町に行くため王城区前の列車の発着場へと向かう。

少し上を見上げると白く大きな城壁。

もともとはあの中に王城や貴族の館だけでなく、

市場や職人の工房、

一般市民の住居までがひしめいていたという。

だが王国の繁栄とともに人口は増え続け、

街は城壁の外へと広がっていった。

やがて城壁内は王宮や官庁、

貴族の屋敷が集まる中枢地区として整備された……らしい。


ぼんやりと道を歩いていると妙に

アンバランスな二人組とすれ違った。

一人はボロボロになっているジャケット

をきてひげを生やしている天パのおっさん

身だしなみはだらしないがジャケットの下

に見える紺色の制服から身分がうかがえる。


もう一人は腰近くまで伸びる青い髪を揺らす

自分と同年代と思われる少女。

同じ制服を隙なく着こなしており、

その鋭い眼差しときっぱりとした表情には

年相応の愛らしさよりも勝気な印象が先に立つ。


このあたりでは見ないようなものに

変化を持たない自分はどうしても引っ張られる

気の強そうな眼差しだけがかすかな印象として胸に残り、

それもやがて周囲の喧騒に紛れて薄れていった。



クローバー書店裏口 午前8時 玄関前に2名

クローバー書店は個人営業書店であるため

店と自宅がつながっている。そのため家の玄関が裏口になっている

カルメは玄関に向かう。家に伝わる振動、外の音から

誰かが来たことを伝えてくれる

「おはようございます。カルメさん起きています?」


「目の前に立ってんだろうが。アディダ。」

眉間に勝手にしわが寄る。年齢を言い訳にしたくないが

どうしてもこみ上げるものがある


「シメイくん大きくなりましたね。

 もう立派な店主ですな~、ガルヴさんの面影は、まだでてないかな」


「電話でも話した通りアイツはもう動かない。

 友を失っている。それに私にとっては数少ない形見だよ。」


人は忘れてしまう生き物、そこに年齢は関係ない

だからこそ物に記憶を預ける。いつでも思い出せるように


「すまないとは思っている。でも彼の記憶が今後を左右する。

 私たちだけでなくこの国をも揺るがすほどに」


本心から申し訳ないと男は思う。

しかしそれ以上に責任がある。皆を守るために


「まぁ、あんたにも立場がるのはわかっている。だが

    旦那に少し話をしたい。昼休憩の時にまた来な。」


「ガルヴさんによろしく言っといてください。

 馬鹿な弟子の仕事を少し手伝ってくれって。」


男と少女は書店から去っていく。

少女が止まり男に問いかける


「家宅捜索権を行使すればよかったでは?

 我々の権限であればできたはず。」


部下である少女は問う。確かに回収するためならそうした方が

よいかもしれない。


     

「私たちは国直轄の組織であり、1人1人が国の代表でありことを

 忘れるな。国と国民との信頼は崩してはならない。」


正当性のある言い訳を少女に説明する。


「あの人とは長い付き合いでな。約束は守る人だ。」


男はそれだけを語り、歩きはじめる

男の背には周りには見えない疲労がのしかかり丸まっていた






「ふぅ。やっとおわった」

四時間後、すべての施設をシメイは周り終わった。

はなし始まる前に暴れまわる子供達、

耳の遠いじいちゃん達

持久走を走った後のようなじわじわくる疲労

いやいや、とても疲れた。

ウチに来る子どもたちが本好きなのがよく分かった。

隣町の子たちにはいつもやっている読み聞かせが全然通じない

自分がいかに甘えているのが分かった気がする

俺はまだ仕事を分かったつもりだったのかもな。


ただ読むだけじゃない。

そこにいる人、天気、場の空気感にあったように話す。


あぁ、もうだめかも。あ、あれは自宅!!

家に近づくほど心に余裕が生まれる。

自分の中で変なボケしてみたりして


「ただいまー。もうだめ。熱いし、お腹すいたー」


あれ?

家についたのに物音が全然していない。

この時間なら昼休憩で一度、店を閉めているはず。

まだ店の方で作業しているのか?


やはり、なにかおかしい。みょうに静かだ

シメイは扉に近づく。いつもしていることなのに

なにかとても嫌な感じがする。


「え・・・・」

人は突然来る死に対しての耐性がない

老衰、事故、自殺。たしかにこれらも突然来る

しかしなぜ死んだか、その「なぜ」がわからない

視覚情報に死体が写っていても

その電気信号が体を上る速度はとても遅い


「ばあちゃん、、、ばあちゃん!!!!」     (まーろーーーイ)

脳の通信が圏外から正常に戻る。

扉を開けて駆け寄る。足元から

ピチャピチャと音を立て

祖母の重症を物語っている

体は冷たくも息をしていない。


「あの~ちょっとよろしいでしょうか?」


人が倒れ、床には血が流れている。

こんな荒れている状況に似つかわしくないほどに

冷静な声。

声のする後ろに視線を向ける。マントを羽織り、ロングスカート

右肩に銃?のようなものをかけ、腰に剣を携えた

長髪の女性がレジの前から話しかけていた。


「いや~、そこのおばあちゃんがね、いくらフィッツのこと聞いても

 『お前みたいなヤツに誰が教えるか』って頑なに教えてくださらなくて。」


なんだ、誰だ、コイツ。

祖母のボロボロの姿でパニックなのに

全く知らない人が全く分からないことを

1人でしゃべっているこの状況。誰か教えてくれよ。    (ーまえろ。-ーイ)


「あんた、誰なんだ。」


シメイが気になっていたことを聞いた。

怖かった。だが黙っている方が何かされると

直感した。普段、温厚な人が怒るととても怖いように

自分がよく通る道で殺人が起きた時のように

前触れのない非日常に恐怖していた

店に入ってから全身が針に刺されているような感覚。

なにかに「警戒している」ということ

そして目の前の存在がその要因だと

容易に汲み取れた


「別に私が誰であるかはどうでもよろしいこと、

 私はフィッツの居場所をお聞きしているのですが知りませんでしょうか?」


「知らない、本当に知らない!この店にそんなやつはいない!

 フィッツってヤツなんて聞いたことないよ!」


柔らかい言葉遣いからくるとても重い圧。

思考することを忘れている。

しくじった、余計な発言や行動はアイツに

どう映るかわからないというのに


「う~ん、本当にご存じない?」

シメイは激しく頭を縦に振る。血だらけの祖母を

抱えながら、自分も死にたくないと懇願するために


目の前の女は少し考え込むと今までの優しい笑顔が消えた


「あるって言ったよな、あるって言ったのに!!!

 ったくようノークのやつなにが『この座標点にしっかりと。』だよ!!

 当てになんないなぁ!あいつの目はほんとに!!!!!」


目の前の不審者が地団駄をふみながらキレている

今にも暴れるといわんばかりの形相で

頼む。早く去ってくれ。


「もう!!無駄足踏んだ。ここにいる意味ないじゃん。」

 なにか1人で喋っていると急に女がこちらをむいた。


「お恥ずかしいところを見せて申し訳ございません。

 こちらでお暇いたしますね。」


「あ、はい、、、」

今の状況は決して安全ではない。

しかし、シメイは安堵した。

捕食者のきまぐれ、強者からの慈悲

いまそれが渡されようとしていることに    (かまえろ。シメイ)





パーン

一瞬の静寂が訪れる。

死を宣告するラッパから放たれる一音

これが指すのは人の終わり






なにかが鳴った。俺の知らない何かの音 

まわりを見渡す。まわりの音が聞こえなくなる

誰かがこちらに走ってきていることがかろうじてわかる

にしても胸が苦しい。苦しいというより熱いな、

あれすごい寒いかも。なんだこれ


「あ、そういえば。沢山喋ってしまいましたから

あなたにはご退場していただかなければ。」


あ、そっか

俺が銃でうたれたのか、、

死ぬってこれなのか....

実感わかねぇってか、もう消えるのか







あっけねぇ









きろ

ーきろーーイ

ーーきんかいーーーメイ


おきんかい!!!!シメイ!!!!!


「起きています!!!というかまだ起きる時間じゃねぇだろ!

 ババア時間で起こすな!!!」


というか俺、撃たれて死んでいるはず

死んでいるのに“起きろ!”ってどういうことだよ

あの世に来るのは一瞬なのか?

そんなすぐに空に飛んでいったのか…

まぁばあちゃんもいるなら

死んだけど帰ってきた感じして居心地はいいかもしれない

もうじきふわふわとお空に飛んでいくのかな..


「おい、何を1人ブツブツ言っている。」


なにって、いまからそっちに行こうとしている

そっちには死んだ父さんと母さんもいるのかな


「構えろ。と言っていたのにぼけーっとカルメのところ

 に座ったまんまで、なにをしとるんだ。」


おいおい、死んでまで説教するのかよ。

待ってくれよ。いろいろあったんだからさ


「なぁにが、“いろいろあった”だ。まだなにもしてないだろう。」


ん?カルメ?なんで自分のことを名前で言っているんだ?

そんな喋り方じゃなかったはず


「おい、立てシメイ。ここでお前はおわらない」


「は?何のこと?」


声の主の方を見るとそこには

口調には似つかわしくない

幼く、神秘的な淡い水色の髪をした少女が立っていた



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